たかくらかずきによる「メカリアル」展が、山梨県立美術館にて開催されている。タイトル「メカリアル」は、シュルレアリスムが日本に上陸した際の「機械主義」と呼ばれる傾向に着目した、たかくらによる造語。山梨県出身の作家たかくらかずきが、そのシュールレアリズムに日本で独学で取り組んだ山梨県出身の画家、米倉壽仁の作品を鑑賞したことからはじまる。
昨年、米倉壽仁氏の展示を見て、時代の転換期にあった日本のシュルレアリストの作り出す言葉やイメージが、現代に生きているうえで私が感じている『あらゆる価値観が融解し・引き裂かれ つつある状況』にリンクした。機械化が一気に進んだその時代に現れた新しい『現実』をシュルレアリストたちが『機械的リアリズム』と呼んだのであれば、AIが生成したテキストや仮想現実の世界は、彼らの想像していた無意識の世界に極めて近いものなのではないだろうか。シュルレアリストたちは仮想と現実に、社会と自然に、人間と非人間に、常に引き裂かれつつ、それらを何とかひとつの和合にたどりつかせようともがいたのではなかっただろうか。
現実と仮想、人間とAI、高尚と低俗、そうしたさまざまな対立軸が入り乱れ、相反しあう時代であるからこそ、アーティストとして彼はその「和合」という概念に新しい表現の行き着く可能性を見出したのではないだろうか。対立軸がありのまま存在しているのが現実だとしたら、それが和合した世界が新しいリアリティとして立ち上がってくるのがオルタナティブな現実を示すアートの役割でもあると考えられる。そのような対立を乗り越え新しい世界へと至る可能性が再び社会に還るとき、そのあり方自体が社会を変えていくことも考えられるだろう。
「メカリアル」は、美術館内の空間、館外に広がる芸術の森公園、そして仮想空間を舞台に作品が展関される。また現地では美術館庭園を巡って10種類のNFTをgiveawayする『NFT道祖神巡り』も行われる予定。たかくらと米倉、2人の山梨県出身作家の共鳴から生まれる新しい作品世界を堪能しに訪れてみてはいかがだろうか。
名 称 : LABONCHI 01. たかくらかずき「メカリアル」展
会 場 : 山梨県立美術館 ギャラリー・エコー(美術館エントランス)、芸術の森公園
会 期 : 2023年2月28日(火)~3月26(日)
休 館 日: 3月6~13日、20日
開館時間 : 午前9:00~午後5:00(入館は午後4:30まで) 観覧料 : 無料
Related Posts
- 「流れのパターン / Patterns of Flow」展について −川野洋の探究心を再び−
-
2023 NFT Scene Highlights (Part2)
Events and Works Surrounding NFTs: Timeline (365) -
2023 NFT Scene Highlights (Part 1)
NFTをめぐる出来事と作品、2023年のハイライト - 草野絵美が、Bright Momentsと共にAIアートコレクション「Techno-Animism」で世界ツアーを展開
- NYを拠点に活動する日本人アーティストKaryn Nakamuraが個展「noise pile」を開催。