VA - tiny pop – here’s that tiny days

デジタル版『tiny pop – the tiny side of life』のリリースは昨年の12月だが、CD版は『tiny pop – here’s that tiny days』は今年1月リリース。CDにはデジタルの収録曲に6曲を加えた11曲が収録されている(参加アーティストはどちらも同じ)。まずは4組のアーティストたちの作品の空気を感じてみるには最適な1枚。ジャンルやカテゴリー分けはともかく、このアルバムを聴くと、やっぱり小確幸は人生にはなくてはならないものだ、と思う。

64controll - Sports Club 64

昨年の50 Japanese track maker / musician 201950 Japanese track maker / musician 2019で『JUSCO』を紹介した64controllのニューリリース『Sports Club 64』。“JUSCO”を含む全4曲、期待を裏切らない楽しさのニューディスコEP。ノレる曲、踊れる曲しか入ってないので、これはもう踊るしかない。とにかく楽しく全力でカラダを動かして日々のストレスをちょっと発散するにはうってつけの1枚。「Stay home and listen to this」!

Gimgigam - Strange Night Tour

前回、Local Visionからリリースされたアルバムは『Trip』と題されていたが、今回は『Strange Night Tour』、夜の旅へと誘う1枚となっている。次々に色々な光景が現われ、旅の夜の開放感を感じられる。旅先の夜にはいつも、このまま夜が空けなければいいのにと思ったりする。それでも時が過ぎれば、必ず朝はやってくるのだけれど。

feather shuttles forever - 特になにもない

浮遊感……といっても、例えば、地面からわずか数センチだけ浮いたような、密かに楽しい浮遊感がある曲。この曲がリリースされたのは、SoundCloudのページの表示によると11ヶ月前。その頃、世の中どんなことが起こるかわからないなどと考えることになるとは思ってもいなかっただろう。これから11ヶ月経ったとき、どんなことを考えているかもまったくわからない。「通り過ぎれば何ともないことばかりの日々」と思えていれば、きっと最高だ。

SOUND HOUR - EDITS 1

Bandcampのページの説明には「ある日ハイハットのメールボックスに届いたデモは自称18歳の高校生SOUND HOURより。どちらもクラブにピッタリすぎるので多分プロフィールは嘘だろう」と書いてある。間違いなく2曲ともクラブのフロアで聴きたいと思う曲。実際のところ、誰が作ったかは曲自体にはあまり関係がないのかもしれない、そうだといい、と思ったりする。でも今はそれより、まずはこの曲をクラブで聴ける夜のことを考えていたいと思う。

空気系 - 1月14日​(​火)

Wikipediaによると「空気系、もしくは日常系とは」、「大きな事件や出来事を伴わない何気ない日常を淡々と描写している点が特徴とされる」とのこと。まさに何も起こらない日常の音がくり返されたり、ぷつりと切れたりしながら、ただ流れる41分間。今はいつも以上に、そういったものに安らぎを、むしろ憧憬に近いくらいのものを感じているのかもしれない。

Hotdog - Muling Kagat

1970年代を中心にフィリピンで活動した二人組のバンド、Hotdog。メンバーのRene Garciaは2018年、Dennis Garciaは今年と相次いで亡くなっている。Hotdogの記憶が薄れて消えていってしまわないようにと、Dennisの息子で、自身もミュージシャンのPaolo Garciaがリリースしたトリビュートアルバムが、この『Muling Kagat』。タイトルはタガログ語で「もうひとつの味」を表わす。Hotdogの最初のレコードのタイトルが『Unang Kagat』(「最初の味」の意味)だったところからつけられた。何十年もの間フィリピンの人たちに愛され続けているという、ファンク、ジャズ、ディスコ、ポップ、ロック、サイケ、サルサ、サンバ、ブギー、そして、kundimanと呼ばれるフィリピンミュージックのテイストが混ざり合ったサウンドは、冬のない国から運ばれてきた風のように明るくまろやかで心地良い。それでいて、その中にはどこかせつなさの気配も感じさせる。せつなさのさじ加減は絶妙で、それがこのHotdogの隠し味となって極上のテイストを作り出しているのだろうと思う。

