Interview with David Quiles Guilló

世界最大級のデジタルアートのビエンナーレ「THE WRONG」に見る、オンラインキュレーションの可能性

Text: Yusuke Shono, Translation: Noriko Taguchi, Goh Hirose
Logo Image: Yoshi Sodeoka

「The Wrong」はDavid Quiles Guillóが設立した、世界最大級のデジタルアートのビエンナーレ。その規模は本当に巨大で、全体像を把握するのが困難なほど。さまざまな国から集った100以上のキュレーターたちが、1500以上のアーティストを組織し、パビリオンと呼ばれる自分自身のバーチャル空間、あるいは大使館と称される実際の空間で、それぞれの鑑賞体験を作り出す。

こうしたビエンナーレの規模の拡張は、オンライン文化の拡大しつつある勢力を反映したものである一方、The Wrongの運営方針である徹底した地方分権にもその理由がある。参加キュレーターたちには、純粋に自分たちのコンセプトを表現する自由が与えられている。美術館におけるキュレーションとは真逆にも見えるこうした方針は、まさにこのビエンナーレの名称「The Wrong」にもダイレクトに表現されている。どんな間違いにも価値があるのだ。自由だけどカオス。そんなThe Wrongの設立者のDavid Quiles Guillóにオンラインキュレーションについて話を聞いた。

過去にマガジンやNOVA festivalを手掛けていますね。そこから2013年にthe wrongがはじめったのは何かきかっけがあったのでしょうか?
The Wrongは、2001年以来から始まった僕の仕事の自然なゆっくりとした進化だった。どのプロジェクトもずっと続くものではなく、働き始めてから僕が目指してきた目標への次のステップのようなものなんだ。

このような大きなビエンナーレは例を見ないと思いますが、ここまで巨大となった理由はなんだと思いますか?
ドアをできるだけ大きく開いて、どれくらいたくさんのキュレーターやアーティスト、特集が展示されるべきかを制限しない計画だった…。美術館や博物館には物理的な限界があるけれど、インターネットには一定の物理的な制限はない。できるだけたくさんのキューレションされたアートを迎えることがこのビエンナーレの利点かな。

非常に大人数が参加していますが、どのようにコントロールしているのでしょう?
フェイスブックのグループとメッセンジャーを介してメンバーとキュレーターにコンタクトはしている。キュレーターは、自分たちが展示するアーティストと接触している。コミュニケーションするときには、一種のピラミッド型の構造だけど平等なやり方で、メッセンジャーで誰とでもやりとりできるようになっているよ。

回ごとのテーマやコンセプトはありますか?
The Wrongには「サブタイトル」とコミュニケーション戦略が含まれた、概要があるけれど、それはみなが取り組まなければならないテーマというわけではない。テーマはいつも自由だね。パビリオンや大使館のテーマを決めるのはキュレーターなんだ。

オンラインで展示を行うことの利点はなんだと思いますか?またそこにどのような可能性を感じていますか?
オンラインのものはワンクリックで手に入る。可能性は無限であり、視野は無限に広がり、技術が進歩するにつれて、アートはその先へと飛翔する。

フィジカルなイベントを「大使館」と呼んでいますよね。様々な国から作品が集まっていると思いますが、そこに地域性を感じることはありますか?
オフラインでのビエンナーレは期間限定のイベントで、世界中の都市にある、ギャラリー、機関、アーティストが運営するのスペースなどの「大使館」で行われる。ライブパフォーマンス、ワークショップ、アーティストトーク、展覧会などのフィジカルなプロジェクトを見ることができる。

アートの由来を問うことはないけれど、アーティストの言葉や名前から、その起源や地域性を見逃すことはできないね。確実に言えるのは、デジタル領域ではすべての情報が光速で移動するということ。ツールは数多くあるけれど、まだとてもわかりやすくて、ほとんどのデジタルアーティストがそれらを使っている。デジタルアーティストは今、オンラインやどこでも、世界中で起こっているすべてのことからインスピレーションを受ける。それは多くの場合、とてもゆたかな広がりと、多文化的な視野を生み出すだけじゃなく、一定の同質性も作り出すんだ。

あなたがこのデジタル文化において、信じる価値はどのようなものですか?
コラボレーション。

多くの作品を見てきたあなたからみて、3回の開催の間に作品はどのように変化してきたでしょうか?
そうだね。アートを作り出したり、開発したり、組織したり、そして、あるいはディストリビューションするための重要な要素として、いろいろなソーシャルメディアのチャンネルがますます使われるようになった。ソーシャルメディアは、いまやデジタルアーティストのパレットのもう一つの色彩となった。

多すぎて語るのが難しいかもしれませんが、今回の見所を教えて下さい!
まだ見なければならない作品があまりにも多いから……まだ選ぶことはできないかな。だからこの質問には、来年の1月31日(展示の終了日)になってはじめて答えられる。フックになるような最初のリンクを探しているなら、オンライン時間に余裕があるなら、メインページに飛んでみて、退屈したならサイトを離れることを勧めるよ。

プレスリリースには2021年まで予定の記載がありますね。The Wrongのこれからのビジョンについて、教えてください。
ビジョンを持たないようにとても努力してるよ。The Wrongの可能性を制約したくはないからね。参加者が望むなら、どんなものでもよいんだ。

Homeostase – Sao Paulo

The Wrong Club – Cologne

Artwork by Mit Borras of apel at The Wrong.

Artwork by superficial studio of Hybrid Body at The Wrong.

Artwork by Anne Horel of postinternet.art at The Wrong.

The Wrong
http://thewrong.org/
3回目となるThe Wrongは、2017年の11月1日から、2018年の1月31日まで開催。