例えば、混雑しない程度に人がいるカフェテリア、決まった順路などなく人々が歩き回ったり座ったりしている美術館。適度にざわついていて、みんなそれぞれのことをやっていて、誰もこちらのことなど気にもとめていない。そういった場所では遠慮なく存在していられると感じる。お互いの存在を意識の端に置きつつも、特にそれに対して何かする必要もない。ただ同じ時間に同じ場所に存在しているという事実がそこにあるだけだ。『WHAT WE LEAVE BEHIND / JEAN-LUC GODARD ARCHIVES』を聴いていると、そんなざわめきの中に入ることができる。ひどく疲れていたり、気分が沈んでいたりして、聴きたい音楽もない。そんなときも、この「色を持った音」は雑踏のように私たちを包んで、放っておいてくれるだろう。