POINTLESS GEOMETRY JAKUB LEMISZEWSKI – 2019

季節のように移ろう日々の感覚の変化に焦点を合わせながら、研ぎますように聴覚を微細に調整し、音を聴くという行為の中にある確からしさの在処を確かめる。ダンスという機能的な行為の中にも、次のステップを生み出すためには、常に未知の感覚へと飛び出していく開かれた跳躍的な態度が必要である。どのようなときも次に来るサウンドは、曖昧に広がる広大な領域から、感覚の照準を定め、触れることができる実態へと突如として形成されたものでなくてはならない。それは未知の創造というよりも、発掘にも似た行為だろう。2017年から2018年にかけてポーランドで録音されたJakub Lemiszewskiによるこの作品は、リズミカルに刻まれた低音の振動と、奇妙でありながら心地よく響くそのサウンドにより、身体あるいは感覚の中にある新たな可能性を探索する。洗練されたといってもよいほど多角的な音響と質感の楽しさが織り交ぜられながら、けして一点に収束しない多様な文脈が交雑したキメラのような異形の音楽電子音を形作っている。身体の奥に眠る未知の感覚を呼び覚ます、可能性としてのダンスミュージック。それは土地の記憶と結びつき、そこにあった歴史を改変しながら、固有の質感を鳴り響かせている。