「アプデ輪廻」とは、アップデートしながら継続的に行われるアーティストたかくらかずきの制作活動と展示のこと。一連のシリーズは“ハードウェアとしての物質/肉体”と“ソフトウェアとしての魂/精神”の関係性について、日本仏教や東洋思想の観点を引用して制作した美術作品群で、今作「4.0 -天国・地獄・大地獄-」でシリーズの最後の展示となる。
作品は「Startbahn Cert.」で発行されるブロックチェーン証明書「Cert.」に紐づけられたエディション付き作品、そしてNFTデジタルデータとして販売される予定となっている。
アプデ輪廻 ver4.0 天国・地獄・大地獄に向けてのご挨拶
2020年6月、新型コロナウィルスの波から逃げるように僕は東京から京都に引っ越した。
そのことにより観光、自然、信仰がより身近になり、情報の集積地である東京は画面の向こうの世界になった。僕はもしかしたら”この世”から”あの世”に引っ越したのかもしれない。今の僕にとっては画面の手前の世界が”京都”で”この世”であり、東京は”画面の向こうの・あの世”だ。小さな日本の中での話だけど。日々更新される感染者数のグラフと株価や仮想通貨のグラフ。それに影響するように揺れ動く僕個人の生活、精神状態の変化、妻や家族との関係性、以前より遠く離れた友人たちとの想像上の関係値。そしてそういったものがすべて架空のグラフ上で上昇と下降を繰り返す。望まなくても時は進み、時が進むことで上がったり下がったりする。上がらなければ下がらない。下がらなければ上がらない。全てが連動した大きな乗り物のように常に揺れている。人はずっとそのように生きてきたが、やっと僕が視認できるようになったにすぎない。
輪廻の話をするときに出てくる六道(天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道)は死後の世界ではなく、現世そのものにそれぞれのレイヤーが重なっている。現世を修羅として生きる人もいれば、天国として生きる人も、地獄として生きる人もいる。天国だったものが地獄になったり、大地獄になったりする。死後の魂は上へ上へと上昇し、肉体は地面の底へ埋まるとして、それでも時間は横に続いていくのか、それとも人は人生を終えてやっとジェットコースターのような1本の時間軸から降りて、波紋のように広がっていく時間を体験することができるのだろうか。あらゆるハードウェア(肉体)に時間はまっすぐ直角に蓄積する。ではソフトウェア/ デジタルデータ(魂)はどうか?我々はデジタルデータ(魂)が存在していると信じていても、次の瞬間には信じる人が誰もいなくなり、跡形もなく消えてしまうことがある。魂は0と1でできている。
私たちはデジタルデータという信仰の時代に生きている。
たかくらかずき
会期:12月16日~26日 (月・火 休み) 12:00~19:00
入場料:無料
場所:TOH
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷5丁目20−11 第一シルバービル 1B
https://goo.gl/maps/Saqcy7y1Acgsapbn9
作家プロフィール: たかくらかずき アーティスト
1987年生まれ。3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFTなどのテクノロジーを使用し、東洋思想による現代美術のルール書き換えとデジタルデータの新たな価値追求をテーマに作品を制作している。現在はおもに日本仏教をコンセプトに作品制作を行う。京都芸術大学非常勤講師。Openseaで仏像NFTシリーズ 「NFT BUDDHA」を展開中。
https://takakurakazuki.com/
https://opensea.io/collection/nft-buddha
Related Posts
- 「流れのパターン / Patterns of Flow」展について −川野洋の探究心を再び−
-
2023 NFT Scene Highlights (Part2)
Events and Works Surrounding NFTs: Timeline (365) -
2023 NFT Scene Highlights (Part 1)
NFTをめぐる出来事と作品、2023年のハイライト - 草野絵美が、Bright Momentsと共にAIアートコレクション「Techno-Animism」で世界ツアーを展開
- NYを拠点に活動する日本人アーティストKaryn Nakamuraが個展「noise pile」を開催。