MASSAGEのインタビューでも取り上げた、The Death of RaveからリリースされたNozomu MatsumotoによるファーストLP。作品に派生する様々なコンセプトについてはこちらを読んでいただきたいが、個人的に初めは、内部がぽっくりと空洞化しているかのような、何か不気味な印象を作品に覚えていた自分が、何十回と再生を繰り返すうちに、いつの間にかそこに情緒に近いエモーションを抱いていたことが驚きだった。ヒューマンとノンヒューマンの境界線を、自らの適応が拭い去っていくかのような体験というか。絶対的なアイデンティティとして機能する自らの身体性が、外部世界に委託、流出することが実現化されつつある今、感覚は希薄になるのではなく、無限に複合化していく。他者と共有された対象をわが身のものとして受肉し、これまでと同じようにそこに感覚を覚え感情を宿らせようと、我々は確かに望んでいる。モノとマルチが往還しながら更新される現代と、その数歩先のハイパーリアルな近未来を、流転するテクスチャーと圧倒的なスケールで描いた、エポックメイキングな傑作。