Mindy Seuによる「Cyberfeminism Index」と、ブロックチェーンにおけるサイバーフェミニズムの可能性

Text=Yusuke Shono

Mindy Seuによるサイバーフェミニズムのアーカイブ、「Cyberfeminism Index」の刊行を記念したオンライン展示「WETWARE」が、デジタルアートワークのキュレーション展示とNFT販売を行うオンラインギャラリーFeral Fileにて開催されている。

ダナ・ハラウェイ「サイボーグ宣言」以来、コンピュータを始めとしたテクノロジーは性差の問題を解消する新しいフロンティアとして夢見られてきた。そのユートピア的な想像力から生み出されたアイデンティティ解放の物語は、オンライン文化の発展と爆発の裏側で密やかに紡がれ続けている。研究者でアーティストのMindy Seuは、そのような1990年代初頭から現代に至るサイバーフェミニズムの歴史を、多様な人々とのコラボレーションによりオンライン上にINDEXとしてアーカイブするプロジェクトを開始した。「Cyberfeminism Index」は進行中のオンライン上のプロジェクトであるが、今回はその成果がはじめて書籍として刊行される。

Feral Fileで開催されている「WETWARE」は、その「Cyberfeminism Index」の刊行を記念したオンライン展示である。「WETWARE」とはテクノロジーが具現化されたヌルヌルした部分と、ネットワークの有機的で根源的な性質に着目して名付けられたタイトル。1990年代初頭のサイバーフェミニストの代表作から、1980年代初頭のポルノやテクノスピリチュアルな作品、そして現代の作品まで、合計9人の作品を展示する。

少し話が逸れてしまうかもしれないが、クリプトの領域でも、そんなサイバーフェミニズムの新たな可能性が開かれようとしている。その起点となるのは、暗号によって保護され、高い透明性を保つ新しいデジタルアイデンティティ、分散型識別子(DID)である。

アーティストで批評家でもあるClaudia Hartは、NFT作品を制作するメディアアーティストCASEY REASの展示に際して、「ブロックチェーンのフェミニストマニフェスト」を執筆した。

彼女はトークンを表象の歴史における存在論的転換として位置付ける。そして、トークンの鋳造により新しい真正性の概念が可能になるのだという。しかしフィジカルとデジタルが相互に浸透し合う状況が日常化しつつある今、そのような事態は既に現れてきていると見るべきだろう。ダナ・ハラウェイがサイボーグという存在を通して見つけたその転換の可能性を、金銭的価値ばかり取り立たされるNFTが果たして実現できるのか。その問いの答えを、これから確かめてみたいと思う。