ミニマルな色面構成や独特のタイポグラフィを用いた抽象的な作品で知られるuraunyによる初の個展が代官山のギャラリー懐美館で開催された。インターネット以降のヴィジュアル文化に独自に応答する日本では数少ないアーティストのひとりである彼が、今回選んだテーマは「コンプレックスとポジティブに向き合う」。
展示フライヤーでも使用されているような、肉体の歪さをポジティブに捉えたイメージと、同じく性を連想させるオブジェクトで構成されたインスタレーション展示となる。会場には、においやサウンドなどの目に見えない要素も展示の一部として用いられ、実際の空間でしか味わうことのできない体験を作り出した。内容が過激なためか、展示物が一部撤去されるなどのハプニングがあるも、無事乗り越えて展示は終了。クロージングでは、§+§による「液体」の販売も行われた。
facebookの日常の延長のような、風通しのよいインターネットの陰に隠れてつい忘れてしまいそうになるが、そもそもオンラインとは、人々の暗い情念や趣味が所々に島宇宙のように凝り固まった空間だった。かつての掲示板(例えばアメリカのgurochan)のような場所が、そうした一端を担っていたことを忘れてはいけない。今回の展示には、そうしたリアルな日常では出会うことのない裂け目に偶然迷い込んでしまったような、思考停止に似た感覚がある。無思考に欲望を追求した結果としての、意図せず到達してしまった場所。建前として保たれているような美学の枠組みが消え失せた時、その最後に残るのは、消費され尽くして抜け殻のようになってしまったイメージの残骸ではないだろうか。
その抜け殻こそこの資本主義の文化が生み出し、奇形化したイメージの成れの果てである。インターネットはそうしたものすら賞嘆する場所なのだ。
以下は展示に寄せられた宣言文の抜粋である。
「web or life
わたしは世の中の事柄を全て許している。
批判を受ける人間もまた人間であり、正義の相手は理解出来ずとももう一つの正義だからだ。
しかしそれは客観的に見た場合の話であり、あくまで存在を許すという話だ。
わたしにも主観があり、私の中の正義がある。
今回の展示はそんなわたしの中の正義である。
どうか存在を許して欲しい。
批判を受けようとも、わたしも人間だからだ。」
urauny
http://urauny.tumblr.com