Donor Lens - Midnight Store


夜、帰りに特にこれといって目的はなく立ち寄った本屋やコンビニエンスストアでぼんやりした時間を過ごす。旅行中、滞在先へと帰る途中で開いているお店に入って、見たことがないパッケージが並ぶ棚を眺める。暗い夜の景色の中で光を放つお店にはいつでも安心感と高揚感がある。その光の中に入ると、わずかながらも確実にわいてくるわくわくした気持ちに乗せられて、ついいらないものまで買ってしまうのも常だけれど、あとで「別にいらなかったな」と思うところまでがそのわくわくの中には含まれているのだろう。Donor Lensの『Midnight Store』には、アートワークからしてすでにその空気が漂っている。扉を開けたところにあるのは、よく知っている(知っていた)日常や知らない人しかいないところにぽつんと存在している自分という非日常。深夜のお店には豊かさがあると思う、特に今は。

freetousesounds - Airbus 380 Interior Take Off Landing & Touchdown Sounds


飛行機や電車の中、通り、スーパーマーケット、カフェ、レストラン……さまざまな音が並ぶ「Bandcamp最大のサウンドライブラリー」、freetousesounds。空港のラウンジに座ってみるのもいいし、窓の外に花火が打ち上がっているのもいい。博物館に入ったり、新幹線のホームに立ったり(このほかにも日本で録音されたサウンドもいくつもある)、静かな学校に忍び込んだりすることまでできてしまう。街中だけでなく、海、ジャングル、川や滝などの自然の中もいい。今、部屋の中にいながらにして、好きな場所の音に囲まれる……というのも、ひとつの楽しみ方になるのかもしれない。

Future Memories - Into the Memory


1曲目の美しいハープの音色が閉じていた記憶の扉を開く。そして、誘われるように開いた扉から記憶の中に入っていく。そこに広がっているのは、夏の予感、あの日の期待、かすかな不安、まどろみ…… メディテーションのようなループを聴いていると不思議と心が安らいでくる気がする。心地良いまどろみから目覚めたら、冷たくて甘酸っぱい飲み物でも飲もう。今の時もまた、記憶になる日が必ずくる。

Davide Del Vecchio - Paraiso 2020


ロンドンを拠点とするイタリアのアーティスト、Davide Del Vecchioの『Paraiso 2020』。目が痛くなりそうなほどに空と海の青がまぶしいアートワークとポルトガル語で「楽園」を意味するタイトルがついた曲は、フロアが恋しくなるような、どこかせつなさも少し感じさせるようなダンスチューン。ドリンク片手に踊りつつ楽しめば、それぞれのいる場所がそれぞれの楽園、2020年のParaisoに。

64controll - Sports Club 64


昨年の50 Japanese track maker / musician 201950 Japanese track maker / musician 2019で『JUSCO』を紹介した64controllのニューリリース『Sports Club 64』。“JUSCO”を含む全4曲、期待を裏切らない楽しさのニューディスコEP。ノレる曲、踊れる曲しか入ってないので、これはもう踊るしかない。とにかく楽しく全力でカラダを動かして日々のストレスをちょっと発散するにはうってつけの1枚。「Stay home and listen to this」!

Rainer Trueby - Soulgliding


ドイツのDJ、Rainer Truebyのコンピレーションアルバム『Soulgliding』。タイトルの“Soulgliding”はTruebyの造語で、ソウルフルなレコードをシェアするSNSの小さなグループとして始まった。そこにSoulgliderたちによってポストされる音楽は、jazz、funk、AORなどのいい感じに「グルーヴィング」で「グライディング」な感覚を感じられるもの(bpmにして110くらい)であればなんでもオーケーだったそう。確かに、どの曲をとってもふんわり気持ち良く、ジャケットのイメージそのままに空に浮かぶハンググライダーの浮遊感があったり(ハンググライダーをやったことはないのであくまで雰囲気での話だが)、緊張から解放されてくつろげている時間のような感覚があったりする。中でも、Donna McGheeの“It Ain’t No Big Thing”はきらめく多幸感があふれる最高にグルーヴィングでグライディングな1曲。

