Interview with Tom Galle

インターネットミームを創造するアーティストTom Galle。
ミームの作り方、そして彼が探求するその可能性とは。

Text: Yusuke Shono, Translation: Noriko Taguchi, Natsumi Fujita

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いろいろな国を移動しているようですが、旅行でしょうか? あるいはいろいろな場所で仕事のスタイルを採用しているのでしょうか?
いつもは主にフリーランスのデジタルクリエイターや広告代理店、デジタルスタジオ、スタートアップのコンサルタントとして働いている。現場に行かなくちゃならない仕事もあるけど、多くのエージェンシーが遠隔でフリーランスと一緒に仕事するようになってる。今のところうまくいっているよ。旅先で出会うすべての場所にアイデアをもらっているし、一日中オフィスで座って仕事しているよりも生産性が高いと感じる。僕はとりわけ日本が大好きなんだ。だからたまに僕を見かけるかもしれないね。

あなたの作品においてインターネットの影響は大きいですか? 最初の出会いを覚えていますか?
もちろん! 多くの作品でインターネットカルチャーにアイデアをもらっているし、捧げてもいる。僕のアイデアの源なんだ。インターネット上に生じる特定のものごとをとらえて、コンセプチュアルな角度を与えて、またそこに再び戻すんだ。イメージやプロジェクトは再び頻繁に取り上げられて、広まっていく。その方法で、僕はインスピレーションをもらったインターネットカルチャーに貢献しようとしてる。ここ数年の働き方は、Moises Sanabria、ART404、John Yuyi、Bob Jeusetteほか、親しい友人とコラボレーションすることだね。

インターネットとの最初の出会いを覚えていますか?
インターネットを始めた時のことを覚えているよ。15歳前後だったと思う。実家で56Kモデムから始めたんだ。そこから今に至る。6人家族なのに家にはパソコンが一台しかなくて、シフト制で使いあっていたんだ。当時は、インターネットに対して完全に自由でアナーキーだというクレイジーな感情があった。ICQやIRCなどのメッセージプラットフォームを使って、何でもほしいものを見つけたり、誰にでもなることができたんだ。それは無制限で、可能性にあふれていて、新しい世界のように感じた。インターネット上の特殊な行為、荒らし(Trolling)のようなものが現れはじめて、そういうものや今日まで残っているものが、僕たちのプロジェクトの多くで用いられている。rotten.comのようなウェブサイト(または、思い出せないいろいろなサイト)は、完全に自由なアイデアを体現しているんだ。

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スマートフォンやケーブルを使った写真の作品をFacebookにアップしはじめたのはいつ頃からでしょう? またそうした作品を作り始めたきっかけはありますか?
作品へのアプローチ方法は二つに分けられる。ひとつ目は、イメージを膨らませてアウトプットすること。ウェブサイトやオブジェクト、パフォーマンスなどがそれに当てはまるね。基本的に、イメージよりもさらに先を行くんだ。それは美しいイメージも生み出し得る。そうやってプロジェクトやイメージは面白くて価値のある作品になるんだ。

二つ目は、より「日記」的なアプローチ。僕たちはテクノロジーや、あるいはミームのような「言語」、ユーモアなどのテーマを中心に、短時間でアイデアを形にする。テクノロジーやインターネット上の行動に、皮肉にせよ、批判的にせよ、感情的にせよ、自分自身の経験に基づいて光を当てようとしている。ソーシャルメディアは短時間で作品をつくったり、ポストしたり、世界中からすぐにリアクションをもらうことを可能にしてくれる。何百万ものフォロワーがいる巨大なミームのサイトで情報が広まってピックアップされたり、雑誌TIMEなどのアーティスティックで主流なメディアに届くこともある。面白いのは、技術的な開発が必要のないコンセプトをただ拡散しているということ。作品は伝えるためのコンセプトや構成、美学に焦点が置かれている。

あなたの作品にはインターネットのミームに近い意識を感じます。あなたはミームにどのような可能性があると思いますか?
その通り。僕は自分自身をミームアーティストと名前を付けたいんだ。でもほかの領域にも興味があるよ。最近は友達と一緒にファッションデザインやプロダクトデザインといった、これまでとは違ったフィールドに取り組んでいる。だけど僕の作品の大多数は、ミームの文化を用い適用し、役立てたものだね。

