ミネアポリス在住のサウンドアーティスト/映像作家であり、自身のレーベルSympathy Limitedを主宰するジャスティン・メイヤースによる新作がShelter Pressからリリース。死を覚悟するほどの大病を患った後、慢性的な身体的苦痛や治療との苦闘をモチーフに制作された前作「Negative Space (1981-2014)」が、ある時期における彼自身の心理的な投影だとすれば、「継続する日常と、限られた時間の中で、アートを作り続ける」事への「失意と疑問」を、特有の知性とシニシズムをたっぷりと効かせながら、肯定でも否定でもなく、赤裸々な独白として提示したのが、今作「Struggle Artist」だろう。唐突なカットアップや休止、不自然にフォーカスされた生活音、グラニュラーシンセシスを基調とした間延びした音色を単なる手法として「実験音楽」的だと形容してしまうのは容易だが、全体に覚えるその「もどかしさ」が、個人個人の同居する日常と現実の「割り切れなさ」と重なり合った途端、強烈なリアリズムとなって私たちに切迫する。インターネットの普及以前・以降に関わらず、「エクスペリメンタル・ミュージック」と称される類の音楽は、素晴らしい才能と熱量を持った個人達によって世界中で絶え間なく生み出され、私達はその恩恵を享受することができるが、そこに作り手の心理や思考を汲み取ることは必ずしも必要とされないし、ましてや日々大量にアップされる音源群を前にしては、不問であるかのようにも思える。だがこのアルバムのタイトルに与えられた「アーティストとしての闘い」の切実な意味を、私達は時折立ち止まって考える必要がある。