Teen Runnings - Hot Air


からりとしていて軽く聴きやすいサウンド、曲のタイトルにも「new」、「dream」、「happy」、「relax」……とポジティヴなワードが並ぶ。未来は前に進むものだと信じて疑わなかったころの空気がそこにはある。それでも熱さはなく、むしろどこか少し冷めている部分も感じる。盛り上がる時間を外側から見ているみたいな、少し不思議な感覚になる。限りなくポジティヴな空気で満たされていた時代は過ぎたとしても、あきらめたようでいてまだあきらめていない何かが、このはじけるようにポップなサウンドの中にはある。………まあややこしいことは考えなくても、オシャレで爽やかなシティボーイのフェイバリットになるアルバムなのは1曲目のイントロですぐにわかるはず。

https://www.youtube.com/watch?v=MHN2UHgVYJ0

64controll - JUSCO


関西学院大学の音楽研究部のレーベルONKENからリリースされたEP。タイトルはずばり『JUSCO』、2色刷りのスーパーのチラシを思わせるアートワーク……といっても、サウンドはいわゆるjuscotechやmallsoftとは異なっている。1曲目の“Jusco”はスーパーやショッピングセンター内ではおなじみのアナウンスがちりばめられたダンスナンバー、2曲目の“Food Court”は今や有名となったあの曲を思い出させるようなイントロから始まる浮遊感ある1曲になっている。Yu-kohとzenemosのふたりのユニット、64controll。これからどんなふうに展開していくのかを楽しみにしておきたい。

SUGURU IIDA - Spring Snow


昨年、レーベルHIHATTから『Rubber Band EP』をリリースしたHajime Iidaの弟、SUGURU IIDAが、同じくHIHATTから今年4月にリリースしたファーストシングル。春の日差しの暖かさとまだ残る雪のひんやりとした冷たさ、どちらをも感じさせるサウンド。一貫して見守るように穏やかなリズムの響きの中に時折はっとするアクセントの瞬間が訪れ、そこには静かな緊張感や疾走感も共存している。今年のリリースはこのシングル1曲のみだったが、これからどういった作品がリリースされていくのかを楽しみにしておこうと思う。もちろん、兄のHajime Iidaの今後のリリースにも期待したい。

パソコン音楽クラブ - Night Flow


終わりのない白昼夢のようだった昨年の『DREAM WALK』に続いて、今年リリースされた『Night Flow』には夜から夜が明ける前の感覚が描かれている。子どもでも夜中まで起きていることが許されていた大みそかも、大人になってからの夜遊びも、夜遅くまで起きていることにはどこかわくわくするものがある。夜の闇は色々なものを覆い、時に都合の悪いものを隠してくれたりもする。夜が明けるのがおしいような気がすることも少なくないけれど、夜明けはどんな人にも(動物にも)等しくやってくるし、非日常の時間が明けるとそこには日常が訪れる。明るくなれば嫌が応にも多少は前を向かなければならない気持ちにも自然となる。そして夜がくるとまた。

https://www.youtube.com/watch?v=30kmoqeb7MQ&feature=youtu.be

さよひめぼう - 深圳DIVA


「アジア全土がひとまとめになってしまったハイテック巨大コロニー」の「地下で鳴り響くハイブリットダンスミュージックの断片」というこのアルバムを聴いていると、映画『エクス・マキナ』で女性アンドロイドが踊るシーンを思い出した。アンドロイドを制作した男性プログラマーが無表情の彼女と楽しげに踊る。ふわっとカラダにいいことばかりやっていたら、そのうち輪郭がほんやりしてきそう。たまにはちょっとカラダに悪いこともしたかったり。人工物に囲まれていても、いい音楽が流れればカラダは自然と動くもの。ここはひとつ、「添加物まみれになって踊り狂って下さい」ということばに素直に従っておこう。

https://soundcloud.com/maltine-record/sets/sayohimebou_shenzhen_diva

Tsudio Studio - Soda Resort Journey


架空の神戸を舞台とした、都合の良いお洒落と恋のストーリーから1年あまり。『Port Island』の恋人たちは少し大人になって旅に出かける。架空の航空会社ソーダ・リゾート・エアライン「らくらく直行便」の「ゆったり快適シート」で「くつろぐ空の旅」へ。「Aランクの南国ムード溢れるバルコニー付きホテル」に滞在し、「壮大な海と空、きれいな白砂のビーチ」でのんびり寝ころんだあと、「潮風のリゾートディナー」に舌鼓を打てば、日々の生活の疲れやうまくいかない恋の痛みも気づけば消えていることでしょう。心地良く優しい癒しの旅、『Soda Resort Journey』へあなたも出かけませんか?

