INTERVIEW WITH YOSHIROTTEN
複合型メディアアートプロジェクト「SUN」について

Text: Yusuke Shono, Translation: Benoit Palop

デジタルとフィジカル、人口と自然、デザインとアート、さまざまな領域の間にある境界を行き来しながら、膨大な量の新鮮なイメージを作り続けてきたYOSHIROTTEN(ヨシロットン)。その彼がはじめてのNFTプロジェクトを発表した。タイトルは「SUN」。そのイメージはすでにSNSやサイネージ、フィジカルなインスタレーションのような形をとって、さまざまな場所に偏在している。まるでデジタルの世界が、フィジカルの側に攻め入ろうとしているかのようである。「SUN」は、そんな私たちの傍にあるあらゆる存在の源「太陽」をモチーフに、さまざまなメディアを上に展開していくプロジェクトである。NFTの公開日でもある国立競技場のインスタレーションのレセプション日(3月31日)を前に、そのプロジェクトの背景について聞いた。

まずは「SUN」プロジェクトの背景について聞かせていただけますか。

2020年、コロナ禍で行動が制限されて自宅待機になり、これまで作ったものやこれから作ろうとしていた企画が、一旦なくなってしまったんです。作っていたものが世に出ないことで、「もしかしたらこのまま色々なくなってしまうじゃないか」という不安を感じて。そのときに、自分はずっと何かを作って人と出会ってきたし、それで生きてきたから、作り続けていくことが使命なんじゃないかって。それで思いついたのが、毎日一点何かを作るということだった。コロナ禍ってある意味、一日一日を考えるきっかけにもなったなと思っていて。それで毎日一つづつ何かを作っていくというのを課題にしたんです。太陽は毎日上がってくるものですしね。最初はリリースすることも考えずに、ただ作ること自体を目的にしていました。それが「SUN」が生まれたきっかけです。

「SUN」はさまざまなメディアで展開するプロジェクトですが、その形は作っていきながら見えてきたという感じでしょうか?

そうです。最初に世に出た「SUN」は、Rainbow Disco Clubという静岡の野外イベントでインスタレーションでした。「SUN」を立体的なオブジェクトにして展示しました。それからだんだんと立体や映像、CG、インスタレーション、音楽など複合型メディアアートのような形に自然としたくなったっていったんです。フィジタルとも呼ばれていますが、NFTなどのデジタル上の存在が、実物としても存在してて、自然環境の中で体感できたり、その間を行き来することが自分のスタイルだと思っています。

太陽も実際にある存在ですよね。太陽をモチーフにしたのはなぜなんでしょうか?

2018年に「新しい光を通して物を見ると普段見えなかったものが見えてくる」という説をもとしたFUTURE NATUREという大きな個展を開催したんです。例えば、僕らが生きてる次元では見えていないものもスイッチを変えたら見えてくるんじゃないか。そんなことを考えてインスターレションを行いました。この「SUN」は、地球のマントルの下にシルバーの海が広がっていると言われてて、その中心にあるものという設定なんです。地球の真ん中にあるコアがシルバーの太陽になっていて、そこに写り込んでる毎日の景色が、この色彩というイメージです。

ちなみに今回NFTとしてもリリースするそうですが、NFT自体にも興味があったのでしょうか?

デジタルの作品を作るアーティストとして、印刷や物にしないとアートの価値が無いように思われてる状況にしっくりこない気持ちがずっとありました。本当はディスプレイで表示されているのが作品の生の状態だと思うんです。Rafaël Rozendaalのようにインターネットで作品を発表してドメインやUSBを販売しているアーティストはいたと思いますが、ほとんどのデジタルアーティストには今までそこに作品としての価値を与えるのはなかなか難しかった。NFT以降、そこに価値が生まれる状況がやっと来たなと思って、最初から参加したいと思ってたんです。foundationが出てきたときも、好きなアーティストが多かったので、テンションが上がりました。まるでBANDCAPMで曲を発表するアーティストのように国境や経済の壁を超えてデジタルアートがフラットに世に出る世界にワクワクしました。でもその後、投機を目的とした作品が目立つようになって、ちょっと違うのかなって思ったりもして。そんななか、「SUN」ならNFTにふさわしいと思うようになりました。コンピューターを使いながらも自動生成ではなく1つづつ手作業で描いているのも自分らしい作品作りで、アートに詳しくなくても、誕生日や会社の設立日、そういう特別な1日に、誰かにとって大切になるものを渡すことができるんじゃないかと思ったんです。そういうコンセプトはNFTと相性がよいですし、そこに何かを紐付けることで、さらに新しい作品へ繋げることもできると思っています。

NFTに取り組んでみて、NFTならではの可能性や面白い部分は感じられましたか?

例えば「SUN」のNFTは、1年かけて色が変わっていって、一周して最初の色に戻るようになっています。NFTを持ってる人だけが体験できることだったり、そういうダイナミックに変化する部分がNFTの面白さですね。立体だったらこのマテリアルを使うだとか、映像だったらこんな動きを付けるというふうに、メディアにふさわしいように作品も変えていきたいと思ってます。

個人的な体験や時間との関わり合いが生まれてくるのもNFTのメディア性だと思います。ところで「SUN」の展開の一つとして宿泊施設を作る構想があるそうですが、どんなものになるのでしょうか?

「SUN HOUSE」ですね。今考えているのは、夜中0時からスタートするプログラムです。夜中0時にチェックインして、そこから本当の太陽が上がるまでの間が「SUN」の作り出す作品体験だと考えています。その空間の中で、映像や平面、匂いなどの全ての感覚を使った作品を作りたい。そこから朝になって本当の太陽が出てきたときに、作品と本当の自然光が融合する。そのときに、「やっぱり地球ってすごい」って思ってもらいたいですね。

素晴らしいプログラムですね、体験してみたいです。

また国立競技場で行うインスタレーションのレセプション(3月31日)では、マヤ文明の祭事で使用されてた楽器をメキシコの研究所とAIを使って再現しているメキシコ人のDebitという女性アーティストがライブをしてくれます。まさに太陽の祭りですね。

なるほど。太陽というテーマには、歴史や色なものがつながってきそうですね、それこそ太陽はさまざまな宗教の中でも重要な存在だと思いますし。NFTはそのレセプションに合わせた3月31日に公開でしょうか?

そうです。国立競技場のインスタレーションに合わせて、31日にしました。そして、今回のパートナー企業が新たな技術を開発しました。NFCが内蔵されたフィジカルのカードに、「NFTを保管する為のデジタルウォレットを発行する」という技術です。そのプロダクト名は「NFTag」といって、インターネットに接続されていない環境でNFTを保管できる「コールドウォレット」として発行可能になるんです。

すごいですね。いずれウォレットなどの技術は不可視になっていくと思うので、そういう意味でもその足がかりになったらいいですね。

ウォレットの導入や暗号資産の購入などは、普通に考えてそんなできる人が多くないですよね。そんな敷居はない方が良いと思ってたので、新しいとことになるんじゃないかなって。NFTをやってない人でも、なにかを始めるきっかけになったらよいなと思っています。

SUN OFFICIAL SITE
http://sunproject.ydst.io

YOSHIROTTEN (ヨシロットン)
www.yoshirotten.com