〈Quantum Natives〉より、台湾在住のアーティストswiʌelized souηdsの「port / land」がフリーDLにてリリース。叙情的な光景の底にある、ひやりとした感触。

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swiʌelized souηdsは88年からサイケデリックなサウンドを制作し続けている、オハイオ生まれで台湾在住のアーティスト。「port / land」はボーカルを中心とした「portraits」、そしてインストルメンタルからなる「landscapes」の2つのパートから構成されたアルバムです。

ダウンロードはこちらより。

http://www.mediafire.com/file/vmxsi503t7sslts/swivelized+sounds+-+port_land+%28QNR007%29-.rar

金属的な振動音を含んだ独特ボーカルが、幻のようにその景色の間に現れては消えていくサイケデリックでフォーキーな側面を見せる「portraits」。禅のような静けさを湛えた繊細な音の破片が、ノイズの織物の中に叙情的な光景を描き出していく「landscapes」。叙情的な音響の奥には不思議な懐かしさを感じさせる世界観があり、作り込まれた温かみのあるテクスチャーが独特の雰囲気を作り出しています。異世界のラジオを受信してしまったような、美しくもどこかひやりとした感触が残るアルバム。

イントロとなる楽曲「go where」の360度ビデオは〈Quantum Natives〉メンバーのAwe IXによるもの。台北の遺跡の中をアーティストとともに撮影したものだそう。

swiʌelized souηds
https://swivelizedsounds.bandcamp.com

portraits
1.go where
2.the new noise
3.underneath you
4.go do
5.bowl jumpr
6.penny for a needle

landscapes
1.un.now
2.took a powder
3.you can not change your mind
4.whispers of red
5.can i see the peoples

Vaporwave×VR。360度ミュージックビデオが見せるVaporwaveの新たな進化の方向性

MASSAGE /

11月14日、seihoのアルバム「collapse」より「Peach and Pomegranate」の360度のミュージックビデオが公開されました。

Matthewdavid主宰のLEAVING RECORDSからLPレコードとしても発売された「collapse」ですが、水の滴る音や絶妙に変化するノイズが組み合わさった実験的な一枚です。音圧が増幅してから転調するダンスミュージックらしい曲調の中、音と音の間の空白、鳴り響くカウベル、艶やかな女性の声。Electronica、ジャズ、IDM、Acid、Vaporwaveといったさまざまなジャンルの音楽がミックスされていると感じます。

seiho, Peach and Pomegranate

調べてみたところ2015年の5月ぐらいからYoutube上には360度のVRミュージックビデオが登場していて、IDM系のアーティストではSquarepusherが「Stor Eiglass」のMVを公開しています。アイドルやバンドも360度ミュージックビデオを公開していますが、今回はVaporwaveのVR、360度のミュージックビデオをご紹介したいと思います。

360度見渡すことができる動画ですのでPC環境か、スマートデバイスからは動画右下のアイコンからYoutubeアプリでご覧になるのをオススメします。

WHEREAREYOU Feat. FrankJavCee’s VaporTrap (360 VR) 4k 60FPS

この曲を構成しているPCの起動音やアラート音などは、だれもが一度は聞いたことがあるサウンド。背景にはWindowsのロゴやエラー画面、メーラーなどのアプリケーションのアイコンが飛び交い、ほとんどの音とビジュアルが既成のオブジェクトによって構成されていることが分かります。空間を感じるキック、細かく刻まれるハイハットやサンプルの連打、アナログなパッドが遠い場所で鳴り響き、その緩急は異次元へのトリップを誘う陶酔感を呼び起こします。既成のオブジェクトをサンプリングして、新しいものを創造するVaporwaveの特徴が表現された作品なのではないでしょうか。

#dicksoutforharambe: Legends Never Die – Harambe tribute (360/VR Video) 4K 60FPS

「dicks out for harambe」という危なげな曲名ですが、Harambeとは2016年5月にアメリカのオハイオ州で射殺されてしまったゴリラのこと。徐々に聴こえてくるシンセリードのアルペジオがアシッドのように蠢き、キックの裏で鳴るパッドにより、独特のグルーヴが生まれています。振り返ると彼の写真(思い出)は消えていますが、それは歴史の儚さを表しているかもしれません。

