By Yusuke Shono
サイエンティスト、ミュージシャン、そしてヴィジュアルアーティストでもあるTavishi(Sarmistha Talukdar)は、自身の研究をデータをサウンドスケープへと変換する実践を行っている。伝統的な文化を持つベンガルから来たクイア女性という出自を持つ彼女は、自己の中間的状態の分裂を聴衆との音楽体験により合一し、カタルシスや癒やしの感覚へと昇華することを試みる。この最新作は、アジアをテーマにし活動するプラットフォーム/コレクティブ〈chainabot〉からリリースされた作品。癌細胞がストレスの多い状態で生き残るために自分自身を食べるオートファジーと呼ばれる過程について彼女が発表した研究データを作られた“I eat myself alive”は、アミノ酸配列を音に変換し、分子信号のフローチャートに沿って配置することにより作られた。また、“Satyameva Jayate”はサウンドのループとフィールドレコーディングにより「取り残された人々の歴史」を表現し、その最終的な勝利を願って作られたトラックである。抽象的かつインテリジェントなそのサウンドスケープは、インドの伝統的な調律とエクスペリメンタルな音響の間を行き来しながら、持続音や不協和音、また親密さと拒絶の間を横断する。そこにはしなやかさとダイナミズム、そして組み尽くすことのできない豊穣さが宿っている。