GOODMOODGOKU & 荒井優作 – 色
goodmood gokuと荒井優作による耽美的かつ冷めたプロダクションが描く世界では、たとえば24時間という1日の単位は引き伸ばされ、「俺とステキな女の子たち」とのエピソードやある種の夢がつながっていく。ここで鳴っているのは現在進行形のヒップホップ・R&Bだが、それがラップとともに総体として心象風景を描いたり時間旅行へ誘うような詩でもある。ぶっ飛ばしてくれるものは大抵、スイートであり抵抗なぞする余地もない。(N)
https://soundcloud.com/goodmoodgoku/sets/aamma1tvp1r5
H.TAKAHASHI – Raum
〈Where To Now?〉からリリースされたフルレングスLP。iPhoneを用いたという作曲方法は、ギミックではなく、場所の制約なく音楽制作をするため編み出された方法だそう。アンビエントというキーワードがますます注目されるようになった本年だが、高橋は吉村弘から芦川聡などの日本のミニマリストの作品から、エリック・サティにジョン・ケージ、ブライアン・イーノ、レデリウスなど、アンビエント・ミュージックの歴史をの流れを再び遡り、現代的な解釈によりあたらしいサウンドを作り出した。電子的パルスの響きが幻想的な模様を波紋のように放出し、聴くものの身体をやわらかな音の絨毯で包み込む。空間的なその感性は、建築家という職業に由来しているのだろうか。稀有な美しさを持った作品。(S)
長谷川白紙 – アイフォーン・シックス・プラス
〈Maltine Records〉より、iPhoneに関する叙事詩をテーマに描いたという長谷川白紙「アイフォーン・シックス・プラス」。高速で打ち出されるジャズのリズムが、複雑な和音と歌声に絡み合う。躁的なハイパーさのある楽曲にも、全体としてはどこか柔らかく、軽くポップな印象。歌詞があまり聴き取れないのだけど、奇妙な詩情ただよう歌がとてもよい。ジャケットはアーティストの山形一生が手掛けた。(S)
Iku Sakan – Prism In Us All
大阪出身、現在はベルリン在住の、アーティスト/DJであるIku Sakanの初のLP。同じく今年マンチェスターの「Natural Sciences」からリリースされたカセット作品『Human Wave Music』にも通ずるが、まさにタイトル通り、光がプリズムを通して、屈折し反射しあうかのように、反響音の強いパーカッションときらびやかな音たちが飛んでは跳ね返り、リズミカルに多面体を描き出す。抑制の効いた音作りでありながら、角度を変えれば無限に色彩を変化させるかのように、聴く度に新しい発見と、移ろいの美観をあたえてくれる。(T)
Jobanshi – Koko
〈Bedlam Tapes〉よりリリースされた本作は、エレクトロニックな音響のなかに自然音が融合されたアンビエント・アルバム。揺らめきのような繊細な響きが、聴くものを淡く和やかな幸福感で包み込む。子供時代に見た風景を表現したという、どこかファンタスティックな感じのする音響など全体を通して、とても和やかで優しい。本作の予告ビデオのナレーションは、本サイトで連載を持つ捨てアカ氏が担当したとのこと。(S)
Jun Kamoda – The Distorted Haunted Ballroom EP
イルリメや(((さらうんど)))のメンバーとして知られる鴨田潤の、ラップ同様にトラックメイカーとしての才気のほとばしりが感じられる作品。不規則に連打されるトランペットと打楽器がうねるように複雑なリズムを作り出し、聴くものをレイブ的な熱狂へと引きずり込む「Body&Soul」、短く刻まれたシンプルな反復ビートがゲットーな楽しさを放出する「(((BYE)))」、エコーの掛かったボーカルサンプルがジャングルのような幻想的な色彩を描く「Dopey Forests」と、バラエティに富んだ3曲が収録されたEP。(S)
角銅真実 – 時間の上に夢が飛んでいる
