By Yusuke Shono
マンスリーでは「ARU OTOKO NO DENSETSU」を取り上げたのだけど、個人的には〈Palto Flats〉からリリースされたこちらも押したい。「ARU OTOKO NO DENSETSU」がさまざまな試みを詰め込んだ実験作だとしたら、「Moriyama」は包容力で聴く者を包み込む安心感をまとった聴き心地のある作品。もちろんほかの何者でもないいつものぶっ飛んだ食品まつり節であるのだが、そのスタイルはより洗練度を増して、その独自性を確固たる領域として出現させている。ファンタジックな架空性を纏っていたテクスチャーの現代味やリズムのなかにある歴史性がリアルさを獲得して、わたしたちの持っていた音楽の概念を上書きするような、普遍的な確からしさを獲得したかのような。何時も常に軽やかで、ミニマルな要素にも、森の生態系のような複雑性や彩りが広がっている。彼の音楽性の持つその豊かさの中には、いつでも明るい未来を感じることができる。