https://youtu.be/QE2OoWzXa1c

Kankyō Ongaku - Kankyō Ongaku: Japanese Ambient, Environmental & New Age Music 1980​-​1990


日本の音楽のアーカイブシリーズを制作しているLight in the Atticからリリースされたこのアルバムは、Bandcampの“The Best Albums of 2019”に選ばれていることからも日本国外での注目度の高さがわかる。日本のニューエイジ、アンビエントミュージックの人気は、YouTube、DJ mix、このジャンルに特化したブログなどを中心にここ7〜8年で海外で広がりを見せた動きだが、高速で変化する都会の喧騒の中で作られていた静かでクリーンな音楽が今インターネットを中心に広がり、多くの人々に好まれるという現象が起こっているのは、そのころとはまた違った喧騒が溢れているからなのかもしれない。そして、その中にいる現代の人々を癒すのもやはり音楽なのだろう。

French Disco Boogie Sounds Vol​.​4 - Favorite Recordings


フランスのレーベルFavorite Recordingsからの人気シリーズ「French Disco Boogie Sound」の第4弾『French Disco Boogie Sounds Vol​.​4』。 1977年から1991年までの楽曲からフレンチ・ディスコDJ、Charles Mauriceがコンパイルした13曲。1曲目は“Georgy Porgy (Disco Version)”。おなじみのメロディに乗って耳に入ってくる歌詞はフランス語。青い海をバックに風になびくシアーな白と赤のドレスがまぶしいジャケット写真(もちろんトリコロール)の印象もあいまって、軽くヴァカンス気分さえも漂ってくる。ほとんど聴かれることのなかった音源や未発表作品なども含まれているということだが、それはさておき、これからの時期、お出かけの車中で楽しく気持ち良く聴きたい1枚。

Soviet Freakout - Soviet Freakout Volume 2


タイトル『Soviet Freakout Volume 2』(Volume1は今年1月にリリース)、レーベル名(もくしはアーティスト名)はSoviet Freakout、場所はアメリカ、マサチューセッツ州のマリオンとなっている。Bandcampのページの情報はこれだけで、作品解説にも何も記入されていない。ただ、Instagramのアカウントは存在していて、ロシア語が書かれたレコードジャケットの画像が多数アップされている。マイケル・ジャクソンやルイ・アームストロングやビートルズもある(中にはブートもあるもよう)。再生してみると、ジャケットに書かれているとおり、「サイケデリック、ファンク、ディスコ、ロック」が何を言っているのかまったくわからない歌詞で次々に流れてくる。カセットの曲目リストによると、収録されているのは、ポーランド、モルドバ、ロシア、ハンガリー、ラトビア、カザフスタン、エストニア、セルビアで70年代〜80年代にリリースされた曲。これがなんともいい。国も時代も今いる「ここ」とはズレている感覚に心地良さを感じる。どこかで聞いたことがある気がする(もちろん知っているあの曲ではない)メロディに出くわしたりすることもたびたび。誰か違う人の記憶の中に入り込んだみたいなみょうな感じがある。時代の持つ空気感のせいだろう、まるでインターネットなどなかった時代のリビングのソファにでも座っているような……そんなことをとりとめもなく考えていたら、いつの間にかSide Oneは終わっていて、Side Twoもあと数分になっている。スマホもWi-Fiも存在しない世界の空気の中に少しの間トリップしてみるのも楽しいものだ。とはいえ、インターネットがなければこの作品を知ることもなかったのだけれど。

