データなどを故意に破壊することによって出現する現象「グリッチ」に強い影響を受け、主にスカルプチュア作品をメインに活動するアーティストPhil Thompson。その手法はグリッチ的な効果を用いたもの、コンセプチュアルなものなど様々だが、その作品は表層と実質の間にある差異を暴き出す。ものごとの関係にメスを入れ、そのズレが明確になるポイントを作品として定着する、そんな試みを行なっている作家である。

※本記事は、ネットで活動するアーティストの作品を3Dプリンターで実体化させるプロジェクト、DMM.makeに掲載の「3 Dimentional Surface #2: Phil Thompson」の連動企画として、お届けします。DMMのテキストはこちら

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Stones (Marble, Sandstone, Granite)

作品にデジタルの質感を取り込む理由は何でしょうか。それにはどのような狙いや意図があるのでしょうか。
僕の作品の多くはグリッチ(データ等を意図的に壊すことで出現する現象)を用いています。僕はグリッチというのは完璧な再現性の先を見せるもの、構造物の内部を表出させるものと思っています。デジタルによる完璧な再生という神話は今では綻び欠けているし、デジタルで作られた人工物を保つのはどれくらい難しいか、人々は気づき始めていると感じるのです。ただ、オンライン上のイメージはまだ不可知のままであるし、特に言語については(クラウドやワイヤレスなど)非物質的なものにシフトしている。
僕はグリッチや何らかのエラーがイメージとかデータの物質性をあばいてくれることが分かったし、それは物質的な構成要素であるケーブル、ハードドライブ、モニターなどを破壊する事でも引き起こり、様々なコードやファイル形式との間にある相違を明らかにしてくれるものだと分かりました。

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Bronze Sculpture

あなたの作品には質感や質感の価値に関するものがあると思います。その二つを意識して創作している理由を教えてください。また、質感の価値に関する作品とデジタルの質感を用いた作品との違いを説明していただけますか。
僕はいつもオブジェクトやイメージの表層にあるもの、それらが構成する意味に興味を持ち続けてきました。自分の作品は、表面上のクオリティーを壊すよう企てることで、物事の本質をより明らかに見せようとする試みだと考えています。たとえば、貨幣に関する僕の作品は、硬貨に使用されている材料の価格が、実際の硬貨が持つ貨幣的な価値を上回る特定の時点を示すことで、表面にあるズレを明らかにしようとする試みです。
それでいうと、3D CADを用いた自分の作品も、ファイル内の破損やグリッチによって、物事の背後にあるより根源的な何かを明らかにしようとしている点では似ていますね。
でも、グリッチが今ではそれ自体が固有の美的価値のあるものとして受け入れられているのは興味深い。もし、エフェクトが人工的に生成されるようになれば、それは再びテクスチャーになっていくのでしょうね。

僕はグリッチというのは完璧な再現性の先を見せるもの、構造物の内部を表出させるものと思っています。デジタルによる完璧な再生という神話は今では綻び欠けているし、デジタルで作られた人工物を保つのはどれくらい難しいか、人々は気づき始めていると感じるのです。

あなたの作品にはインターネットの影響があると思っていますか。もしそうなら、どのような点でしょうか。
インターネットの影響は間違いなくありますね。僕の人生の大部分はインターネットが周りにあることによって、もたらされていると思う。僕は作品づくりの出発点として、オンライン上の画像やGoogle3Dギャラリーの3Dモデルをよく使っています。僕の作品自体も進行中のシリーズ「Iterations」についてコントロールするのをやめ、オンライン上で誰もが続きを行えるように許可しています。そうすることで、ネット文化にあるコピーや編集に対応できるようにしているのです。

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Iterations

今、特に注目しているアーティストや物事はありますか。
最近は、デジタルの素材を扱い、オンライン/オフラインそれぞれの体験にあるはずの差異を表現している本当に面白い作品を作るアーティストがたくさんいます。LaTurbo Avedonのプロジェクト「Panther Modern」はとても良い例です。また、Manuel Fernandez、Clement Valla、Thomson & Craighead、Julia Crabtree & William Evans、Jan Robert Leegte、Matthew Plummer-Fernandez、それからBenedict Drewの作品にも強い興味を持っています。まあ、この瞬間にも素晴らしい作品を生み出しているアーティストは、この領域の周りにはたくさんいると思いますよ。

今後のプロジェクトや将来的な計画などあれば、教えてください。
中国で次々に建設されている「コピータウン」に関するフィルムをSebastian Ackerと共同で制作し、それが完成しようとしているところです。コピータウンというのは、すでに存在している西洋の街並のレプリカのような街のことです(www.ackerthompson.tumblr.com)。また、9月中にはリュブリャナにある二つのギャラリーで開催される「永遠の9月」という展示にも参加します。

 

Photos courtesy the artist and XPO Gallery

Phil Thompson プロフィール
1988年マンチェスター生まれ。ロンドンに移住し、ゴールドスミスカレッジ、美術のスレイドスクールで彫刻を専攻。彼の作品は、ディジタル技術が既存のメディアや慣習に与える影響に取り組んでいる。パリのXPO Galleryで作品を発表した。

http://www.pjdthompson.co.uk/