Donor Lens - Midnight Store

夜、帰りに特にこれといって目的はなく立ち寄った本屋やコンビニエンスストアでぼんやりした時間を過ごす。旅行中、滞在先へと帰る途中で開いているお店に入って、見たことがないパッケージが並ぶ棚を眺める。暗い夜の景色の中で光を放つお店にはいつでも安心感と高揚感がある。その光の中に入ると、わずかながらも確実にわいてくるわくわくした気持ちに乗せられて、ついいらないものまで買ってしまうのも常だけれど、あとで「別にいらなかったな」と思うところまでがそのわくわくの中には含まれているのだろう。Donor Lensの『Midnight Store』には、アートワークからしてすでにその空気が漂っている。扉を開けたところにあるのは、よく知っている(知っていた)日常や知らない人しかいないところにぽつんと存在している自分という非日常。深夜のお店には豊かさがあると思う、特に今は。

freetousesounds - Airbus 380 Interior Take Off Landing & Touchdown Sounds

飛行機や電車の中、通り、スーパーマーケット、カフェ、レストラン……さまざまな音が並ぶ「Bandcamp最大のサウンドライブラリー」、freetousesounds。空港のラウンジに座ってみるのもいいし、窓の外に花火が打ち上がっているのもいい。博物館に入ったり、新幹線のホームに立ったり(このほかにも日本で録音されたサウンドもいくつもある)、静かな学校に忍び込んだりすることまでできてしまう。街中だけでなく、海、ジャングル、川や滝などの自然の中もいい。今、部屋の中にいながらにして、好きな場所の音に囲まれる……というのも、ひとつの楽しみ方になるのかもしれない。

Future Memories - Into the Memory

1曲目の美しいハープの音色が閉じていた記憶の扉を開く。そして、誘われるように開いた扉から記憶の中に入っていく。そこに広がっているのは、夏の予感、あの日の期待、かすかな不安、まどろみ…… メディテーションのようなループを聴いていると不思議と心が安らいでくる気がする。心地良いまどろみから目覚めたら、冷たくて甘酸っぱい飲み物でも飲もう。今の時もまた、記憶になる日が必ずくる。

64controll - Sports Club 64

昨年の50 Japanese track maker / musician 201950 Japanese track maker / musician 2019で『JUSCO』を紹介した64controllのニューリリース『Sports Club 64』。“JUSCO”を含む全4曲、期待を裏切らない楽しさのニューディスコEP。ノレる曲、踊れる曲しか入ってないので、これはもう踊るしかない。とにかく楽しく全力でカラダを動かして日々のストレスをちょっと発散するにはうってつけの1枚。「Stay home and listen to this」!

Davide Del Vecchio - Paraiso 2020

ロンドンを拠点とするイタリアのアーティスト、Davide Del Vecchioの『Paraiso 2020』。目が痛くなりそうなほどに空と海の青がまぶしいアートワークとポルトガル語で「楽園」を意味するタイトルがついた曲は、フロアが恋しくなるような、どこかせつなさも少し感じさせるようなダンスチューン。ドリンク片手に踊りつつ楽しめば、それぞれのいる場所がそれぞれの楽園、2020年のParaisoに。

Rainer Trueby - Soulgliding

ドイツのDJ、Rainer Truebyのコンピレーションアルバム『Soulgliding』。タイトルの“Soulgliding”はTruebyの造語で、ソウルフルなレコードをシェアするSNSの小さなグループとして始まった。そこにSoulgliderたちによってポストされる音楽は、jazz、funk、AORなどのいい感じに「グルーヴィング」で「グライディング」な感覚を感じられるもの(bpmにして110くらい)であればなんでもオーケーだったそう。確かに、どの曲をとってもふんわり気持ち良く、ジャケットのイメージそのままに空に浮かぶハンググライダーの浮遊感があったり(ハンググライダーをやったことはないのであくまで雰囲気での話だが)、緊張から解放されてくつろげている時間のような感覚があったりする。中でも、Donna McGheeの“It Ain’t No Big Thing”はきらめく多幸感があふれる最高にグルーヴィングでグライディングな1曲。

