既存の郷土芸能/伝統を脱構築し、新しい日本の情景を打ち立てる屈指のハードコア電子音楽家Sugai Ken。昨年のRVNG Intl.からの『UkabazUmorezu』で一気にその名を国内外に知らしめたが、今年はYerevan Tapesより『岩石考 -yOrUkOrU』と、今作の『てれんてくだ – tele-n-tech-da』の二本をリリース。架空のラジオドラマのように作り上げたという言葉通り、前作の研ぎ澄まされたミニマルな音響とは対照に、今作ではより奔放かつ雑味を帯びたサウンド・コラージュが繰り広げられる。見立てられたそれぞれの由来が何なのかは知識不足のため不明だが、狂気と恐怖、高揚の入り混じった感覚が全体にひりついている。個人的には、今年のMUTEKで見たマルチチャンネルでの演奏にぶちのめされたのも印象に大きい。怒涛のディグ精神とフレキシブルなセンスをもってミュージック・コンクレートを鮮やかに更新する、ブリリアントな一枚。