By Yusuke Shono
〈Orange Milk〉主宰のSeth Grahamのツアーに帯同し、日本のオーディエンスをその特異なアンビエント空間で包み込んだNico Niquo。友人のju caとCorinがスタートさせた新しいレーベル〈Daisart〉から発売された、彼の作曲とアンビエントミュージックの進化について書かれた書籍付きの新作レコードである。フィーチャーされているサックスは幼馴染だというJared Backerによるもの。ECMレコードなどのジャズに影響を受けたという楽曲は、ジャズの手法をアンビエントミュージックの文脈から昇華したような、ユニークな内容。鉱石のように硬質で、繊細な緊張感のある響きに貫かれている。眩しいほど澄んだ厳かな美を作り出している音の佇まいは、この世のどこからも隔絶された世界をくっきりと浮かび上がらせる。そこに流れる特異な時間感覚の持つ圧倒的な贅沢さは、おそらく現代のアンビエントミュージックの最良の成果といえるだろう。その作品の背景は、AVYSSマガジンによるNico Niquoのインタビューで詳しく知ることができる。