先日、OaklandのGhost Shipという倉庫で行われていたウェアハウスパーティで36人もの犠牲者を出した痛ましい火災がありました。当日は金曜日で、LAのレーベル〈100% SILK〉が関係するパーティが行われていたそうです。DIYで実験的な地下シーンを支えてきた老舗レーベルのパーティだったということで、その衝撃が波紋を呼んでいます。
thumpの記事によれば、11ヶ月間もこの場所に住んでいたというライターでアーティストのCarmen Britoは、Ghost Shipのことを「最も美しい場所」と述べています。ウェブサイトに写真があがっているのが確認できますが、さまざまな楽器や家具、アンティークな小物に埋もれた温かみのある愛に溢れた場所だということが伝わってきます。それを思うと、写真を見ているだけでとても胸が痛みます。
不幸なことに、この会場は違法建築として調査されていた最中だったといいます。さらにスプリンクラーや火災報知器が働いた形跡がなかったことから、管理者に非難が集まる結果とになってしまいました。けれどもアーティストが高い家賃を避け、こうした古いスペースを見つけ出して拠点にする例は多く、そんな場所があるからこそ商業的ではない多様な表現が生み出されてきたということもまた事実なのです。亡くなってしまった命は取り戻すことはできませんが、事件によってこれまで築き上げて来られた文化が否定されるようなことがあってはいけないと思います。
以下のリンクは、映画評論家の町山智浩がこの火災に関して、カリフォルニアの「ジェントリフィケーション」という概念を紹介しつつ、その背景を語った内容を書き起こしをしてくれているブログです。どうしてアーティストたちがこのようなライフスタイルを作り出したのかよくわかる内容になっています。
http://miyearnzzlabo.com/archives/41020
この火災に関して、負傷者や犠牲者の方々への支援が始まっています。Youcaringというサービスを用いて、支援を行うことができます。
https://www.youcaring.com/firevictimsofoaklandfiredec232016-706684
また、アンダーグラウンドミュージックを担うたくさんのレーベルが同時に支援の声を上げ始めました。少し探しただけでもほんとうに多くのレーベルが何らかのアクションをとっており、ここに挙げきれないほどです。
悲劇的なこの火災がより痛ましいのは、非常に過酷な出来事が、純粋な善意と人々の相互扶助により作り出されてきた文化のなかで生じてしまったという点にあると思います。この事件は文化の脆さも露呈させもしましたが、同時に守らなくてはならない価値を浮かび上がらせもしました。犠牲になられた方々には冥福をお祈りするしかありませんが、日本からもドネーションを行うこともできます。ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
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