Nicolas Jaarがその名義で2枚の独創的なアルバムをリリースしている他方、〈Wolf+Lamb Music〉などからエディット集などのよりフロア向けのハウス・ミュージックのリリースを重ねてきたことは特にDJにはよく知られていると思う。そんな彼が突然、別名義のA.A.L (Against All Logic)で製作した2012年から2017年までの作品をコンパイルしたアルバムをリリースした。本アルバムの楽曲どれもがハウス・ミュージックやソウル、そしてファンクの要素を詰め込んだ(繋げた)ような上質のエディットではあるが、1曲の数分の中で生のミックスが行われているような音の差し引きや展開を楽しむことができる。またグルーヴが颯爽でありつつも奇妙に繋げられたようなポイントもあり,まるでターンデーブルの上でのレコードが滑った時のようなノイズのようにも聴こえる。躍らせることだけを考えた(リ)エディットものとは異なるオリジナリティを授ける大きな効果を持っている。単なる音の抜き差しではなく、奇妙でありあたかも計算されていないようなどこか生々しい感触がある。突然のリリースかつ別名義とあっては、Nicholas Jaarの作品ということに気づかれずに埋もれてしまう可能性もあるが、躍らせるための論理に対抗するような奇妙かつ生々しい感触を与えられる面白さを聞きのがしては勿体ないだろう。「考えずに踊れ」というメッセージではなく、「こんな音楽であれば踊らせられるだろう」といった安いロジックへの生々しくもエレガントな反抗である。別の論理がここにある。