Bengfang – Never Ends (Official 360 VR Music Video)

この曲の中で出てくる「奔放」の意味は「常識や規範にとらわれないで、自分の思うままに振る舞うこと」で、そのタイトルからも彼の音楽性を感じることができる。映像は建造物の中から、サイケデリックな背景の空間へと変化していき、#dicksoutforharambeのMV同様、視点は次々と新しいシーンへと突入していく。バンドの360度MVビデオの視点は固定されたものが多いですが、Vaporwaveの360度MVにおいて視点は移動していくものが多い。刻々と変容していくインターネットカルチャーを表現しているのでしょうか。

今回紹介したものはあくまでも一部分で、いつなくなるかもわからない蒸気(Vapor)のようなもの。2015年10月ぐらいからはVaporwaveと並行してSIMPSONWAVEがインターネット上の掲示板にアップされはじめ、その作り方までアップされています。

Guide to Simpsonwave from simpsonswave

Guide to Simpsonwave

Vaporwaveというインターネット上に散開した掴みどころのないカルチャーは、VRの導入で、その世界観にさらなる広がりと深みが加わったように思います。今後もビジュアルと音楽両面で私たちを楽しませてくれるのではないでしょうか。

(Text: 小松塚悠太)

メキシコ発のヴァーチャルギャラリー、VNGRAVITYが新しい展示のための資金をKickstarterで募集中。

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メキシコ発のヴァーチャルギャラリーを発見したので紹介したいと思います。その名も「VNGRAVITY」。運営しているのはSalvador LozaGibrann MorgadoAlfredo Martinez、いずれもアーティストの3人です。

アーティストはこのプロジェクトのためにオリジナルの作品を制作。展示物はVRやAR、映像、GIF、インスタレーション、デジタル彫刻などさまざまなフォーマットにわたり、すでに50以上のアーティストが世界中から参加している。現在は「DREAMHOUSE」というタイトルの展示がアプリのダウンロード、あるいはブラウザを介して視聴することができます。

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VNGRAVITY Exhibition, “DREAMHOUSE”

彼らがオンラインギャラリーで提唱しているのは、場所の物理性から脱却するということ。それは観客が居住地に関係なく訪れられるということだけではなく、物理的な制約にとらわれない展示フォーマットを探求し、提示するということでもあります。

VNGRAVITYはまたUSBフォーマットで作品を販売しており、コマーシャルなオンラインギャラリーとしての側面も持っています。アーティストのことをより多くの人々に知ってもらい、これまで流通してこなかった映像やGIFなどのデジタルイメージの販売を民主化したいという意図から、彼らはけして裕福なコレクターを探しているわけではないといっています。

今回の資金の調達にあたって、「ECOSYSTEMS」「Aeon Debris」「Aeon Diverse」というタイトルからなる3つの展示プランが提示されている。どんな展示なのか解説を読んでも正直あまり分からないのですが、そんなこなれてない部分もこの領域の面白い要素だと思うんですよね。冒険心のある方、新しい展示の可能性の創造の一端に参加してみてはいかがでしょうか。

https://www.kickstarter.com/projects/2006686514/vngravity-a-virtual-gallery
http://www.vngravity.com

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若手作家が集う異色の展示が11月26日よりスタート。「眺めのよい部屋」が映し出す夢の国の光景とは。

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「眺めのよい部屋」とはいわずもがな国立近代美術館にある同名の部屋からつけられたタイトル。美術館の一角にある本当に眺めのよいその部屋から映し出される光景はとても奇妙で、時間の静止したよう見えるその漠とした様子は、どこかこの日本そのものを象徴しているような感じを受けます。

本展はその「眺めのよい部屋」を、芸術鑑賞という行為への問いかけとして、展示の形で再構成することを意図するものです。そのため、本展では展示会場自体には入場することができません。鑑賞者は展示室に通ずる1つの窓から見える光景を、鑑賞するという形となります。

参加作家は同世代の若手たち。その共通点は、消費されるためのイメージが氾濫するGUIネイティヴの時代にあって、改めてイメージを作り出すことを問い直すというアティチュードにあると思います。

