ボリビア生まれで、先住民アイマラの子孫であり、E+Eのメンバーとしても知られるElysia Cramptonの新作。伝統的な楽器群が持つ静謐な響きに、燃える炎のような激しさがほのかに垣間見える、多層的な側面を持つ作品。時折重ねられる催眠的なポエトリーや、クラシカルな楽器から民族楽器、電子音響まで、さまざまな楽器により紡がれる多彩な響きから、ラテンのリズミカルなダンスのグルーヴまで、多彩な文脈のサウンドを取り込み、蜃気楼のように幻想的で豊かで重厚な内的時間を紡ぎ出す。このような多層的な作品が生み出された背後には、ボリビアからアメリカに移住し貧困に苦しみ、そしてトランスジェンダーとして家族内で葛藤を持って育った彼女の持つ、マルチカルチュラルなアイデンティティがある。そして祖父が持ち帰ってきたチャランゴや、キルキンチョ、毛むくじゃらのアルマジロの殻付きギターなどといった、伝統的な楽器に魅力を感じていたという彼女が新たな創造性を見出したのが、何世紀にもわたってトランス・アイデンティティを擁護してきた文化であるアイマラ語族の遺産だった。伝統的音楽が持つ豊かな音楽性とその文化が持つスピリチュアルな奥行きを、より形式化されたクラシックの視聴体験として現代的に昇華させた、古典的な前衛ともいえる傑作。また、このアルバムはカリフォルニアのシエラネバダ山脈で投獄され、消防士として何年も働いていたPaul Sousaの人生に捧げられているという。収益はすべて、AMERICAN INDIAN MOVEMENT Southern California Chapterに送られる。