SUGURU IIDA - Spring Snow

昨年、レーベルHIHATTから『Rubber Band EP』をリリースしたHajime Iidaの弟、SUGURU IIDAが、同じくHIHATTから今年4月にリリースしたファーストシングル。春の日差しの暖かさとまだ残る雪のひんやりとした冷たさ、どちらをも感じさせるサウンド。一貫して見守るように穏やかなリズムの響きの中に時折はっとするアクセントの瞬間が訪れ、そこには静かな緊張感や疾走感も共存している。今年のリリースはこのシングル1曲のみだったが、これからどういった作品がリリースされていくのかを楽しみにしておこうと思う。もちろん、兄のHajime Iidaの今後のリリースにも期待したい。

Tsudio Studio - Soda Resort Journey

架空の神戸を舞台とした、都合の良いお洒落と恋のストーリーから1年あまり。『Port Island』の恋人たちは少し大人になって旅に出かける。架空の航空会社ソーダ・リゾート・エアライン「らくらく直行便」の「ゆったり快適シート」で「くつろぐ空の旅」へ。「Aランクの南国ムード溢れるバルコニー付きホテル」に滞在し、「壮大な海と空、きれいな白砂のビーチ」でのんびり寝ころんだあと、「潮風のリゾートディナー」に舌鼓を打てば、日々の生活の疲れやうまくいかない恋の痛みも気づけば消えていることでしょう。心地良く優しい癒しの旅、『Soda Resort Journey』へあなたも出かけませんか?

https://youtu.be/QE2OoWzXa1c

さよひめぼう - 深圳DIVA

「アジア全土がひとまとめになってしまったハイテック巨大コロニー」の「地下で鳴り響くハイブリットダンスミュージックの断片」というこのアルバムを聴いていると、映画『エクス・マキナ』で女性アンドロイドが踊るシーンを思い出した。アンドロイドを制作した男性プログラマーが無表情の彼女と楽しげに踊る。ふわっとカラダにいいことばかりやっていたら、そのうち輪郭がほんやりしてきそう。たまにはちょっとカラダに悪いこともしたかったり。人工物に囲まれていても、いい音楽が流れればカラダは自然と動くもの。ここはひとつ、「添加物まみれになって踊り狂って下さい」ということばに素直に従っておこう。

https://soundcloud.com/maltine-record/sets/sayohimebou_shenzhen_diva

Teen Runnings - Hot Air

からりとしていて軽く聴きやすいサウンド、曲のタイトルにも「new」、「dream」、「happy」、「relax」……とポジティヴなワードが並ぶ。未来は前に進むものだと信じて疑わなかったころの空気がそこにはある。それでも熱さはなく、むしろどこか少し冷めている部分も感じる。盛り上がる時間を外側から見ているみたいな、少し不思議な感覚になる。限りなくポジティヴな空気で満たされていた時代は過ぎたとしても、あきらめたようでいてまだあきらめていない何かが、このはじけるようにポップなサウンドの中にはある。………まあややこしいことは考えなくても、オシャレで爽やかなシティボーイのフェイバリットになるアルバムなのは1曲目のイントロですぐにわかるはず。

https://www.youtube.com/watch?v=MHN2UHgVYJ0

パソコン音楽クラブ - Night Flow

終わりのない白昼夢のようだった昨年の『DREAM WALK』に続いて、今年リリースされた『Night Flow』には夜から夜が明ける前の感覚が描かれている。子どもでも夜中まで起きていることが許されていた大みそかも、大人になってからの夜遊びも、夜遅くまで起きていることにはどこかわくわくするものがある。夜の闇は色々なものを覆い、時に都合の悪いものを隠してくれたりもする。夜が明けるのがおしいような気がすることも少なくないけれど、夜明けはどんな人にも(動物にも)等しくやってくるし、非日常の時間が明けるとそこには日常が訪れる。明るくなれば嫌が応にも多少は前を向かなければならない気持ちにも自然となる。そして夜がくるとまた。

https://www.youtube.com/watch?v=30kmoqeb7MQ&feature=youtu.be