そこで導入された方法が「俯瞰」という鑑賞方法なわけですが、おそらくそれは作品自体ではなく、作品を含んだ空間、それがある風景そのものを作品化しようという試みであると想像します。それが、この日本の風景自体を作品として描き出す本家の「眺めのよい部屋」(実際にはただの休憩室ですが)に繋がってくるわけです。しかしそれがはたして本当に既存の芸術鑑賞の形式を更新することになるのか、この段階では未知数だと感じます。

メディアの進化は私たち自身のものの見方自体を変化させてきました。けれども今美術という空間の「遅さ」と、デジタルな領域におけるテクノロジーの進化の「速さ」の間にある隔たりも大きくなりつつある気がします。また一方で、その差異によって引き起こされる衝突の結果、火花のように新たな作品や概念が生み出されつつあるともいえるでしょう。

それがふたたび長いスパンを持った歴史の目で問いなされるとき、どのような姿に見えるのでしょうか。美術を志す若者たちの目を通して、それを確かめてみたいという気がしました。

出展作家/森田貴之、鷲尾怜、森野大地、石毛健太、布施琳太郎
企画/森田貴之、メインビジュアル/hakke
日時/11月26日(土) – 12月3日(土) ※日曜日は休み AM11:00~PM19:00
最終日12月3日17:00からレセプションを行う予定です。
会場/ターナーギャラリー 1階
〒171-0052 東京都豊島区南長崎6-1-3 都営地下鉄大江戸線 落合南長崎駅 A2出口より徒歩10分 西武池袋線 東長崎駅 南口より徒歩8分

http://nagameno-yoi-heya.tumblr.com/

「ゴンドラから夢の国を俯瞰する」とは何か。
それは、簡単に言えば、「現実のような虚構」を「現実」から見るということです。夢の国をゴンドラから俯瞰することは、現実の中から「虚構」を見ることになります。しかし、例えば、夢の国にいる時は、それを現実だと思い込みます。それはなぜでしょうか。夢の国が、強力な物語を作り出しているからです。「テーマ」や「物語」の装飾が、訪れた人を没入させる空間にしているのです。そして、その没入を助けているのは、俯瞰の視点を排除している点です。夢の国には遊園地にあるはずの観覧車がありません。しかし、夢の国が徹底して排除した俯瞰の視点が、2キロ先の場所に存在しているのです。夢の国の「内部」にいる人は、いまここを「虚構のような現実」として実感しますが、「外部」から夢の国を覗いた人は、いまあの場所を「現実のような虚構」として感じられるはずです。私たちの作品はテーマパークのアトラクションのように配置されます。作品は「内部」にあり、私達は「外部」からそれを覗きます。「眺めのよい部屋」から見る風景は、どんなリアリティをもたらすのでしょうか。

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森田貴之 「夏に僕の町に東京ができる。」(2014)

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鷲尾怜 「私はこの桶をAmazonで購入した」(2016)

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森野大地 「爪を切る夜」(2016)

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石毛健太 「Seven days without water make one week(weak)」(2016)

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布施琳太郎 「不誠実な声帯」(2016)

Carl Burtonによる初のゲーム作品「ISLANDS: Non-Places」。輪郭を失った世界で浮かび上がる無意識のザワつき。

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ニューヨークを拠点に置くアーティスト、アニメーターであるCarl Burtonによる初のゲーム作品「ISLANDS: Non-Places」がリリースされました。

ユーザーが旅するのは、絵画のようにワントーンの色彩で描かれた日常の風景。どこにでもあるその事物の間をユーザーはシンプルな操作を行って移動していきます。淡々と繰り広げられる不思議な出来事を白昼夢を彷徨うように旅する、超現実的なロードムービーのようなゲームです。

ユーザーは制約された操作の中で先へ進む方法を見つけなくてはなりません。そのストイックな操作性は、David O’Rillyのゲーム「Mountain」を思い起こさせますが、「ISLANDS: Non-Places」の独自な点は、映画のワンシーンに迷い込んだようなそのムードにあるといって良いと思います。オブジェクトは霧がかった世界に溶け込むように存在しており、明確な輪郭を失っています。そこで引き起こされる出来事は、その絵のスタイルと同じようにどのようなストーリーも明確には描きませんが、それが逆にデビッドリンチの脚本のように無意識に語りかけてくるような効果を生み出しています。

