てくてくと見知らぬ川べりの土地の歩くとたどり着く、バラックのような建物。都心で遊んでいる身からしたら、ちょっと遠いなあと思ってしまう距離感。廃墟のような空間に一歩足を踏み入れると、よく見知ったアンダーグラウンドな熱気がある。当時、美大出身の作家たちが自分たちで居住空間を手作りして、夜な夜な友人などを呼んでライブなどを行っている面白い場所があると噂になっていたのを耳にして取材したのが2007年のMASSAGE8号のとき。その八広HIGHTIの13年の活動をまとめた展示が本日より始まった。
展示を見てはじめて、つい最近までその空間が存続していたということを知って驚いた。あのころいろいろなジャンルをまたがって面白い場所を見つけて遊んでた友人たちも、震災のあとはばらばらになってしまったから、なんとなく勝手に彼らも活動をしていないのだと思いこんでいた。その場所から彼らはどんな風景を見続けていたのだろう。きっと長い期間だから変化もしてきただろうけど、住んで、作って、遊ぶをそんな長い期間にわたって繰り広げてたなんて、あらためて理想の生活の形だなあと思う。
けれど、そんな場所がもう今はないという事実に、なんとも言い知れぬ喪失感も感じてしまった。たしかにそんな生活を送れるのも人生の限られた期間だけなのかもしれない。海外だとアーティストを泊めて制作することも、もうすこし一般的だし、日本でも東京以外ならそんな場所をつくることも可能だろう。知らないだけど、今も生まれたり、消えていったりする面白い場所がほかにもあるのかもしれない、とも思う。世の中が内向きになっているのか、人間関係を超えて感覚で繋がることがなんだか前より難しくなった気がするけれど、そういう場所で生み出された感覚はきっとその人の作品とか感性を通して、転生していっているはず。またいつかそういうものと出会いたい、と思う。
「HIGHTI 展」
相川勝 矢代諭史 工藤幸平 中野恵一
2017年12月21日(木)〜2018年1月28日(日)
http://akibatamabi21.com/exhibition/
Related Posts
- 「流れのパターン / Patterns of Flow」展について −川野洋の探究心を再び−
-
2023 NFT Scene Highlights (Part2)
Events and Works Surrounding NFTs: Timeline (365) -
2023 NFT Scene Highlights (Part 1)
NFTをめぐる出来事と作品、2023年のハイライト - 草野絵美が、Bright Momentsと共にAIアートコレクション「Techno-Animism」で世界ツアーを展開
- NYを拠点に活動する日本人アーティストKaryn Nakamuraが個展「noise pile」を開催。