2017-Feb-2017 Shares

シンセサイザー+バイク=? LOOK MUM NO COMPUTERが作り出す改造楽器と偏愛的実験的シンセサウンド

エレクトロミュージックが好きな方なら大量の配線を抜き差しし、ツマミをグイグイと回して変則的な電子音を作り出すアーティストの動画を一度は見たことがあるのではないでしょうか。それは電子音をいちから制作できるモジュラーシンセというシンセサイザーの一種なのですが、一旦その説明は置いておきます。今回はそんなモジュラーシンセサイザーを自作し、パフォーマンスをインターネットで拡散しているLOOK MUM NO COMPUTERというアーティストについてご紹介したいと思います。

26歳の彼はイギリス在住で、Zibraというバンドでボーカルをしながら、シンセサイザーを自作して演奏し、そのプロセスをYoutubeで公開しています。今までもシンセサイザーの演奏動画は「弾いてみた」系のキーワードと共に公開されてきましたが、彼が特殊なのはシンセをまったく異なる領域のマシンと組み合わせている点です。

その例のひとつがシンセバイク。そう自転車です。彼は自転車のハンドルやトップチューブにモジュラーシンセを搭載、車輪にも手を加え速度によってテンポが変化するように改造しました。

SYNTH BIKE 2.0 SYNTHESISER LOOK MUM NO COMPUTER

シンセバイクの解説動画:Synth Bike – In Depth

1999年に発売され、日本でも爆発的な流行になったファービーも彼の手によればコンテンポラリーノイズマシーンに早変わり。(動画前半が解説、後半が演奏)

How to sync a circuit bent furby to a synth video

モジュラーシンセのドラムパターンに合わせて悲鳴のようなノイズを発するファービー。魔改造されたファービーの姿が少し衝撃的ですが、既存のオブジェクトの破壊によって新しい音楽が再構築されています。

また、彼はシンセサイザーと生ドラムの即興演奏動画も公開しています。モジュラーシンセと生ドラムのライブセットは、リアルタイムに変化する複雑なモジュラーシンセの音の波と重厚なリアルドラムサウンドによって私たちを楽しませてくれます。

Look Mum No Computer LIVE Modular Synth And Drums

彼のようにシンセサイザーやおもちゃの回線を自分で改造することを「Circuit Bent」と呼びます。Youtubeだと約8年前から数多くの魔改造レトロトイのCicuit bent動画を確認することができます。とくに彼が面白いのは冒頭にも述べたように、自転車やダーツボード、ソーラーパネルといったほかのマシンとシンセサイザーを融合し、改造のプロセスを公開している部分だと思います。

DARTBOARD SYNTH – PLAYING MUSIC WITH A DARTS?
(最終的に手でダーツボードを押していますが、そこはご愛敬)

モジュラーシンセを配線位置から設計して制作するギークな彼ですが、Zibraというバンドではキャッチーで明るいシンセサウンドを作り出しています。

Zibra – Wasted Days (Official Video)

LOOK MUM NO COMPUTERのYoutubeチャネル登録数は約4400(2017年2月18日)。実験的で偏愛的で時にトラッシュな彼の活動を通じてエレクトロミュージックの面白さと奥深さをぜひ感じてみてください。

LOOK MUM NO COMPUTER
Youtube https://www.youtube.com/channel/UCafxR2HWJRmMfSdyZXvZMTw
Facebook https://www.facebook.com/LOOKMUMNOCOMPUTER/?hc_ref=PAGES_TIMELINE

(Text: 小松塚悠太)

2017-Feb-1641 Shares

プラハの〈Genot Centre〉より、Dane Lawのアンビエント・ハウス作品「r.bit」を体感するフライトゲームが公開

アルゴリズムを用いた手法でエレクトロニック・ミュージックを制作してきたプロデューサーDane Lawの、アンビエント・ハウス作品がプラハのレーベル〈Genot Centre〉よりリリースされ、続いてアルバムの世界観に呼応したゲームがフリーDLで公開されました。

ゲームの世界観から感じられるのは、スピリチュアルな宇宙の探索、生命とテクノロジーの関係、古典的な「人工知能」といった90年代に流行したテーマ群。いまVRの登場で息を吹き返しつつありますが、それらは当時多くの人々が夢見ていたコンセプトにほかなりません。実は今回のプロジェクトは、実際に90年台に活躍したUKクラブミュージック界の重鎮であるWilliam Orbitの商業的なアンビエント・テクノからインスパイアされたものだそうです。