ミームはこの先もなくならないし、違ったかたちに発展していくと思う。「ミーム」という言葉を聞くと、多くの人はイメージを思い浮かべるかもしれない。でも僕にとってのミームは、基本的にツイッター上の言葉のような伝達手段の言語だったり、ソーシャルメディア上のイメージだったり、オブジェクトやパフォーマンスなんだ(例えばNetflix & Chill roomMacbook Selfie Stickなど)。ミームの定義って、インターネット上で意図的に拡散された特定のユーモアのセンスのことだと思っている。だからユーモアのタイプとミームのかたちは進化すると確信しているし、絶滅しないと思っているよ。もしミームが面白いままなら、僕たちはそれを見守らなければならないんだ 🙂。

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アートの世界において、ミームを用いることには可能性を感じていますか?
ミームアートで本当に面白いのは、これらの作品が大衆や、もっと知的なアートのコミュニティーに同時に語りかけているように見えることだよ。それは伝統的なアートの世界にとっては比較的新しいことなのかもしれない。正直に言うと、僕は昔ながらの世界はあまり知らないんだ。だけど彼らの関心はますます高くなっていると感じるよ。人々がショーや記事などのために、僕たちにアプローチし始めている。だからその昔ながらの世界に入れるポイントがあるのだと確信している。インターネットアートはすでにギャラリーで展示されていて、そこには素晴らしい作品があるし、中にはミームアートだと思うものもある。だからインターネットアートに独自の方法を見出した人々もいると思うんだ。

だけど、積極的に伝統的なアートの世界の一部になろうとは思っていない。聞いた限りでは、アートの世界は制約があって、選ばれたエリートによって支配されている。僕たちはインターネットを使って、違う方法でやれると感じている。オンラインショップで作品を売ることができて、ギャラリーよりもはるかに多いファンを得ることができるかもしれないしね。ギャラリーに行きたくないわけではないよ。フィジカルな作品には本当にいい面があるからね。ただほかの選択肢を探しているだけなんだ。

今まさに試しているところだけど、ギャラリーのインターフェースを一切使わずに、よい値段で作品を買ってくれる友人がいるしね。インターネット上でアーティストになったら、アート界に足を踏み入れたり、あるいはアート界からお呼びがかからなくても、人々が作品で生計を立てられるように進化するものだと思っているよ。

ほかに最近気になるテーマや、テクノロジーなどはありますか?
僕がやっていることの中でこれがいちばん楽しい部分なんだ。インターネットがすごく速くなったので、新しいインスピレーションの源が毎日のように出現する。ある日、ポップカルチャーやミームカルチャー上で熱い話題になったと思ったら、別の日には新しいテクノロジーがすごく注目を浴びるようになっている。僕の課題は、インターネットやテクノロジーの進化とともに進化し続けることなんだ。皮肉や批判やユーモアを持ってそれを投げかけ続けていくつもりだよ。

何か次の作品のプランは控えていますか?
今やっている一番大きなプロジェクトは、親しい友人たちのグループと一緒に行っているアメリカの企業文化を中心にしたものなんだ。このプロジェクトのグループの人たちはとても面白くて、プロジェクトはプロダクトデザインやファッション、写真、ブランディングなど、本当に色々な方法で迫ろうとしているんだ。このプロジェクトは一見シリアスに見えるものだけど、企業がどのようにルールを定義しているかってことに対して違った視点を投げかける、まさに強烈な「Trolling」の要素がある。特にアーティストってこういうルールや制約に弱い。だけどそれはたくさんの人たちに伝わるものだと思っている。

その次に、WebGLを使ったウェブサイトや、3Dイメージ・高度な写真に対応したソーシャルメディアのための新しいコンセプトやコンポジションづくりに取り組んでいる。あとは今、自分たちの作品を買えるショップをつくっているところだよ。

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Tom Galle
http://tomgalle.online
https://www.instagram.com/tomgalle/