By Yusuke Shono
ベルリンをベースに活動するMidori Hiranoによる、ピアノの演奏を主体とした作品。ミニマルでアコースティックな音色は耳なれたものだけど、その背後には、張り詰めた透明な音の響きに、かすかに重ねられたテクスチャーが生み出す幻想的な奥行きがある。細やかなテクスチャーが次々と生み出す光景に耳を澄ましていると、どこか知らない国を漂う香りを嗅いだような、音の幻想にいつの間にか没入してしまう。荒ぶる心も平静にしてくれる、柔らかで、繊細な音の連なり。そんな古典的な感触の奥に、静かに広がる豊かなサウンドスケープ。和やかな響きの奥に、密やかな現代性を感じさせてくれる作品。