人と人が集まればコミュニティが生まれる。集団には特有の色彩や温度があって、ときには全体としてひとつの人格のようなものになる。固有名を持った集団としての自我は、求心力となる人物にコントロールされているものだけれど、同時に制御できない不確実性も持つ。人々の間に生まれた無意識が作り出すこうした独特の動きは、加速度が高まり、自立性が大きくなればやがて「運動体」と呼ばれる。そんな運動体となることを目指して活動する集団、パープルームの紹介をしたい。

パープルームは、アーティストの梅津庸一が立ち上げた美術予備校。予備校といっても、美大受験を目指す学校ではない。彼らの特色は、参加するメンバーが共同生活を送っている点。その拠点となる相模原で絵画を勉強する一方、集団としてあたらしい美術を作り出すことを目指して活動している。

梅津はこれまで、制作のかたわら美術予備校と美大のいびつな関係に着目し、業界の人々が語りたがらないその成り立ちを詳らかにする批評活動を行ってきた。そして今度は、自分自身でその「教育」を実践するべく、パープルーム予備校を結成。描き出したビジョンを一歩一歩たどっていく彼の用意周到な性格は、生徒獲得のために予備校に講師として赴任するという、その計画の遠大さにも現れている。

梅津は予備校の赴任を皮切りに、草の根で学校づくりを始めた。集まってきた生徒たちはツイッターなどで活動を知った地方在住の若者たちが多く、その加入の方法がちょっと変わっている。メンバーが増やせないのはパープルームが生活空間も兼ねているからで、そこでメンバーの募集にちょっとしたハードルを設けることにした。そのひとつが、場所が明らかにされていないパープルームに自力でたどり着くというものだった。

「あまくんの決め手は、住所を勝手に調べて当てたところですね。普通の学校ってのは入試があって、無作為ではないけど、誰でも来いって感じがある。そんなことで美術が生まれるはずはない。いくら倍率が高くなっても、傾向と対策がうまくはまれば、情熱がなくても芸大にも受かってしまう。そんなことだから美術が面白くないんです。美術は、少人数でも常軌を逸したやる気があれば、余裕で勝てるはず。そういう意味ではあまくんは絵は見なくてもわかる、存在が、奇跡的な出会いだったらいいんです。」

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いちばん初期のメンバーが、安藤ゆみさんで、彼女は一度加入を断りながらも、現在は藝大に通いながら、パープルームに特別な熱意を傾けるようになった。そのうち、こちらの活動の方がメインになってしまった。

アランくんは、鳥取の美大の大学院に通っていたが、展示の手伝いで梅津さんとの出会う。それをきっかけにして、もっと美術でガチの真剣勝負をしたいと考えるようになった。そして、上京してパープルームに参加。

最年少はともきくんで、17歳。高校を2ヶ月で中退して、パープルームには3日前に青春18切符を買って駆けつけたばかりだ。

ネットの力でパープルームに辿り着いたあまくんは、島根県出身で、島根在住当時、カオスラウンジとパープルームで放送したラジオを聞いたことがきっかけで、パープルームに興味を持ったのだという。

パープルームのメンバーはそんなふうにして増えていき、現在は4名になっている。年齢も出身もバラバラなメンバーたちが、生活をそれぞれ共にしながら、梅津さんのもとで作品を制作し、批評し合い、問題を起こす仲間を諌めたりしながら、楽しく暮らしている。生活と表現がくっついている。それはパープルームも含めた、特に今の表現に当てはまる要素ではないだろうか。

パープルーム大学物語 ©Yoichi Umetsu, Courtesy of ARATANIURANO, Photo by Fuyumi Murata
パープルーム大学物語 ©Yoichi Umetsu, Courtesy of ARATANIURANO, Photo by Fuyumi Murata
ラムからマトン ©Yoichi Umetsu, Courtesy of ARATANIURANO, Photo by Fuyumi Murata
ラムからマトン ©Yoichi Umetsu, Courtesy of ARATANIURANO, Photo by Fuyumi Murata
ラムからマトン ©Yoichi Umetsu, Courtesy of ARATANIURANO, Photo by Fuyumi Murata

「一人ひとり役割が違っていて。あまだったら掃除をしたりとか、洗物があったら勝手に洗ってくれる。今アランくんからはパープルームの掃除機と呼ばれている。設営をする時に、パープルームはものすごい精度を求めるんですけど、アランくんはそういうのを不眠不休でやる。24時間ぶっとおしで作業して、床にTシャツのまま、寝たりとか。そんなホームレスな過酷な環境でも耐えられるんです。」

特に近年、こうした領域で生きていくためには、より強い覚悟が必要になってきている気がする。いつの時代にもいえることだが、過酷な環境だからこそ、コレクティブのような集合体を作ることには必然性がある。それは寄り添い合うというより、切磋琢磨するための共同体である。彼らは生き残るための条件をクリアするために、ここで予行演習を行っているのだ。

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「パープルーム予備校は何の予備かっていうと、アーティストの予備ということなんです。それだけじゃなく、この美術教育や、この怪しい共同体を、そのまま美術運動に重ね合わせている。すでに彼らはプレーヤーなんですよ。ここでは、スタートライン切ったところから、すべて見せていく。だから、生活も全部さらけ出すんです。」

多分この世界に存在しているであろういくつもの共同体。その可能性は個人では生み出せない、グルーヴを作り出せるところにある。その波長が、梅津さんという個人から放たれるものだとしても、集団となることで増幅されたり、歪んだり、変化することもある。コミュニティとは、それ自体が全体として、また別の生命のようなものなのだ。その響きをいかに持続し、そこから放たれたものを、より強く、より遠くまで届くものにできるか。個が集団となった時に起きる、その進化を楽しみにしたい。

本インタビューは雑誌『中庭』とのコラボレーション企画です。インタビュー本編は『中庭』のサイトで公開予定!

(取材日2016年1月30日)

パープルームグループ展「パープルタウンにおいでよ」
会期:2016年7月10日(日)~7月19日(火)  
開場時刻:12時~20時 会期中無休
会場:パープルーム予備校/パープルーム見晴らし小屋/ゼリー状のパープルーム容器
〒252-0216 神奈川県相模原市中央区清新3丁目13-19 インベストメント清新 303号室
ゼリー状のパープルーム容器 JR相模原から徒歩10分
※ゼリー状のパープルーム容器でパープルーム予備校、及びパープルーム見晴らし小屋へ行くための地図が配布されます。地図は表面が平山昌尚、裏面はパープルーム予備校による作図となっているそう。
http://www.parplume.jp/tennji/tokusetu201606.html
パープルーム予備校
https://twitter.com/parplume
http://www.parplume.jp/