MASSAGE MONTHLY REVIEW – 4

MASSAGE&ゲストで、4月の音楽リリースをふり返る。

S=Yusuke Shono, C=Chocolat Heartnight, TN=Noriko Taguchi

AH, DOCKA MORPHER – RAFT OF TRASH

Raft of Trashは、環境との対話による自然のリズムとサウンドシステムにインスパイアされた活動を行う、Thom Isom、Andrew PM Hunt、JC LeisureによるMIDIコラボレーションプロジェクト。都市開発シミュレーションゲームであるシムシティ3000で使用されているサウンドトラックを使用して、即興的に絶えず変化するライブのMIDIデータを生成する。前作「Grouw」で即興的に作り出された、4つの「ゾーン」(楽曲)は、今作の5つのゾーンに引き継がれそのユートピア的なニュアンスを奏でている。非生命の存在がささやきあうような響きは人工的なそれではなく、どこまでも有機的。身を委ねたくなるソフトな電子音の流れが心地よいランダムネスの中に溶けて、複雑な対話を重ねながら入り組んだ模様を次々と紡いでいく。人間中心的な視線から解放された自由を獲得したその響きは、どこまでも広がっていく生命的なディテールを持っている。テクノロジーから自然へというグラデーションを描きながら、人間の不在の可能性を描き出したこのアルバムはまた、エコロジーへの意識を高めるツールとして音を使用することについての進行中の対話のための実験でもある。すべての収入はプラスチック汚染の分析と調査の活動を行っている非営利団体5 Gyresに寄付されるとのこと。(S)

SOUNDWALK COLLECTIVE – WHAT WE LEAVE BEHIND / JEAN​-​LUC GODARD ARCHIVES

例えば、混雑しない程度に人がいるカフェテリア、決まった順路などなく人々が歩き回ったり座ったりしている美術館。適度にざわついていて、みんなそれぞれのことをやっていて、誰もこちらのことなど気にもとめていない。そういった場所では遠慮なく存在していられると感じる。お互いの存在を意識の端に置きつつも、特にそれに対して何かする必要もない。ただ同じ時間に同じ場所に存在しているという事実がそこにあるだけだ。『WHAT WE LEAVE BEHIND / JEAN​-​LUC GODARD ARCHIVES』を聴いていると、そんなざわめきの中に入ることができる。ひどく疲れていたり、気分が沈んでいたりして、聴きたい音楽もない。そんなときも、この「色を持った音」は雑踏のように私たちを包んで、放っておいてくれるだろう。(C)

wai wai music resort – WWMR 1

wai wai music resort。ワイ ワイ ミュージック リゾート。そのサウンドがどんなものなのか、この名前からうまく想像できないかもしれない(少なくとも私はそうだった。そして、それは彼らの狙いどおりなのかもしれないとも思う)。アルバム『WWMR 1』のアートワークは白地の真ん中に刺繍で描かれた海と木々。南国にも見えるし、日本のどこかにも見える。空の色は日暮れのような、明け方のような。音を聴いてみると、リゾート感あるポップサウンドながら、ほど良く温度は低め。ビル街の天気雨、常時接続でない電子メールのやり取り、夜の車の中で聴くFMラジオ。そこには、ぼんやりとした輪かくを探りながら旅という非日常に寄せる期待と日常にまぎれたリゾートが静かに広がっている。(C)

Future Proof : 面向異日 – in city stone

〈Future Proof : 面向異日〉ことLars Berryは、カナダ出身で台湾在住のアーティスト。同名のレーベルを主宰し、別名義Colour Domesとしても楽曲を発表している。「in city stone」は、台湾を拠点に活動するレーベル〈swivelized sounds〉よりリリースされた。また、アルバムの2曲目「iandu」は、ドイツはベルリンのレーベル〈NO DISK〉のインスタグラムにて映像3部作品として公開されている。映像は、Ferox Neutrino (Radiant Silver Labs)とColour Domesによるもの。連続的に細かく配置された電子音に艶やかな残響音、金属音、ノイズ、人の声が折り重なり、静けさの中にどこか人の気配が残り、アンビエントな景色が広がる。このアルバムを深く聴くと、音のマイクロカルチャーが見えてくる。フラクタル図形の一つの海岸線のように、細部を見ようと近づけば近づくほど複雑で同じ形状が続いている。空虚な巨大企業のビルを見上げながらヘッドホンで聴きたくなる音だ。アルバムのタイトル「in city stone」はまさに都市を構成するものだ。有機化合物は含まれていない。トラックはおそらくグループリスニングには向いていない。人目につかず物思いにふけるのがいい。またトラックは手術後、誤って患者の体内に取り残された医療機器を追求している。患者は異質な医療機器が体内に残存する状態で、金属探知機を避けて歩き回るしかできないのだ。廃墟や建物、体内に残された医療器具のように、使用されずそのまま放置され朽ちて崩壊していく虚しさやその過程の奇妙な光景を描いているのかと深く考えたくなるが、この映像を見て彼の母が言った「何か気になるわね…。」が正解なのかもしれない。(TN)