「架空の神戸」というのがこのアルバムのテーマを伝えることば。まずそのことばにひかれて、期待をして、それから、そこに少しの不安が混ざってきた。なにごとにも過度な期待はしない、いつしかそんなくせがついてしまっていても、期待と違っていたらやっぱり悲しい。でも、不安は必要なかった。ほんとうに「不況も震災も悲惨な事件なんて無かった都合の良いお洒落と恋の」キラキラした神戸そのものだった。そこには柔らかく光を放つようなことばがのせられている(歌詞はSoundCloudで読むことができる)。苦しみや悲しみさえもまぶしい日常の一部。そういう架空の世界だから、このアルバムを聴くと幸せな気持ちになれるのだろう。そう思っていた。けれど、それは少し違っていた、いや、違ってきた。「架空の神戸」がくれた幸福感は架空ではなく、確かにここにある。そして、そんな「架空の神戸」へと連れていってくれた彼は、次はどんなところへ私たちを連れていってくれるのだろう? そう思えることもまた幸せなのだから。