By Yusuke Shono
約2年間の制作期間経て発表された、3年ぶりのアルバム。消えてしまいそうな微細な感覚を、境界のぎりぎりを縫いながら漂い歌う。日常の光景がかすかに淡く映し出されていくさまは、穏やかな川の流れを眺めているかのよう。リズミカルな電子音が歌声と遊ぶように踊る「ball of fire」、ストリングがシネマティックな光景をえがく和やかな「flesh alone」、静けさをさそうようなピアノの音色がゆったりと広がる「蔦:星」、断片的な音が重なり合い新しいポップスのように響く「車の軋りに」など、心地よい振れ幅を持った楽曲が揃う。ファンタスティックな叙情的な世界観に、かすかに現れる孤独の感触。来たるべき希望を予感させるように、その奥には柔らかい光が差し込んでいる。