リバイバルをコンセプトにした作品とはいえ、現代的な感覚を通過したその音響は今も不思議と新鮮に響きます。クラブミュージック的な没入感と覚めたような感覚がレイヤーのように重なり、シンプルな構造の中にも奥行きを感じられる作品になっています。

楽曲があえてコンサバティブな世界を作り出している一方で、ゲームの重力のない新しい空間を作り出そうという態度は対照的です。ユーザーはこの惑星のシステムを模した上も下もなく、始まりも終わりもない箱庭的な環境を探索していかなくてはなりません。シフトキーを押すと前進(これがわからず、最初ちょっと苦戦しました)。最初は無音ですが、あることをすると「r.bit」の楽曲が次第に聴けるようになっていきます。

開発はReaper Death Seal Corporation。Mac、Windowsで動作可能。さらにOculus riftとも互換性があるとのこと。是非試してみてくださいね。

Dane Law, “r.bit”
https://genot.bandcamp.com/album/r-bit
Gameのダウンロードは以下。
http://genot.cz/rbitgame.htm

2017-Jan-2267 Shares

反トランプを掲げ立ち上がったアクション「ウィメンズ・マーチ」。世界中の人々の見せたウィメンズパワーとそのイメージ。

誰もが予想をしていなかったトランプ大統領就任から一夜明け、21日に行われたトランプへの抗議と女性の権利向上を主張するために行われたウィメンズ・マーチ。その数は大統領の就任式に集まった人数をゆうに超える50万人となり、ホワイトハウスの周辺はピンクの帽子をかぶった人々で埋め尽くされました。また東京を含む世界60カ国でも連動した抗議が行われ、その抗議の波は世界中へと広がりを見せています。

当初から女性蔑視的な発言を繰り返して来た大統領への反発は当然とはいえ、悪くなっていく世の中に決して黙せずアクションを畳み掛けていくエネルギーは、都市における多様性の共存というテーマを動物という比喩を介して表現した『ズートピア』のような映画をどメジャーな場所で作りだしてしまうようなアメリカの強い良識の部分が表れていると感じます。

驚いたのが海外のInstagramのフォロワーたちが関連する写真をあげまくっていて、タイムラインがウィメンズ・マーチ一色になってしまったことです。日本ではセレブのデモなんて揶揄する人もいますが、立場のある人だからこそ発言するというのはひとつの常識、ということなのでしょう。アーティストやミュージシャンもしかり。そこで今回は新しいガールパワーも予感させる、印象に残ったプラカードや写真をピックアップしたいと思います。

girls march #womensmarch

DISさん(@dismagazine)が投稿した写真 –

Dismagazineより。あまり示威効果はなさそうですが控えめさが逆に目を引きます。わたしが一番ってやっているみたいで、かわいいですね。

#womensmarch

DISさん(@dismagazine)が投稿した写真 –

こちらもDismagazine。Disに関してはあまり政治的なスタンスは明らかにしていない印象がありましたが、さすがにということなのでしょう。写真のトリミングにDisらしい斬新さがありますが、クローズアップすぎて場所がどこなのかよくわかりません。彼らの拠点のNYでしょうか。

とにかく手書きのプラカードがかわいい。日本でもプラカードに統一感を出しておしゃれにする動きがありましたが、なかなかこういうのは作れないなあと思います。手書きなのにいろいろな字体があって見ていて飽きません。

Rihanna at the #womensmarch in NY

@emmafntyが投稿した写真 –

こちらも手書きのプラカード。モデルのようにポーズを取っているのはどうやらリアーナのようです。どういうシチュエーションでこうなったかわかりませんが、プラカードをおいていっちゃうのは欧米スタイルなのでしょうかね。

こういった横断幕もよく見かけますが、プラカードとはまた違う趣があってよいです。文字が傾いていたり、歪んでいるのも味わいがありますね。女性だけでなくすべてのジェンダー・スペクトラムへ向けたメッセージのようです。

I used to walk to the Trump Tower after work when I was interning at the Met Museum. It was around the time of the Occupy Wall Street protests, and I would go sit in that gaudy temple of doom to reflect on how trickle down economics function (aka disfunction). ⛓ The Trump Tower is a dead mall. When you take the escalator upstairs, all that's there is shuttered stores that used to exist to attract tourists, but now are out of business shrines to nothingness. It is a metaphor for what this presidency is going to look like. So, my fellow Americans, it is up to us to fight back and to reclaim justice against those who seek to destroy & silence us in the name of greed & exclusionary uses of power. The next four years require strength & mobilization, and for us to come together to fight for what we believe in. Let's get to work.

