素材は布、照明器具、真鍮、木材、アクリル、コンクリート、ポリエステル、モニター、ソファー、食品サンプル、モーター、映像などである。脈略のないその組み合わせによって作り出されるのは、色彩が醸し出すアンビンスに満ちた白昼夢のような空間そのもの。鮮やかなカーテンに仕切られたその空間では、幾段にも入れ子になった構成を見ることができる。部屋の中に置かれたモノたちはそれがもともと持っていた機能や意味を失い、飛躍した切断面の美しさを見せている。それらは擦り切れるまで消費されたイメージのように平準化されて常に抽象的なイメージへと昇華される。象徴的なのは、美しいフォルムの回転するモップである。その単調な動作が作り出す光景は、意味から無意味へという奇妙な転移の証拠である。機能を持たないその場所は、ある種非人間的なような冷たい感覚を放つ。モニターの向こう側のように、そこには私たちが存在していない。しかし所有という重みから切断され、自由となった記号は、彼の空間で解放された喜びに満ちているようにも思える。レコードジャケットのイメージのように虚無的で、存在を主張しない倦怠のような。あるはずのものがない、というよりは、それはないものが在るというような感じ。その空洞はまるで音楽のように心地よい。
2018.11.10 Sun ~ 11.27 Tue
CALM & PUNK GALLERY 東京都港区西麻布 1-15-15 浅井ビル 1F
http://calmandpunk.com/
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