Feral FileがプログラミングパートナーであるRhizomeとの協働により、ネットワーク化されたシステムの中で私たちがどのように生き、振る舞い、意味を構築しているかを探求することをテーマにした2つのサマーエキシビションシリーズを展開する。第一弾は、LAN Party(Vienna Kim & Benoît Palop)キュレーションによる《Console Spirituality》である。本展は、ビデオゲームが今日の文化を駆動する強力なエンジンであるという視点から、ゲームが「儀式的な空間」として機能している状況に注目する。遊びの場であると同時に、アイデンティティの形成、テクノノスタルジア、そしてスペキュラティヴなワールドビルディングの装置でもあるゲームから着想を得た作品が展開される。
参加アーティストは、Emi Kusano、Keiken & Gabriel Massan、John Provencher、Sabato Viscontiの5名。アーティストたちはゲーム世界の影響を受けながら、既存システムをグリッチさせ、ゲーム論理を実験し、ゲームによるワールドビルディングを通じて「神のビジョン」を提示することを試みる。展覧会はクエストのように構成され、4つのレベルを通して進行する。地下迷宮「Dungeoneer」、漂流する原野「Data Pilgrims」、断片化された天空「Angelcores & Heavenly Sprites」、そして最終的に到達する超越的領域「Omoiyari」へと、段階的に鑑賞体験を深める構成となっている。
John Provencherは、「Can it run Doom?」というインターネットミームを引用しつつ、ゲームのメカニズムを通じて展示の概念そのものに疑問を投げかける。Sabato Viscontiはレトロゲームのグリッチを通じて、技術のクィア的再解釈や覇権批判を試みる。Emi Kusanoは、AIを用いて生成された幻想的な巡礼者が仮想空間を旅し、静かな瞑想的空間を提示する。さらに、KeikenとGabriel Massanは、アバターを用いた繊細な感情表現により、「思いやり」が経済や政治といった現実の境界を超える可能性を探る。

Sabato Visconti, Angelcores & Heavenly Sprites (2025)

John Provencher, Dungeoneer (2025)

Emi Kusano, Data Pilgrims (2025)

Keiken X Gabriel Massan, Uxkme / Morphogenic Angels: I know who I am, although I have forgotten who I am (2025)
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Mackenzie Davenportのキュレーションによる《Net Evil》は8月26日より開催される。インターネットは人々のつながりや創造、コミュニケーションのあり方を変容させた一方で、古来の欲望や衝動をも誘発し、デジタル空間における新たな享楽・操作・倫理的曖昧性を生み出している。そのような「七つの大罪」をインターネット時代に再構成することコンセプトに、出展作家は、それぞれの「罪」がネット上でどのように表出するかに応答する。
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Feral Fileで開催予定のこれら2つの展覧会は、Feral FileがプログラミングパートナーのRhizomeと共に主催するサマーエキシビションシリーズの一環である。Rhizomeはネット生まれのアートと文化を推進する機関として知られ、実験的なデジタル表現を幅広く紹介するプログラムを展開している。
Console Spirituality
キュレーション:Vienna Kim、Benoît Palop(LAN Party)
主催・制作:Feral File
会期:2025年6月24日 17:00(UTC+0)開始
出展アーティスト:John Provencher、Emi Kusano、Sabato Visconti、Keiken & Gabriel Massan
Net Evil
キュレーション:Mackenzie Davenport
主催・制作:Feral File
会期:2025年8月26日 17:00(UTC+0)開始
出展アーティスト:TBA