これまでも色々なリリースを紹介してきましたが、レーベルからプレスリリースをもらうことも増えてきました。もっともレーベルオーナーですらアーティストの情報を持っていないこともあったりして、そういうのもネット以降の繋がり方という感じがします。少ない情報からも、いろいろな物語を想像するのはとてもたのしい作業です。
とりわけ〈Hausu Mountain〉のリリースはとても丁寧な仕事がされていて、毎回、その作品への愛を感じることができるものになっています。前回は彼らにインタビューをさせてもらいましたが、今回はそんな彼らから届いた作品をふたたび紹介したいと思います。
今回届いたのはBen BillingtonによるQuicksails名義の「Mortal」という作品。Ben Billingtonはシカゴで実験的なDIY、電子音楽、フリージャズのシーンで、Tiger Hatchery、ONO、ADTなどといったバンドのメンバーとして10年以上の活動歴があり、またソロとなるQuicksails名義では〈Spectrum Spools〉や〈NNA〉などといったレーベルから作品をリリースしてきました。
〈Hausu Mountain〉がとても変わった作品ばかりリリースするのはリスナーに聴いたことのない音楽を届けたいという情熱の表れだと思いますが、この作品からもそのヴィジョンが明確に伝わってきます。さまざまな要素のハイブリッドで形作られたその演奏スタイルは、実験を通過して長い視聴に耐えうる普遍的な形に結実した作品と感じました。
弾むようなパーカッションのリズムとエレクトロニックなテクスチャーから構成されるその表現は、エレクトロミュージックのなかにフリージャズのボキャブラリーが織り込まれているところが新鮮で、音のマテリアルをぐつぐつと煮込んで一体化させたかのような、既視感と未視感がまろやかに融合された美しさを持っています。
そんなQuicksailsの作品「Mortal」は、17年の1月13日にはフル・レンングスのLPがリリースされる予定だそう。これはフィジカルでじっくりと聴きたいタイプの作品かと思います。是非。
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