Vektroidの最初期の名義Vektordrumの作品が3つ合わせてリリース。若さが才気走る、疾走するビート。

最近急に活発にリリースを始めたVektroidですが、自分自身の過去の作品をまとめようという時期に来ているのかもしれません。次々と変名を作り出すことでも有名ですが、今回の名義はVektordrum。そのリリースはVektroidより以前の2008年からのことで、この名義は彼女のもっとも若い時代のエイリアスであったようです。これらの作品は当時の再リリースということになります。

音源を聴いてみると、現在よりもリズムパートに比重が置かれており、よりメランコリックな傾向があることが分かります。それは時代のニュアンスも大きいと思いますが、くぐもったエフェクトや、さまざまな素材が折り重ねられ溶け合った果ての抽象画を眺めるようなその作曲スタイルはこのときからすでに完成しています。16歳から18歳まで使用していた名義らしいので、かなりの早熟な才能であったことは確かです。

Vektordrum, “Capitose Windowpane”

次第に明確になっていくリズムパターンの上で、歪んだシンセ音が歌うようにさまざまな表情を作り出す。暗くメランコリックな世界観が横たわっているが、作り出された構築物に重さはなく、ゆっくりとそのグルーヴを飛翔させていく。

Vektordrum, “Hello1&2”

雲の合間に光が差すように、美しい音色が柔らかな輪郭の上に現れては消えていく。シンプルで重さのあるビートの背後には、ロマンティックなニュアンスが見え隠れしている。一定の疾走感を保ちながら、作り込まれた楽曲構造により場面が次々と展開していく。そのさまは、まるでシューティングゲームの背後で鳴らされているBGMのよう。

Vektordrum, “Geese”

液体のように変化するリズムパターンに、低いテンションで何かを語りかけるボーカルのサンプルが重ねられたビート、アンビエントノイズ作品。丸みを帯びたノイズのテクスチャーが、低空飛行を続ける音階とゆっくりと溶け合っていく。16歳にして高すぎる完成度。