個展「超・いま・ここ」で辿る谷口暁彦の制作の軌跡。出来事の関連が作り出す、予言的な何ものか。

CALM & PUNK GALLERYで開催中(2017年4月8日〜23日)の「超・いま・ここ」は、2007年のICCでの出展以来、谷口暁彦がこの10年間に作り出してきた作品を並べ、そこに共通する問題を浮かび上がらせるという展示。変化の激しいこの領域で10年というとかなり長期間に思えるが、それを一堂に会すことで作家自身の思考の変遷を感じられるとても興味深い内容になっている。

今回の展示では、作家自身が作品について言語化するという趣旨がうたわれており、そのためか会場の中心には作品解説の掲載されたポスターが置かれている。解説ポスターには、会場にやって来る観客の過去の体験が描かれた絵画のような予言的な絵画を描きたいと発言する友人のエピソードが登場する。そして予言の本質的な前提として、双方の出来事が「似ている」ことに触れ、その類似によって「時間的な隔たりを、無時間的に短絡しあう」と指摘している。

本来は無関係な出来事同士が時間を超えて結びつくという跳躍は、谷口の作品の驚きの構造のとても明確な説明となっている。けれども個々の作品を眺めていると、谷口は結びつけるというより、接続されている状態と接続されていない状態の、不安定な中間を揺れ動いているようにも思える。そこにある余白は、彼の作品のひとつの特徴ともなっている。

経験する出来事はただ生起して消えていく。ときおりそれが、連続したシーケンスとして何かに関連付けられ、意識の上にぼってくるだけである。意識の隙間に消えた出来事が、新しく別ななにかに関係付けられるとき、それが新しい姿をまとい、予言的な何ものかとして現れるのかもしれない。しかしその出来事と出来事の結びつきの間の手前にある余白には、また別の純粋な状態が存在しているように思える。谷口の作品の中にどこか詩的な感触があるのは、そのためかもしれない。


会期:4月8日(土)〜4月23日(日)
※4月7日19時より、オープニングレセプションを開催致します。
開場時間 :12:00 – 19:00
※休廊日:日曜日、月曜日 /4 月 23 日 (日) のみ開廊
トークイベント:4月15日(土)17:00-18:30
ゲスト Houxo Que, 永田 康祐
入場:無料
会場:CALM & PUNK GALLERY
東京都港区西麻布 1-15-15 浅井ビル 1F 
http://calmandpunk.com/