INTERNET CLUB - SOUND CANVAS


10月、George Clanton主宰のレーベル 100% Electronicaが開催するイベント、100% ElectroniCONの第2回がロサンゼルスで開催された(1回目は今年8月にニューヨークで開かれている)。前回は参加していなかったINTERNET CLUBが今回は登場した。パフォーマンスを行なうこと自体が初めてだったという彼は、インターネットだけでつながっていた人々と会う、リスナーと話をする、物販のテーブルに座る……など、すべてが新鮮な感動だったようだ。この100% ElectroniCON 2でCD-Rが販売され、その3日後にデジタルリリースされたのが、この『SOUND CANVAS』。2013年7月の『Digital Water -Perfect Edition-』以来、6年ぶりのINTERNET CLUBのBandcampページ更新となる。何かが浄化されていくところを描いたかのようなアートワークの、穏やかでキラキラしたサウンドで始まるこのアルバムは、Robin Burnettの今の心情をそのまま写し取った作品なのではないかと思わせる。もちろん、はっとさせられる瞬間やするりとはいかない部分もやはりそこにはある。彼はBandcampを通じて送られるメッセージで、「『SOUND CANVAS』は特に、ある意味ラブレターみたいなものだってすごく感じてる。そうしようと思ってそうなったのかどうかはわからないけど」と書いている。また、「焦る必要はない。なんでも可能。INTERNET CLUBは……フィーリング!とかそんな感じ」とも。だからとりあえず今は、Burnett称するところの「a very dreamy little record」の充足感すら感じさせるサウンドに身をゆだねていようと思う。

TWRP – Return to Wherever(帰る場所は自由)


カナダ出身のバンド、Tupper Ware Remix Party、略してTWRP。まず目をひいたのはそのアートワーク。80年代のレコードそのもの帯、英語タイトルと日本語タイトル(秀逸)が併記されている。ジャケットのイラストは日本のアニメのようであり、アメコミのようであり、ちょっとオズの魔法使いのような童話ものに見えたりもした。実際の彼らもこのアートワークそのままの姿をしている。「Elite squad of Rock Stars from the future(未来のロックスターからきたエリート集団)」とのこと。80年代にインスパイアされたサウンドは、Daft Punk、YMO、80’sのディスコ、AOR、ジャパニーズ・シティポップなどからインスピレーションを得ているという。L.A.D.Y Radioという架空のラジオステーションからの放送を聴いている気分にさせてくれるこのアルバムは、ごきげんなディスコからクールなギターサウンドまでがコンパクトに詰まったハッピーな1枚。日本が大好きだという彼ら。「日本が好きで、とにかく日本に行きたい!」と言っている。日本をイメージして作ったという“Japan Quest”という曲もある。サブタイトルは「Search For the Japanese Booking Agent(日本のエージェントを探して)」。昨年、日本限定盤のベストアルバムもリリースされているが、来日公演はまだのもよう。ぜひ日本のステージで楽しむ彼らを見て、一緒に楽しんでみたいものだ。

death’s dynamic shroud – Live From Japan


途中から観始めた深夜放送の知らない映画。何度チューニングし直しても途切れるラジオ。どこかの無線が入ってきて怖くなってしまったトランシーバー。100匹目の猿。バタフライ・エフェクト。vaporwaveにはそういったものにどこか近いものを感じていた。楽しい時間を引き伸ばしたいスクリュー。好きな瞬間だけを切り刻んで詰め込んだカットアップ。気に入ったところを何度もかみしめるためのリピート。だらだらと見ていられたテレビ番組やCMをザッピングするみたいなコラージュ。得体がしれないけど、得体がしれないからこそ気になる。今、わからないものはずいぶん少なくなっている。わからなかったら検索すれば大概の情報は転がっている。そこには別の恐ろしさがある。そのうち、わからないものなど何もなくなってしまうかもしれない。わかったと思ったことが実際ほんとうかどうかもわからなくなるかもしれない。そうなる前に、なんだかわからないものをなんだかわからないままにしておくという感覚をもう少し楽しんでいたいと思う。『Live From Japan』は昨年日本で行なわれたNEO GAIA PHANTASYツアーでのdeath’s dynamic shroudのプレイを録音したnuwrld mixtape。これまでの作品とリリースされていなかった6曲が含まれている。気持ち良い音の洪水だ。もともとは、インターネットで発表される音楽にはライブで披露する予定などないものが多かったのではないだろうか。ベッドルームのモニターの前で踊っていた人たちは演者の前で踊るようになった。そして、これからどこへいくのだろう。