By Yusuke Shono
画家の田中一村は、1958年に奄美大島に移住し、亡くなるまで孤立した環境で自身の芸術に専念していたという。2018年に奄美大島を訪れた梅沢秀樹は、彼の閉鎖された生活をテーマに映像イスタレーションを制作し、彼の心のエコロジーを再現するため、そこで多くの自然音を録音した。この作品は奄美大島を訪れたことのないAndrew Peklerが、その録音された自然の音をもとに奄美大島の夢の光景を映し出すという試みを行うという、二人の共作作品である。Andrew Peklerが文化人類学者のStefanie Kiwi Menrathと立ち上げた共同プロジェクト「Phantom Islands」にも通じる試みでもある。他者への想像力がそうであるように、音の喚起する力は、歴史の間にある断絶を架構する。しかし、その生命に満ちたサウンドは、奄美大島だけでなく、どこか知らない場所へもわたしたちを誘いこむだろう。音の中を反響するように、想像の中で反射して浮かび上がるどこでもない光景。それは過去でも、未来でもない。それが彼が「亡霊」と呼ぶものなのかもしれない。