ASAKUSAとFederica Buzziのキュレーションによるグループ展「3DRIFTS」は Serafín Álvarez、Lawrence Lek、ゲーム開発スタジオThe Chinese Roomの3者がゲームの技術を用いて制作した作品を展示する、現在開催中(2017.7.10-8.7)のグループ展です。
3つのインタラクティブ映像からなる展示は、3Dの空間の中を彷徨いながら探検し、さまざまな形で生起するナラティブを体験していく形式が採用されています。本来遊びのために作られてきた技術を新たな芸術体験のために転用するこの試みで、制作者たちはゲームのなかにある風景や建築という現実と似た架空の世界とナラティブを結びつけます。鑑賞者はそれにより生起してくるさまざまな感覚に触れることになります。
展示場に置かれていた解説では、メディア理論家マッケンジー・ウォークの著書「ユートピア・リアリズム」のテキストに言及しながら、「すでに現実味を失った世界において、ゲーム空間があまりにも現実的に立ち現れるとき、その仮想領域が現実に影響を与えるゲーム空間は、架空の現実の認識にフィードバックの連鎖を作り出していえるといえるでしょう」と述べています。
ゲームのなかにある風景が、現実よりも強い印象を残すということはよくあることかもしれません。現実の出来事と、ゲームの中の出来事が等価になるとき、現実と仮想というふたつの世界は主従の関係を捨て、互いに記憶を通じて重なり合う奇妙な状態を作り出します。そのことで思い出すのがアーティストのJon Rafmanがインタビューでゲーム「Skyrim」について触れた次の発言です。
「将来、ヴァーチャルとリアルの差はなくなっていくだろう。実際、次世代はその二分法を理解するのはまったく困難となるかもしれない。(中略)例えば僕は、美しい夕日を見ると、よくSkyrimの夕日のことを思い出す。振り返るとそれはほんとうにすごい感覚—つまり既にデジタル環境で経験した何かに遭遇することからくる既視感なんだ。」(032c)
思い出すら架空の世界に紐付けられるこの時代に、ゲームという空間は現実とフィクションをよりうまく架橋する存在になりつつあるのかもしれません。現実から虚構へ、そして虚構から現実へというフィードバックループが生み出されているこの状態を活用し、その狭間のような空間でどのような表現が行われうるか、という問題提起はとても興味深いと思います。
特に、プレイステーション1のようなざらざらとした質感で形作られた荒涼とした海辺や洞窟を、ときおり挿入される断片的なナラティブを手がかりに探検する「Dear Esther」の思索的な世界は、2012年とすこし以前の作品ですがじっくりと鑑賞してほしい作品だと思いました。展示は8.7まで行われていますので是非訪れてみてはいかがでしょうか。
3Drifts
Serafín Álvarez, Lawrence Lek, The Chinese Room
12:00 – 19:00, 10 July – 7 August, 2017 *Open Sat. Sun. Mon.
Opening Reception: 17:00 – 20:00, Sunday 9 July, 2017
Curated by Asakusa and Federica Buzzi
Asakusa http://www.asakusa-o.com
Serafín Álvarez http://serafinalvarez.net
Lawrence Lek http://lawrencelek.com
The Chinese Room http://www.thechineseroom.co.uk
Courtesy Serafín Alvarez, Lawrence Lek, The Chinese Room, and Asakusa.
All installation views: Takashi Osaka Photography.
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