様々な場所への楽曲提供・演奏を行い、バンドceroのサポートメンバーとしても活躍する、打楽器奏者/作曲家である角銅真実初のソロアルバム。各パート間の絶妙なバランスもだが、自由自在に伸びては縮み、あちらこちらへと飛んでいくかのような楽曲の軽妙さと、彼女の歌声がとても楽しい。その身軽さは、形自体は明瞭でありつつ、夢と現を行き来するかのように不安定で止まりをもたず、聞こえてくる全ての音が本当でも嘘でも、どちらでも信じてしまえるような気持ちになる。形容が難しいのですが、こちらのインタビューを是非読んでみてください。(T)
Kazumichi Komatsu – Aggressively Unedited
京都をベースに活動するアーティスト・音楽家MadeggことKazumichi Komatsuの〈angoisse〉からのリリース。こちらは笹塚ボウルにて行われた”Bower Room R1″でAbleton LivとPure Dataを用いて行われた24分のライブ音源。絞り出されるように積み重ねられていく音の雲に、高音域のフラグメントが積み重なねられ、柔らかく抽象的な形を描く。目的もなく、感情もない、知らない国の映像を眺めているような、実在の希薄さ。曖昧で形をとらない思念のように、それらは現れては消えていく。(S)
koeosaeme – Sonorant
koeosaemeはRyu Yoshizawaが2014年にスタートしたプロジェクト。高橋幸宏率いるサウンドクリエーター集団、OFFICE INTENZIOに所属していたり、キャリアのあるアーティスト。〈Orange Milk〉よりリリースされた本作の内容は、音の粒子が自由自在に飛び回る華やかな電子音楽。切り刻まれた電子音、歪んだボーカル、メロディやリズムが渾然一体となった複雑性の中に、カオティックな美がときおり顔を覗かせる。独特のグルーブ感が特徴で、静と動のような激しい陰影のある作品。(S)
Laxenanchaos – Mental Akses
覆面ブレイクコアアーティストのLaxenanchaosの初のカセットテープによるソロ・リリース。微分法的に刻まれていくビートが、シンプルな音色と次第に交錯し、波のうねりのようなゆらぎを作り出していく。打ち鳴らされる高速ドラムは全体を通して抑えた調子で、どちらかというとその電子的な残響のほうが耳に残る。強靭なビートの奥に、儚さも感じさせる作品。(S)
Le Makeup – Hyper Earthy
レッドブル主催の音楽フェスティバル「AT THE CORNER」にも出演を果たしたLe Makeupの新作。特徴である歪んだ電子音に、アコースティックな味わい。織りなされるさまざまな音の表情は、楽曲全体として柔らかな印象を形作っている。繊細ともいえるタッチには、どこかエモーショナルで個人的な感触がある。写真のように瞬間の気分を書きた止めたスケッチのような楽曲。定式化されたダンスミュージックの退屈を吹き飛ばすのは、こういう個人的な視線なのかもしれない。(S)
LSTNGT – Holy Machine
巨大なビル群の合間を、光の軌跡が高速で過ぎ去っていく。SF小説の表紙に描かれているような未来都市のビジョンにピッタリのサウンドトラック。トランシーでエモーショナルなそのサウンドから立ち上がるニュアンスはとてもはっきりしているのに、イマジネーションを喚起する余白もある。蛍光管を用いたライブもめちゃくちゃかっこよい。(S)
Masahiro takahashi – でんでん虫の殻の中の音楽
アーティストのユニス・ルックの展示『Music of inside the snail’s shel でんでん虫の殻の中』に合わせて制作された音源が、カセットとなってリリース。アコースティックと電子音、環境音が交わりながら、適度な湿度と空気を含んだ、ゆったりとした味わい。想像上の生態系の中で、有象無象の生物や植物たちが、各々のざわめきと共に協演しているかようでもあり、聞き手によって異なるイマジネーションとスケープが膨らむであろう、有機的なアンビエント・ミュージック。(T)
メトロノリ – 湖に行って!
