By Yusuke Shono
韓国出身、大阪在住のラッパーMoment Joonの1stアルバム。本人をとりまくさまざまな出来事を描く独白のような作品から、ストーリー仕立てになったスリリングな作品まで、そこにはラップに対する目まぐるしいほどの創造的なアイデアが込められている。出自や独自の立ち位置がクローズアップされがちだが、エンターテインメントとしての側面も十分に強い。ラップというフォーマットの多様な可能性のみごとな結実を存分に味あわせてくれる。もちろん外国人差別をはじめとした醜い現実を巻き込み、ラップという遊びを繰り広げ表現へと昇華していくその手際は鮮やかで、痛快。そのような痛快な思いをさせてくれるヒーローのような存在が、ラッパーの一側面であったことも思い出させてくれる。虚構と現実の関係をひっくり返す、そんな鋭角なヒップホップこそ、今聴きたい作品かもしれない。