Signe Pierceさん(@signepierce)が投稿した写真 –

タイムズスクェア前でとても美しいパフォーマンスを作り出す、アーティストSigne Pierceのインスタより。こちらは成金趣味で悪名高いトランプタワーの前ですが、パフォーマンスのようなことを行なっているのでしょうか。

#womensmarchonwashington photo by @madjohnchick

The Riot Grrrl Projectさん(@theriotgrrrlproject)が投稿した写真 –

パンク・ シーンでの性差別に反対して生まれたライオットガールのムーブメントのドキュメンタリーを作成しているプロジェクト、The Riot Grrrl Projectより。独特のフェイスペイントとプラカードがマッチしていてパワフルです。

🚫🚫🚫🚫🚫

GURLS TALKさん(@gurlstalk)が投稿した写真 –

こちらはGurls Talkという女性のためのコミュニティをつくる運動体のインスタ。モデルのAdwoa Aboahによって設立された団体だけあって、おそろいの衣装がおしゃれですし、スウェットに書かれたメッセージも気がきいています。

ざっと駆け足で見て来ただけですが、こうやってみると世界中にどれだけ多くのコミュニティや運動体が存在しているのかを改めて実感します。わたしたちがふだん接している文化や物事は、そうした見えない意思の存在によって支えられてきたのかもしれません。普段ばらばらに存在しているそうした流れも、危機にさらされた時には抵抗の声をあげ、また連帯して動いていくのだと思います。正直未来は暗いと感じざるを得ませんが、こうした個人が作り出す動きの中には可能性の光が潜んでいるのではないでしょうか。

2017-Jan-1933 Shares

インターネットのお土産屋?プロダクトを売るコレクティブのプロジェクト「the internet shop」。

僕らが「インターネット・カルチャー・ショップ」という展示をやらせてもらったのは2014年のことですが、先日その名も「the internet shop」というプロジェクトを見つけたので、今日はこちらを紹介したいと思います。

そういえばインターネットはば英語で「The Internet」と書きます。Theがつくのはインターネットが世界で一つしかないからとのこと。しかしそれはこれまでの話で、去年AP通信が「internet」と普通名詞で表記するよう転換をしたというニュースがありました。確かにそれはそうだよねという感じです。

そう思うとインターネットってとうとう「海」とか「森」とか「宇宙」といった言葉と並べられるようなものになったのかなと。だから海の近くには海グッズを売る店があるような感じで、インターネットにもインターネットのグッズがあってもよいですよね。「the internet shop」はインターネット好きが訪れる、お土産物屋さんというイメージなのかもしれません。

そんな「the internet shop」ですが、立ち上げたのはVeryVeryContemporaryというクリエイターのネットワーク。メンバーを見て見ると、ドイツを中心にヨーロッパ界隈で集まっているという感じ。コレクティブみたいなやり方ってあまり日本では聞かないのですが、各々が独自に活動しながらゆるく集まって活動するこの感じはよいですよね。「the internet shop」はそんな感じで友人たちが作ったものを集めて売るプロジェクトなんではないかと想像します。

Welcome @sucukundbratwurst to #theinternetshop 💛 limited print #BEWATERMYFRIEND now exclusively available: #brucelee #vosswater #stayhydrated

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

collection for @laurakokinova is now ready for your neck 🌹

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

☃ snowden snowball ☃ #theinternetshop

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した動画 –

O'cock 🔜 at #theinternetshop 🍆⏰

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

https://the-internetshop.com

2017-Jan-1823 Shares

ヴァーチャルギャラリーDiMoDAが作り出した、知覚を変容させる鑑賞体験というアート。

いわゆるインターネットネイティブといわれる世代が固執するヴァーチャルな三次元空間への憧憬は、おそらく世代的にゲームの体験に由来しているのではないでしょうか。フラットな世界から立体への移行という革命の最初の経験は、これからくる未来への期待に彩られており、私たちはその技術的な欠点や未熟さをイマジネーションで埋めることができました。そしてそこにある不完全性は次第に新しさや独自性に転換し、ひとつの文化的領域を形作るまでに拡張したように思います。

