NFTについてのコラム4回目は、今話題になっているNFT「Nouns」について取り上げます。
「Nouns」とはオンチェーンで鋳造される32×32ピクセルのドット絵のキャラクターをモチーフにしたNFTのシリーズ作品。最大の特徴は、毎日1つの「Noun」が生成され、自動的にオークションに掛けられるというそのシステム。データはイーサリウムにアートワークのデータが保存されるフルオンチェーンの形式で作られており、イーサリアムのブロックハッシュに基づいてデザインがランダムに生成される。NFTの愛好家のあいだでも大きな関心を集めており、かなりの高額で取引されるようになってきている。
話題となっている一つの理由は、Noundersと呼ばれる「Nouns」を作り出した10人のメンバーの顔ぶれだろう。一番目に付くのは「Loot」の生みの親である@dhof、そしてドット絵の作風でイマジネーション豊かな世界を作り出してきた@eboyarts。こう言ってはなんだが、無数のプロジェクトがある中で、NFTも「誰が携わっているか」という点がやはり重要なようである。
@cryptoseneca
@supergremplin
@punk4156
@eboyarts
@punk4464
solimander
@dhof
@devcarrot
@TimpersHD
@lastpunk9999
「Nouns」は、オンチェーンのアバターコミュニティの形成を改善するための実験的な試みです。Cryptopunksのようなプロジェクトがデジタル・コミュニティとアイデンティティを立ち上げようとしているのに対し、Nounsはアイデンティティ、コミュニティ、ガバナンス、そしてコミュニティが使用できる資金を立ち上げようとしています。
サイトの説明によれば、「Nouns」はCryptopunksの実践に独自のガバナンス、そして潤沢な財源を加えようというのである。
Cryptopunksを知らない方に向けて補足しておくと、Cryptopunksは10000体制作されたコレクタブルなキャラクターであり、現在のクリプトアートの運動に大きな影響を与えたプロジェクトである。イーサリアムのスマートコントラクトの技術を使って作られた最初期のNFTのひとつであり、当初は一つの実験として、ワークショップの参加者などに無料で配られていたものだが、そのコレクションは近年のNFTの興隆により超高額で取引されている。ドット絵のNFTが氾濫している理由でもある。
クリプトアートのもっとも有名なイメージとなったCryptopunksは、アイコンに適した画像サイズもあってか、その所有者たちがSNSのアイコンなどに用いて、クリプトコミュニティの一員であることを示すために使われるようになった。コミュニティのメンバーというか、一角の人物であることの証明として、そのアイコンの人物が一目置かれるようになることは間違いない。そのようなNFTの在り方は自然発生的に生まれたものであるが、「Nouns」はそのようなNFTをめぐるコミュニティの動きを、DAOという組織形態に具体化し、その収益とガバナンスを武器に、自立した運動として回転させていくことを目指しているようである。
少しだけDAOについても補足すると、DAOはDecentralized Autonomous Organization(自律分散型組織)の略称で、ブロックチェーンの運動を語る上で絶対に欠かせない概念である。Web2.0における企業体にかわる組織形態として、Web3.0の領域の先端を走る多くのサービスが、その統治形態を取りつつある。DAOであるかどうかが一つの指標として成り立つようになってきているほどである。
繰り返すと「Nouns」の肝は、一つのNFT作品の価値を高めるためにDAOという統治方法を選択したことにある。「Nouns」の購入者は、NounsDAOに加入する権利を与えられ、その作品の価値を高めるための、さまざまな提案や決定に関してのガバナンスに参加することができる。NFTを所有することに、ガバナンスへの参加という要素を付加したのである。それゆえ、「Nouns」を所有することは、ただその作品を所有することとは異なる意味合いを持つ。
NounsDAOの運営は以下のように行われる。
24時間ごとに1つの「Noun」がオークションに掛けられるというのは先ほどのべた通りである。一点、50ETH~200ETHで取引されている毎日自動的に発行される「Nouns」が、永遠に財政を潤し続ける。金額はばらつきがあるが、50ETHで購入されたとしたら、今のレートで1日250万くらいになる計算だ。まるで錬金術である……。そのオークションの収益の100%が、Nouns DAOのものとなる。一つの「Noun」に関して、一票の投票権が与えられる。Nouns DAOの財政は、そのガバナンスに基づいて意思決定がされていく。創設者であるNoundersは、最初の5年間は供給量の10%の「Nouns」を報酬として受け取る。Noundersは、「Nouns」の供給が少ない間は悪質な提案が可決されないように、特別な拒否権を発動することができる。この拒否権は、最後の手段として明らかに有害なガバナンス提案が可決された場合にのみ使用される。
Noundersによれば、ここまではまだサイクルの半分に過ぎないのだという。もう半分のサイクルを完成させるには、DAOを介してNounsが作り出した資源を文化へと還流させなくてはならない。オープンソース運動の一つであるイーサリアムのプロトコルの影響のもと、「Nouns」も自律的に創造のエコシステムが拡張していくことを強く希望している。まず一つは、「Nouns」を世界に広めるためのプロジェクトに資金を提供する。そのアイデアとは例えば、以下のようなものになるだろう。
- 「Nouns」のモバイルおよびウェブアプリ
- 「Nouns」のゲーム
- 「Nouns」にインスパイアされたアート作品
- 「Nouns」を宇宙に送る
ちなみに、「Nouns」のアートワークはCC0(パブリックドメイン)であるため、アーティストや開発者が自由に「Nouns」を使用することがでできる。
Nounsはあなたのものであると同時に、私たちのものでもあるのです。