食品まつりは、横浜在住の電子音楽作家。もし、その作品が未聴だとしたら一度聴いてみてほしい。きっとこれまで聴いたことのない感覚を見つけられるはずだから。パターンの読めないビート、異国情緒を感じさせるサイケ感、色彩豊かで新鮮な驚きに貫かれた展開。シカゴ生まれのダンスミュージック、ジューク/フットワークを独自に消化・咀嚼したという音楽性は、ジャンルという枠組みを軽く超えていく。けしてワンパターンでないのに、奇妙なポップさまで兼ね備えている。そんなサウンドには、そこいらのフロアでお目にかかることはなかなかできない。特異な作品が生み出される制作環境とは、いったいどんなものだろうか。その秘密を探りに、神奈川県に位置する食品まつりさんのお宅にお邪魔してきました。

制作はコンピューター中心ですか? アプリケーションは?
ソフトはAbletonのLiveですね。機材はKORGのELECTRIBEがメインです。ライブの時は他の機材を使ったりもします。ライブはライブの曲を作るんですよ。いちから全部つくります。ライブの曲はあんまりリリースしてないですね。

リリースした曲をライブでやることは?
ほとんどないです。リリースした曲は、ライブに向いてなさそうで。なんかくしゃくしゃってしてるだけなんで(笑)。どういうシチュエーションでやればいいのかがわからないっていう。

それはまたすごいですね。この機材セッティングで、気に入っている特性はありますか?
本当はもっとこうしたいってのはあるんですよ。モニターの低音がちょっとわかりにくいとか。オーディオ・インタフェースももっといいやつが欲しいんですが、とりあえずあるものでやってます。あと、ZOOM ST-224は一番初めに買ったサンプラーなんですけど、今これで3台目です。自分のサウンドの特徴になってるものですね。

以前、チープな機材を使ってすごい曲をつくりたいっておっしゃっていましたね。
その気持ちはあります。それもあって、いまだに曲作りのメインサンプラーはST-224を使ってます。中古で5000円くらいで買えるんですよ。madlibなんかがSP-303だけでトラック作ってるのにロマンを感じますね。そんなんでやっちゃうの? みたいな。今だと逆にソフトの方が安かったりしますけどね。

ドラムマシンは全然使わずですか?
サンプラーとシンセとPCだけです。コンピューターじゃないとやりとりとかがうまくいかないプロジェクトなんかもあるんですが、基本的にはハードだけでやりたいってのがありますね。ライブもメインの音はハードです。コンピューターはwavをポン出しするときに使うぐらいですね。あと俺、曲をつくる時、そこまで聴き返さないんですよ。

えっ、自分のつくった曲をですか?
そう。普通はつくってて、何回も聴きなおしてブラッシュアップするんでしょうけど、僕の場合はブラッシュアップはそこまでしない。できたらそこまでいじらないで次の曲にいくという。そうするとバリエーションが豊かになる気がするというか。考えないので。ハードだと一発録音だから戻れない。巻き戻しできると制作時間が長くなって、それもよろしくないなって。この制作法はmadlibのインタビューからモロ影響うけてます(笑)。

ということはやっぱり、制作時間は短い?
最近は1曲につき2~3時間くらいで作ったりとか。前は1曲に1週間とかかかったりしてたんですけど、最近は結構短いですね。バッとつくって録音して終わりみたいな。でも、今年からはもっとコンピューターを使っていこうかなって。ちょっとハードも飽きてきたし。

ZOOM ST-224
KORG ELECTRIBE
DAW環境はAbletonのLive
Roland JUNO-60

シンセとサンプリングと比率はどのぐらいですか?
結構バラバラなんですよね。思いつきでサンプリングだけつくる時もあるし。半々ぐらいですかね。自分で弾いてみていいなってやるときもあれば、サンプルをひっぱってきて、バッと切ってみたりとか。飽きないように、いろんな作り方をします。

1曲が短いのも特徴ですね。
それも飽きちゃうからっていう。当時、一日1曲2曲を絶対つくろうって自分に課してた時があって。さすがに一日1曲2曲、仕事から帰ってきてつくるのが辛くて。で、1分つくって、つくったことにしておこうっていう(笑)。

短いのに構造がはっきりあるのがすごいと思いました。
確かに最近つくってるやつは、割と展開がはっきりしてるのが多いですね。それも、飽きないようにですね。小さい絵が好きなんです。小さいけどよく見ると書き込まれているみたいなものが。そういうものが好きなので、性向かもしれないですね。

視覚的な感じがするというか。作る前にイメージがある?
ビジュアル的に考えてますね。ジュークはビジュアル的なところがあって、聴いてる時に、立体的に石が並んでて横から定期的にピュンピュンピュンってレーザーが飛んでるみたいな。

曲ごとにもイメージがはっきりしていますね。タイトルなんかも面白い。
タイトルは適当なんですけど、日常にあるものは意識してますね。日常の中のサイケデリック。ふつうに飯食ってたら、いきなりぶっ飛ぶ瞬間とか、お風呂入ってたら、そのまま違う世界にいたみたいな。そういうのが好きなんです。

最新のリリースは?
一番新しいのは、〈Patient Sounds Intl.〉からで、「Hot Rice」っていうタイトル。お米から炎が出てるジャッケのやつ。

初CD作品の「COULDWORK」はベーパーウェイブ的な感触が、これまでよりも割と前に出てた感じがしました。
〈meting bot〉の海法さんに大部分を選曲してもらったので、選曲面でそういう感じが出ているかもしれないですね。

選ぶ人の感性?
そうですね。「COULDWORK」は彼のチョイスがかなり活きてるなって。

じゃあ、曲づくりで、アルバムを作ろうっていう意識はあまりない?
そうかもです。でも、次出すのも〈Orange Milk〉からで、LPなんですけど、それは割とコンセプトがあって。タイトルは「イージー民族(EZ MINZOKU)」っていうやつなんですけど、ポンポンポンって音だけで踊れる、ジュークの発展系みたいなのをやってみようと。低音もあんまなくてスカスカしてて、っていう感じなんですけど。子どもがごはんのときに、箸とかでお茶碗にカンカンカンってするじゃないですか。それの発展したやつをやりたいなって思って。あれって民族音楽の原型じゃないですけど。音楽やってない人が、ポコポコやってるっていうのがおもしろいなって思って。誰でも簡単に民族音楽ができる。そういう意味合いで「イージー民族」ってタイトルをつけたんです。それが、5月くらいに出ると思います。

楽しみですね。
リリース自体は結構、準備してます。今また色々とつくってるところですね。

食品さんには、これまでない音を作ろうとする目指している姿勢を一貫して感じます。
聴いたことがない音楽をやりたい。音楽って、新しい手法は出尽くしていて、組み合わせでしか新しいことができないとよく言われます。だけど、気持ち的には誰も聴いたことがない音楽をつくりたい。その気持ちが大事なのかなって思います。ロマンかな。あるいは、ファンタジー。新しいものを発見したい。そういう気持ちがあるのかもしれないですね。

※後編は食品まつりさんのジューク観、そして日本のジュークシーンの形成についてのインタビューをお送りします。

食品まつり aka foodman
2012年にOrange Milkよりデビューした、横浜在住の日本の電子音楽作家。シカゴ生まれのダンスミュージック、ジューク/フットワークに刺激を受け、作品を作り続けている。 https://soundcloud.com/shokuhin-maturi