By Yusuke Shono
Howie Leeは、これまで国境を超えてあらゆる感覚が均質化していいく流れに対抗し、時間や地理における差異を融合するのではなく、対立させることで新しい世界を創造することを試みてきた。それは北京という場所から導かれた必然的な応答のような気もするし、アジアという場所が今持つ可能性の最も明晰な例であるとも思う。4年ぶりとなる本作のタイトルは無慈悲な神の視線を表す、老子の言葉「天地不仁」から取られたものだという。中国の伝統的な楽器と実験的でエレクトロニックなサウンドの融合は更に推し進められ洗練されている。しなやかで優しく響きの中のそのなかにさまざまな感情が折り重なるように溶けていく。都市文化から離れた場所から生み出されるような緩やかな時間感覚を持つそのサウンドの作り出す緊張と抑揚は、自然と人工、ローカルとグローバル、西洋と東洋、そして過去と未来といった、多様な相克を含んでいる。未視感の中にある懐かしさに身を委ねれば、そこにある豊かで新鮮な感覚を楽しむことができるだろう。