3 Dimentional Surface #1: Manuel Fernández

多様な活動を繰り広げるアーティストManuel Fernández。
彼が描くオンラインという僕らの時代の風景。

リアルとインターネットの境界が溶け出しつつある今、その境界の可能性を試すかのように、ネット上でさまざまな試みを行なうアーティストたちがいる。ネットを主な媒体として作品を制作するManuel Fernándezも、そんな作家の一人と言ってよいだろう。スペインのマドリッドを拠点に活動する彼の作品は、静止画、映像、ネットアート、キュレーション、ギャラリー運営まで多彩に広がる。その作風はグリッチやアニメーションGIFなど、インターネット上の流行を取り入れつつも、多様化するメディア環境の特性を露わにする批評性を備えている。

※本記事は、ネットで活動するアーティストの作品を3Dプリンターで実体化させるプロジェクト、DMM.makeに掲載の「3 Dimentional Surface #1: Manuel Fernández」の連動企画として、お届けします。DMMのテキストはこちら

BG Painting 001 UV Paint on canvas. 100x140x3 cm. 2013

あなたの経歴について簡単に教えて頂けますでしょうか?

独学でアーティストになるための勉強をして、1999年から新しいメディアとインターネットの分野で活動するようになった。

オンライン上の活動についてと、オフライン上の活動についてそれぞれ教えてください。

実際、オフラインとオンラインは区別していないね。自分にとってそれは同じ現実だよ。

作品の制作を始めたきっかけがありましたら教えてください。

インスピレーションの源はアート史、ポップカルチャーやインターネット。この分野に起きていることは、新しいアートを作り出せる可能性を持っていると思う。

Pigeon GIF, 500×400 px. 2013

Lamp GIF, 500×400 px. 2013

画像作品にGIFのフォーマットを使うのはなぜでしょうか? また、画像形式もクレジットしていますが、画像形式をマテリアルとして捉えているようにも思います。それに関しては、意識的にやっているのでしょうか?

ずいぶん前のことだけど、オンライン上の広告代理店で仕事をしていたとき、GIFを使い始めて、その時からフォーマットの可能性に惹かれるようになった。世代的にもとても近い感じがする。Tumblrみたいなソーシャルネットワークサイトの登場もあって、最近のGIFはマージナル環境からアート形式になってきたと思っているよ。

New Ruins. Google Earth Tour.

Google Earthを利用した作品や、ブラウザ上での彫刻作品に関してですが、これらはネット上で新しいスカルプチュアを作ろうという試みですね。ネット上におけるスカルプチュアの特性は何だと考えますか?

インターネットや3Dツールは、既存の彫刻の概念について再考させるものだと思っている。新たなツールやインターネット上での新たな実験は、まだ完全に定義されていないところにまで伝統的な概念を拡大させるだろう。

オンラインギャラリーCermaのための僕のキュレーション・プロジェクト「What we call sculpture」では、この問題に取り組んでる。この展示はインターネットにおけるデジタルツールを使用した彫刻の可能性や、オンライン媒体における展示の可能性に焦点を当てることで、インターネット上の彫刻の概念に関して議論することを提案したんだ。

ビデオゲームやインターネットの出現以来、実際の物質的な空間の概念は、コードや3Dソフトウェアで作られているバーチャル空間と共に存在している。スクリーンで見られるグラフィックは、ハードディスクのストレージのように物質的な空間を占めているだけではなく、シミュレートされた空間に対する企図、あるいは相互作用を通して、サイズ、素材やボリュームのような伝統的な彫刻の典型と同じような特徴をもったものとして知覚できる。

ニンテンドー64のマリオブラザーズからSocial Lifeのようなソーシャルネットワークや、Google Earthを通して現実の世界を感じるといった方法まで、3Dソフトウェアツールで作られているものは、我々の実物空間の理解や接し方などを大きく変えた。それは今の建築家が、設計に使ったAutoCadのバージョンを認識できるぐらい影響の強さがある。僕らが彫刻と名付けるものは、彫刻という手法、インスタレーションなどの作品だけど、そこには美学的な戦略をオンラインで発展させるためのデジタルな実験という意味がある。

インターネットやコンピュータ文化を作品に取り入れる理由は?その今後の可能性についてはどう考えていますか?

それは、ツールであり、僕らが生きている時代の自然な背景であると思う。それまでのツールやコンテキストには、僕らが今遊んでいるような、クリエイティヴな探求の可能性はなかった。もっと先を見て、実際にインターネット上で起こっていることに参加できれば、最もたくさんのチャンスがあると思っている。

Domain Galleryというオンラインギャラリーを運営されていますが、ご自身でそういった場所を運営しようと思った理由は何でしょうか? アーティストはどのように選定しているのでしょう?

新しい技術やインターネットを扱っている世代のアーティストに可能性を知ってほしくて、2年半ぐらい前にこのギャラリーを始めたんだ。彼らはこのメディアのためにほぼ独占的に作品を発表している。でも、伝統的な現代美術の世界にはまだ認知されてないね。どんなアーティストを選択するのかを決定するルールはなくて、自分が関心ある作品を選んでいる。このプロジェクトに関心を持ってくれるひとはたくさんいると思っているよ。

共感のできる、あるいは影響を受けたアーティストがいたら教えてください。

数え切れないけど、あげるとすると、Seth Price、Aram Bartholl、Cory Arcangel、Jon Rafman、Artie Vierkant、Constant Dullaart、Anthony Antonellis、Kim Asendorfなどかな。

アート以外で今興味を持っている物事がありましたら教えてください。

植物学とボディーボード。

installation_view_baja

Desktop Screenshot Painting Oil on canvas. 60×40 cm. 2012.

Manuel Fernández プロフィール 
1977年、Málaga生まれ。スペインのマドリッドを拠点に活動するアーティスト。彼の芸術的実践はアート、ポップカルチャーとインターネットとの交差する地点から始まる。社会におけるテクノロジーの影響と、それがどのように根底から知覚の方法と経験の現実を変化させたかについて探索している。ウェブ、絵画、アニメーションGIF 、彫刻、映像、写真や印刷などのメディアを通じて、インターネットの時代における、創造とアートの制作、流通、プレゼンテーション、リアルとバーチャル空間の同梱物などに関わる新たなプロセスを調査する。FernándezはNew Museum NYCのArtbase of Rhizomeでいくつかの作品を発表しており、The Museum of Moving Image(ニューヨーク)、Armory Show(ニューヨーク)、Art Basel(マイアミビーチ)、 ARCO(マドリッド)、The Photographers Gallery(ロンドン)など、アメリカ、欧州、アジアで展示を行っている。2013年にArtSlantが主催した「ERROR 415」賞の審査員の一人。2014年にはBeep / ARCO New Media Art Prizeを授与されている。また、Fernandezは、Webベースのギャラリー、デジタルとインターネットベースの作品に焦点を当てたDomain Galleryの創設者でキュレーターでもある。
http://www.manuelfernandez.name