そして近年ではUnityやBlenderなどの登場により、ほとんど無料でそれと同等かそれ以上の技術を用いることができます。アーティストたちは美術を正式に学ぶより前に、こうしたツールで作品を作りまくることが可能です。こうした今の状況は、美術に対する空間への意識も変化させずにはおかないでしょう。そしてオンラインギャラリーとVR技術の組み合わせはそうした創作物の最適な保管場所であり、またそれゆえにそれらはホワイトキューブの空間に変わる新しい礼拝所になりつつあります。

さて今回紹介するのは、DiMoDAというヴァーチャルギャラリーです。DiMoDAはDigital Museum of Digital Artの略とのこと。アーティストのAlfredo Salazar-Caroと、William Robertsonにより、2013年に構想、2015年にThe Wrong Biennaleのパビリオンとして最初の展示を行って以来、年二回、少数のアーティストたちからなる展示を作り出してきました。

ユーザーはフロントとなるインパクトのある建物から、ポータルを介して3つの会場に行くことができます。会場にはそれぞれ独自の物理的な特性があり、作品を見るのと同時に自身へフィードバックされる感覚の変容も見所になっています。

彼らの特徴のひとつは、そのプロジェクト自体をさまざまなフィジカルな空間で展示している点かもしれません。マイアミビーチで開催されたアートバーゼル、NYのTransfer Galleryなどで展示を行うなどなかなかエネルギッシュに活動しています。またこの一月からは、ロードアイランド州のRISD MuseumでVR展示を行う予定とのこと。

最新の展示は以下のサイトからダウンロードできますので、是非体験してみてください。

http://digitalmuseumof.digital/art/

2017-Jan-1211 Shares

Boomkat Editionsの新シリーズ「12×12」がスタート。第一弾はRaimeの新名義、Yallyによるシングル。

イギリス、マンチェスターを拠点として、クラブトラックから実験的なベッドルーム・ミュージックまで幅広い電子音楽を取り扱うレコードショップであるboomkatが新しい12枚の12インチをシリーズでリリースする、『12×12』をスタートさせました。本シリーズは2017年でレコードショップとしての経営が20年目を迎え、またセルフレーベルboomkat editionsのスタート5周年を記念するものです。

その第一弾を飾るのはRaimeの新名義、Yallyによるシングル。いまだ1枚の7インチしかリリースされていない姉妹レーベルも含め、これまで『Blackest Ever Black』のみでリリースをしてきた彼らにとっては初の「外仕事」とも言えるでしょう。

ジャングルや2ステップなどのクラブ・ミュージックから小杉武久や裸のラリーズ、またFugaziやSlintといったハードコア、スロウコアのバンドからの影響についても公言してきた彼らは、これまでの2作のアルバムではインダストリアル,ノイズといったサウンドを主として展開してきました。yallyの名義での本作ではグライムやジャングルといったイギリスのストリートから産まれた音楽を主軸としたものとなっています。boomkatによるノーツでは,本プロジェクトは「ベース・フューチャーの開拓」と称されており、これまでのイギリスの音楽において常に重要なエッセンスであった「暗さ」がしっかりと受け継がれていることが感じられます。

さらに,Boomkat editionsの第2弾を飾るのは,先述のYallyと同じくロンドンを拠点として活動を続けるBeatrice Dillonです。

これまで〈The Trillogy Tapes〉や〈Where to Now? 〉のようなレーベルから,ゆっくりしたペースでリリースを続けてきた彼女は,半世紀近くの間、イギリス国内外の現代美術家の一つの重要な居場所となってきたLisson Garalleyなどでプレイするなど,先鋭的な音楽を芸術などの他のフィールドへ繋げていく(もちろん、音楽はそれ自体が非常に芸術的なものだけれど)活動を続けてきました。

第1段のYallyとは異なるアプローチながら,クラブミュージックの周縁を開拓し続けている彼女のリリースには,レフトフィールドと呼ばれるような音の実験と、音楽の革新の場であったクラブという空間を繋げてきたレーベルの先鋭的な姿勢を見ることができると思います。まさに本シリーズにふさわしい記念碑的なリリースです。

2017年となり、今後数ヶ月に渡って合計12枚のリリースを完成させる予定のBoomkat Editionsの『12×12』シリーズ。今後、どのようなアーティストやミュージシャンが我々の耳を驚かせてくれるのか、期待して待ちましょう。レーベルにとって記念すべき年となる2017年の電子音楽の台風の目となるかもしれません。

(Text: 中村繁)