吹き抜ける風の湿度、土の匂い、生い茂る植物のざわめき、あるがままの自然から聴こえてくる呼び声には、やけどするほどの熱い混沌が渦まいている。ペルー出身でポルトガル在住のマルチ奏者Tomás Telloが奏でるエクスメンタルミュージックは、ギターとペルーの伝統音楽、そして彼が生まれ育ったアンデス文化についての調査に基づいて作り出したもの。動物あるいは薬草植物などの助けを借りて、Arturo Ruiz del Pozoや、Jorge Reye、Walter Maioliなどの初期実験家が試みたような、音楽により調和した意識状態を生み出すというビジョンのもと制作された。ケーナや、ドラム、チャランゴなどの民族楽器から、フィールドレコーディング、電子音響、エフェクトペダルのループまで、あらゆる素材がゆるやかなチューニングの中で静かに折り重ねられていき、湯気のなかの幻のような五感を刺激する多彩な感覚を立ち上らせる。その微細なチューニングの果てに響く神秘的な共鳴の世界は、聴くものを瞑想状態から自然が奏でる多弁的世界へと誘うだろう。
Tomás Tello – Cimora
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Arturo Ruiz del Pozo – Estudio para quena (1978)
Arturo Ruiz del Pozoがペルーの民族楽器をテーマに、ロンドン王立音楽大学の電子音楽スタジオでレコーディングしたミュージックコンクレート作品。
Jorge Reyes Nierika Ek Tunkul (1990)
メキシコのエレクトロニックのパイオニア、Jorge Reyesによるファーストアルバム。
Walter Maioli & Agostino Nirodh Fortini – Suoni ottenuti soffiando dentro due gambi di taraxacum
イタリアの音楽家、古代音楽研究家Walter Maioliとミュージック・セラピストAGOSTINO NIRODH FORTINIによるコラボレーション音源。