一曲だけのシングルだけど、これといった派手な出来事はなにも起こらない。だけど、しびれのような、かすかな存在の感覚だけが残る。なにかがただ「ある」というような佇まいのある不思議な一曲。Simに手紙付きで掲載された須藤なつ美監督の映像も素晴らしかった。(S)
NHK – Exit Entrance
NHK yx KoyxenはKohei Matsunagaのソロプロジェクトで、90年代よりMille Plateaux やPANなどの名門レーベルから作品をリリースするなど、20年のキャリアを持つ人物。本作は、NYの名門〈DFA〉よりリリースされた。美しく仕上げられた音像を持つそのサウンドは、実験的で歪つなミニマルテクノ。そのタイトルや本人同様に、どこか匿名性も感じさせる。持ったアルバムの制作中に急逝した友人・コラボレーターのMika Vainioに捧げられた楽曲も収録されている。(S)
Old Man Archives 『The Remnants of love』『Across the river』
『OLD MAN ARCHIVES』は日常で目にする老人たちの語りをその場で録音し、本人の年齢の数だけ限定でリリースする、という少し変わったアーカイブ・プロジェクト。これまでに5本の作品が発表されているこのシリーズ、美しいパッケージも魅力的だが、カセットというフォーマットの脆弱性や不可逆性に呼応しながら、独白から浮かび上がる匿名の記憶は、当人でしか体験しえなかった境遇や出来事、そこに生じる感情や想いが入り混じった澱のようなもので、それは「かけがえのない」と同時に、誰しもが時間の経過と共に持ちうるという、自然に「ありふれた」存在でもある。それに耳を澄まし、想いを馳せるということは、個人を超えてうまれる、集合的な記憶に対峙するかのような感覚もあり、郷愁ではなく、どこか宙づりにされてしまったかのような、そんな不思議な気持ちにもなる。(T)
パソコン音楽クラブ – SHE IS A
(僕のような)90年台のカルチャーを謳歌した者にとって80年代の文化には、軽薄で浅はかといった悪いイメージが伴っている。そうした「ダサいもの」とされていたものをあえて取り上げて解釈し直していくことも意味のある手法だと思うけれど、今のVaporwaveシーンには、もっとピュアな姿勢を感じる。Vaporwaveのメタ的な視線のほかに、より強く感じるのは、夢の中にずっとい続けたいというモラトリアム的な姿勢のほう。これだけ世界が病んできているのだから、わたしたちはポストモダンの生理的な欲求に従って、デジタルなプラスチックの幻想を量産し続け、消費し続けるほかはない。その先にはきっと、誰も全く見たことのない光景が広がっている。(S)
Phew – Light Sleep
70年代後半からのキャリアを持つアヴァンギャルド・シンガー、電子音楽家、Phewのライブ会場限定で発売していたCDRから編集された6曲入りのLP。彼女の特徴的な声による朗読の下で、重厚かつヌケの良いエクスペリメンタルな電子音が炸裂する。実験音楽の持つスリリングな前衛性と、今のシーンにも繋がる現代的な感性の両方を併せ持った怪作。(S)
Rhucle – Wonderland
環境音のサンプルに、ゆったりと響きわたるシンセサウンドの組み合わせが耳にひんやりとした質感を残す。どこか非現実的なそのゆらめきに身を委ねているうちに、眠っていた意識がゆっくりと覚醒していく。今年はマンスリーで作品をリリースするなど、一年を通して多くの作品をリリースした。(S)
Ryushi – Soul
〈SEAGRAVE〉よりリリースされた、関西で活動する3人組Ryushiのアルバム。タイトルの「Soul」は、土地から立ち上がってくる魂のイメージがリズムと融合したらどうなるのか?という制作中の考えから付けられたもの。スモーキーな電子音響に、街角の片隅から綴られた詩情が重ねられていくポエトリーリーディング。JjakubとIce_Eyesによる狂気のリミックスも収録。(S)
Saskiatokyo – FANTASIA
saskiatokyoの初となるEP。物憂げな声質のボーカルの下で、デジタルな空気感を持った音のテクスチャーが絡み合い、複雑なモザイク模様を織りなす。歌詞はよく聴き取れないのだけど、素晴らしいと思いながらも夢のように実体のない、とある場所について語っているそう。予定調和に収束しない不協和音のような独特の響きが耳に残る作品。(S)
SAYOHIMEBOU – The Gift from Neon Planet
