今回もレーベルについて。2014年から活動を開始した、イギリスのネットレーベル〈Flamebait〉を設立者Assault Suitsのインタビューとともに紹介したいと思います。
〈Flamebait〉のリリースのラインナップを見てみてください。Gorgeシーンの立役者の一人でもあるhanaliやらConstellation Botsu、DJWWWWと、異常なほど日本勢の割合が際立っているのです。その特異性は、Assault Suitsの日本への情熱といえるかもしれません。
リリース数は多くはないですが、クオリティの高いリリースからは、今のサウンドコラージュ、エクスペリメンタルのカオティックな熱気を伝えたいという強い意図が感じられます。その偏りを見ていると、いよいよAssault Suitsが見ている世界観がどんなものなのか興味が湧いてきました。彼のインタビューに入る前に、〈Flamebait〉のリリース物をすこしだけご紹介します。
こちらは〈Flamebait〉の設立者Assault Suits自身の作品。2014年と少し以前の作品になりますが、最初のリリースです。自由奔放に弾む音塊がぶつかり合って、美しい崩壊の軌跡を描くような、伸びやかで解放的なシンセサウンド。
日本のノイズアーティストConstellation Botsuの作品。容赦なくズタズタにされたサンプルとノイズ音が、巨大なパズルのように組み合わさり破壊的な美しさを作り出しています。
Constellation Botsu “ちゅざけんなッズベ公!!”
最後に〈Flamebait〉の最新リリースです。こちらはAirportの作品。AirportはMiranda Pharisのプロジェクトですが、さまざまな感情のスペクトルが光の中で溶け合って無感情になってしまったような、とてもエネルギッシュな表現になっています。これはすごい。
Airport “Lilies”
ほかにもいろいろと聴くべき作品がとても多いです。ぜひいろいろ探してみてくださいね。それではようやくですが以下に、Assault Suitsのインタビューをお届けします。
まずはあなたのレーベルではたくさんの日本人がフィーチャーされていますね。もともと日本の文化に興味があったのでしょうか?
その質問に答えるとすると、ほんとうに長い答えになってしまうんだけど、それは子供の頃のどこかで始まったんだ。アニメをみたり、日本のビデオゲームで遊んでいて、それから特に多くのインディペンデントのネットレーベルを含む、現代のエレクトロニクミュージックにたどり着いた。
日本のアーティストや作品のどんなところに惹かれたのでしょうか? また、それが〈Flamebait〉の音楽性にどのようにつながったのでしょう?
自分はいつも日本のアートやポップカルチャーへの理解に自然と繋がっていた。いつも興味をそそられ、刺激されていると思う。子供の頃から、特定のビデオゲームやアニメやマンガ、特にスーパーファミコンやファミコンゲームとアキラはとても大きな感銘を受けていたんだ。イギリスに住んでいるので、それについては「部外者」のような部分もあるけれど、自分がこれからプレイする、あるいは今日もまだプレイしているたくさんのゲームや、自分が見るだろう、そして今も見ているアニメ、その全部がありきたりに陥る事なく、クリエイティブな「カタ」をうまく回避して作品を面白くしてる。過去の日本のポップ文化とのつながりを維持しながら、ヨーロッパや北アメリカの影響を吸収しているように思う。
これが少し個人的な、でもこの質問に関して重要だと思うこと。そしてエレクトロミュージックの領域でなぜ自分が日本のアーティストに興味を持っているのかという理由。日本から生まれてくる現代のエレクトロミュージックで、何年も前に興味をそそられたいろんなものが、今また活発になってきている。つまりそれは、自由奔放ということ。〈Flamebait〉を始めたとき、自分はいつも自由奔放で自己中心的で、不道徳なものをはぐくみたいという願望を伝えている。それが目標。
日本のアーティストにリリースのオファーをした経緯は?
いま言った資質の多くを、オンラインで見つけた日本のアーティストはすでにはっきりと備えていた。それで最初にHanaliとDJWWWWにコンタクトする意味があると思って、レーベルでリリースしたいか彼らに確認したんだ。日本のオルタナティブミュージックのシーンは、盛り上がっていて、常に成熟している。ときどき、他の場所よりももっと早いペースに思える。あとからじゃなく、そこに早く接続できたのはラッキーだったかもしれないね。
レーベル外の活動があれば教えてもらえますか?
今年、Constellation BotsuとAirportをリリースしてから、さらに多くのパイプラインができて、それだけじゃなく、アーティストや音楽批評家、DJを招いてのミックスのシリーズも始めようとしている。現代と等価値な歴史的作品を集めたり、あたらしく冒険的なやり方で、ミックスの芸術にアプローチする作品を提示するためにね。ミックスは、オンライン上に圧縮ファイルとしてアップするから、直リンクからダウンロードできるようになるよ。Assault Suitsの10の章からなるミックスとMarcel FoleyによるHYPNAGOGIC MIXがもう聴ける。音楽ライターのAdam Harperや、Dane LawとDJWWWWが同じく、参加する予定。
次のリリースも日本のアーティストだそうですが、どんなものになる予定なのでしょう?
次のリリースは、CVNのフルレングスのものになる。タイトルは「Unknown Nerves」。期間限定のカセットを日本のCVNのライブだけで売る予定。そのすぐ後、DJ ND Fleshによるミックステープが、アーティスト自身が作ったショートビデオのシリーズと一緒にリリースされる。あと、Adda KalehのデビューEP「ID」以来、彼女の初めてとなる次のオーディオプロジェクトをリリースする計画もある。Adda Kalehは賞賛を浴びたルーマニアのパフォーマンスアーティスト、Alexandra Piriciのサイドプロジェクト。まだ発表できないプロジェクトもたくさんあるよ。
Flamebait http://flamebait-label.com/