By Yusuke Shono
日記のような日常世界の感覚から始まった前作、前前作から、タイトル通り「宇宙」をテーマにしたという本作は、日常から空想的な果ての世界へと至る旅の物語として聴くことができる。サウンドトラックのように描かれたその楽曲には、記憶の彼方に触れるような心やさしく穏やかな光景が広がり、その奥には微かな既視感がずっと響き続けている。この感覚はノスタルジーという現代に顕著なモードである。文化的に洗練された逃避行を続けながら、日常から音の生命を汲み出し続けるという試み。小庭的な作品だが、そこには私的な空間に穿たれた穴から世界を眺めているような展望が広がっている。