トレードマークは、ネオンカラーのおかっぱ頭のアンドロイドのようなキャラクター。きらびやかでラグジュアリーな音色とファンタジー感のある和やかな旋律が、フォトショップで加工されたきらびやかな都市的光景を描く。遠くで鳴ってるような響きを持つボーカルは、どこか遠い未来のスペースオペラのよう。複雑なカットアップ・コラージュ、ポップかつクリアな音色を持つ自由に飛び回る電子音はまさに今の音という感じで、Vaporwaveの作法に沿ってはいるけれど、確実にそれを更新しているような感覚がある。(S)
seaketa – My Sumaho
タイトルは「My Sumaho」。ザッピングしていくようなコラージュ感覚の詰まった、エレクトロニックな実験音楽。「いるか息」や「tiny翻訳」といった人を食ったタイトルのように、音もどうにもとらえどころがない。全体にわたってぬめりとした不思議な印象を作り出している。(S)
$ega & The Rainbow Streets – 想いで100景
〈Noumenal Loom〉からリリースされた$egaの作品は、DJWWWW名義のスタイルから距離を起き、豪華なバンド的なサウンドへと舵を切った内容。ハウスミュージックの牧歌的な部分を抽出したような多幸感と、見知らぬ国を旅するロードムービーのような切なさがある。ただただ過ぎ去っていく風景を見て懐かしさと悲しさを覚える理由。どこかにおいてきた遠い記憶のような美しさには虚構的な要素があって、ハリボテのような美しさは、たぶんハリボテだからこそ美しいのだ。(S)
Suburban Musïk – The Gold Ink’
CONDOMINIMUMが設立したレーベル〈CNDMM〉からの限定7インチの第3弾は、EVIAN VOLVIKによるユニットSuburban Musïkの初EP。低音の方向へと歪み切った、荒れたテクスチャ―、ビリビリと重く深く響くビート。野生的で凶暴な底に暗い美しさがある。ラストの吠えるように歌うゴシックなボーカルの曲も良い。(S)
SUGAI KEN – UkabazUmorezU (不浮不埋)
インターネットが世界のリスナーたちの距離を狭め、私たちは物理的距離や時間から自由になった気分になることがある。しかし、我々全員が個々の人生においてどこで生きてきたか、その中で五感が感じ取ってきたものはあらゆる表現につきまとう。日本の伝統的な…という冠とともにレビューされる本作であるが、「浮かばず埋もれず」に多くの日本で生きてきた人間が懐かしくもつきまとうような感覚を思い出させる環境を創り出す作品である。美しく、まるで幽霊のように。(N)
Swan Meat & Yoshitaka Hikawa – KNIFE SPLITS ICE
日本のYoshitaka Hikawaと、シカゴ在住のサウンドデザイナーで詩人のReba FayによるプロジェクトSwan Meatが1年に渡るオンライン上のコラボレーションにより作り上げた作品。切り刻まれて破片となった音素がデジタル的なテクスチャーとなり、鋭利で抽象的な世界像を作り上げている。Fayのポエトリーはどこか冷たくて、あまり人間的な感じがしない。まるでマシーンが作り出したポエジーのようだ。インスピレーションとなったというFayの病院での体験がどのようなものかはわかないが、神話的といってもよいほどの冷たさと、非人間的なイメージは、そこに由来しているのだろうか。(S)
toiretstatus – Nyoi Plunger
ディズニー・アニメの誇張された動きのように、想像力が生み出すものすごいグルーブ感。彼の音楽に出会ったときはびっくりしたけど、本作はよりそのスタイルを進化させていて、ポップさも増している。伸びたり縮んだりする時間のような感覚は、音楽が時間芸術だということを思い出させてくれた。どうなってるのか全くわからないけれど、耳の奥ををかき回す心地のよい混乱がある。最高に奇妙ですばらしい電子音楽。(S)
Tomoko Sauvage – Musique Hydromantique
パリ在住のサウンド・アーティストであるTomoko Sauvageによる、名門Shelter Pressからリリースされた今回のアルバムは、元製紙工場で録音されたというバックグラウンドも相まって、その特殊な空間と彼女の身体が深く共振した、音響作品。水のフォルムを手の動きによって形成し、音の彫刻を作りこむイメージ、と述べていたが、聞き手である私たち自身も、これらの音に、文字通り「触れて」いるかのような感覚がある。水や空間といった媒介物を通して、私たちの聴覚器官が文字通り「触覚」として音を受容するということは、根源的な知覚であるがゆえに、普段の意識には昇らない。その始まりに遡ってみれば、より自由で広がりをもった、音と音楽との接点があるかもしれない。(T)
