By Yusuke Shono
シカゴを拠点に活動するAngel MarcloidことFire-Toolzは10年ほど前から、幻視的な電子音響の創造を追求してきた。Vaporwaveのシーンともクロスしながら、そのスタイルは抽象性を帯びた、未来主義的なダンスミュージックといえるもの。とにかく明るいユートピア的な幻想性に貫かれた本作は、あらゆる種類の音楽の断片が入り交じりながら疾走していく。ポストモダン的な混乱を突き破るような痛快なビート。それが作り出す鮮明な音像は、聴くものを高揚と朗らかなカタルシスへと導いていく。押さえきれない感情と才気がほとばしる、怪作。