八広HIGHTIの13年

てくてくと見知らぬ川べりの土地を歩いていくとたどり着く、バラックのような建物。都心で遊んでいる身からしたら、ちょっと遠いなあと思ってしまう距離感。けれどその廃墟みたいな空間に一歩足を踏み入れたら、よく見知ったアンダーグラウンドな熱気がある。当時、美大出身のアーティストたちが、自分たちで居住空間を手作りして、夜な夜な友人などを呼んでライブなどを行っている面白い場所があると噂になっていたのを耳にして、記事を掲載したのがMASSAGE8号のとき。その八広HIGHTIの13年の活動をまとめた展示が本日より始まった。

展示を見てはじめて、つい最近までその空間が存続していたということを知って驚いた。あのころジャンルをまたがって面白い場所を見つけて遊んでた友人たちも、震災のあとはばらばらになってしまったから、なんとなく勝手に彼らも活動をしていないのだと思いこんでいた。その場所から彼らはどんな風景を見続けていたのだろう。長い期間だからきっと変化もしてきただろうけど、住んで、作って、遊ぶをそんな長い期間にわたって繰り広げてたなんて、あらためて理想の生活の形だなあと思う。

けれど、そんな場所がもう今はないという事実に、なんとも言い知れぬ喪失感も感じてしまった。たしかにそうした生活を送れるのも人生の限られた期間だけなのかもしれない。また自分が知らないだけで、今も生まれたり、消えていったりする面白い場所がほかにもあるのかもしれない、とも思う。世の中が内向きになっているのか、自分が内向きになっているのか、人間関係を超えて感覚で繋がることがなんだか前より難しくなった気がするけれど、そういう場所で生み出された感覚はきっとその人の作品とか感性を通して、転生していっているはず。またいつかそういう感覚と出会えたらと思う。

「HIGHTI 展」
相川勝 矢代諭史 工藤幸平 中野恵一 
2017年12月21日(木)〜2018年1月28日(日)
http://akibatamabi21.com/exhibition/