豊平区民TOYOHIRAKUMIN – リフレクション
札幌市在住の日本では数少ないVaporwaveアーティストのひとり豊平区民TOYOHIRAKUMIの、2016年の〈New Masterpiece〉からのリイシュー「メモリーレーン」を20のリミックにより再構成した作品。リミックス陣には猫シCorp.、VAPERROR、CVLTVRE、t e l e p a t hなどそうそうたるメンツが並ぶ。切なく消えてしまいそうな夢の物語。記憶を反芻するように、熟成した芳醇な湿気のなかに曖昧なイメージが表れては消えていく。(S)
Ultrafog / m do – Split
Ultrafogと、USカンザス在住のRYAN LOECKERによるプロジェクトm doの〈angoisse〉からリリースされたスプリット・カセット。硬質で重い音の雲を漂うようなUltrafogのA面に、ミニマルな音響がゆったりと波のようなパターンを描き出すm doのB面。アンビエント/ドローンといったカテゴリーを超えて、オンラインで繋がりあって拡張していく実験音楽のシーンの確実な成果物。ただただ豊かな音の質感に抱かれながら飛翔する極上の体験を楽しみたい。(S)
woopheadclrms – Kamechiyo
〈Wasabi Tapes〉より愛知県を拠点に活動するトラックメイカーwoopheadclrmsの作品。ものすごい速さで流れ去るオンライン上のコンテンツのエッセンスだけ抽出し、濃い部分だけ音に置き換えたような、個性的で色とりどりの音たち。コラージュ的な手法でつくられたそのサウンドは、まるで生きているように自由奔放。斬新だけどどこかユーモラスな感覚もある。YouTubeにあがっている作品群もすばらしいものばかり。(S)
Yoshimi – apanese Ghosts II
YOSHIMIは菱田吉美という名義で映画のサウンドトラックやCM音楽を手がけるなど、作曲家として長いキャリアを持つ人物。本作は怨霊、翁、生霊、鬼、妖怪、物の怪、来訪神、良きも悪きもが現実と非現実の境を超えて都市空間に流出してくるさまを描いた作品とのことで、物語性を感じるシネマティックな音像はまさに〈PYRAMIDS〉の音という感じ。そのハードさや暗さも含めてイギリスのレーベルと日本的感覚の親和性の高さが証明された作品といえるかもしれない。和楽器とエレクトロニックな音響がノイジーなテクスチャーの中で溶け合っていて、その独特の間や湿り気は、やはりこの日本の風土から生み出された感覚だと思う。新しさと古さを乗り越え、独特の佇まいを獲得した作品。(S)
Yullippe – Selfish&Anchor
大阪を拠点とするプロデューサーYullippeの最新作は、鋭利かつ重厚なインダストリアルテクノ。電子的な質感をまとった本作は、ボーカルを押さえてより硬質なサウンドに変化を遂げた。工業的なカッコよさと雄大な自然のようなアンビエンスが融合されて、エレクトロニクスの歪みのなかでそれが陰影を作り出している。美しさの中にも現代的な感触を感じさせる作品。(S)
夕方の犬 – Paint Room
夕方の犬による「Paint Room」はピアノとバイオリンによる6曲入りのEP。クラシカルな楽曲がうっとりとするような張り詰めたアンビエンスと、叙情性を紡いでいく。シンプルな音の美しさとその響きに耳をやると、意識がどこか遠くへ行ってしまいそうになる。その静かな世界は孤立していて、止ってしまった時間のような切なさがある。(S)
YXIMALLOO – THE BEST OF YXIMALLOO 1
ドイツのレーベル〈Konpakt〉が、当時、制作者不明の音源を探すために「WANTED(指名手配)」と名付けてリリースしたという逸話もある、イシマルーこと石丸尚文。80年代の録音を中心に厳選された自身の自主レーベル〈桜れコーず〉からの2枚組LP。ただただ音楽を作り続けてきた行為のピュアな積層が、ゆったりとした時間感覚の中に結晶化している。(S)
http://www014.upp.so-net.ne.jp/yximalloo/
日本の豊穣な地下シーンを50組のアーティストと楽曲で振り返る。50 Japanese track maker / musician 2017。#1-25