By Yusuke Shono
Primordial Voidからリリースされた「Eye Cavity」やNicolòと共同制作したアンビエントアルバム「Desolation」など、今年だけでもかなり多くのリリースを行っているemamouseの作品群の中で、今年はよりシンプルでアコースティックな感触を持つ本作品の印象が強く残っている。不器用に爪弾かれる感情の古い箇所に触れてくるようなメロディは、ときにおかしみを湛えて、ときに物憂げにも感じられる。“Denpa song”といいう形容では、その作品の持つ魅力は一部しか伝わらないだろう。風変わりなそのスタイルの奥には、古い童話にあるようなミステリアスなフィーリングや、聴くもの者は常に不安と安心の間に置く、微細に揺れ動く感情がある。たしかにそれは未知の感覚であり、わたしたちはその身に覚えのない懐かしさを自分自身の感情の中に発掘しているのかもしれない。