このユーザーを拒絶するような感覚は、本人も影響を受けたと明言している名作ゲーム「Myst」の、さまざまなことを試みていくうちに世界の奥深くに誘われていく、あの孤独感と中毒性を思い起こさせます。

インディペンデントゲームのシーンが新しい表現の場になって久しいですが、David O’Rillyに匹敵するようなヴィジュアルの独自性に加え、ゲームのあたらしい体験を創造したという意味で、「ISLANDS: Non-Places」はアートとしてのゲーム史に刻まれる作品になるに違いありません。

SteamApp Storeなどで購入可能。

Carl Burtonのほかの作品もとても良いです。
http://carlburton.io/#_=_

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Hatraとnukemeによる新ブランドOkayが発足。先月開催された展示会の様子をレポート。日常を反転させるエレガンス。

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ファッションブランドHatraと、ファッションデザイナー/アーティストのnukemeによる新ブランドOkayが発足しました。先月開催された展示会に行ってきたので、その様子をレポートしてみたいと思います。

Hatraは長見佳祐により2010年立ち上げられたユニセックスのウェアレーベル。ブランドの顔とも言える、スエットの素材感とゆったりめで未来的なシルエットのフードウェアが特徴的で、カオス*ラウンジなどさまざまなアーティストとのコラボレーションを行うなど、単なるファッションという枠組みにとどまらない活動を行ってきました。

そのHatraが同じくファッションデザイナーであり、アーティストのnukemeとタッグを組んで発足させたのが新ブランドの「Okay」です。

アーティストと名乗るようになってnukemeくんの活動もどんどん拡張してきており、単体の記事で紹介しきるのが難しいほどですが、彼の作品の代表となるのは、(ヌケメ帽を除くとしたら)やはりイメージやデータを破壊する「グリッチ」を取り入れた洋服たちということになると思います。

手法が注目されてしまうとどうしても「グリッチをやる人」という認識がつきまとってしまうと思いますが、もっと重要なものが彼の世界に対するその「接し方」にある気がします。

グリッチはものごとの成り立ちに近い部分にほんの少し手を加えただけで、世界がまったく異る見え方になることを教えてくれました。そういう種類の操作は、手法というよりも、アーティストたちが普段行っているもっとも普遍的な所作のようなもののように思えます。ucnvさんの一連の作品もそうですし、グリッチを使用していないnukemeくんの作品の流れにも、それがとてもくっきりと表れています。だから彼が最近アーティストを名乗るようになったのもの、その延長で考えるととても頷けるのですね。

その彼がいよいよ本格的なブランドに携わっているというので、とても楽しみにしていたのです。

結論から言えば、その内容は予想を超えた素晴らしさでした。

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個人的にもっとも印象に残った一着。ストッキングを用いたという生地が特徴的で、装飾のように用いられているのはシリコンコーティングが施された艶のあるパイピングテープ。素材自体の湾曲がゴージャスなドレープを生み出しています。色展開として、ベージュと赤があります。

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こちらはソックスですが、元になっているのはなんと懐かしのルーズソックス。既製品を染めたそうですが色が変化するだけでアイテムの印象がここまで変わってしまうのかという衝撃が走りました。濃紺とカラシ色の2色展開。

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アクセサリーは日本の伝統文化「鍵っ子」からインスパイアされたという鍵の束を留める金具。白シャツは特徴的な細いファスナーは、ドレスなどの後ろを留めるために用いられるコンシールファスナーと呼ばれるファスナー。ポケットの位置が変わっていますが、手を入れるとこの写真のようなポーズになることを意識して作られているそう。何がしかを抱きしめようとしているような感じになりますね。

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グリッチの雰囲気が残っているのがもしかしたらこのアイテムかもしれません。規則的にハサミを入れて独特のパターンを作り出しています。切り込みの仕方が、どことなく七夕の折り紙を切って作る飾りを思い起こしました。

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非売品だそうですが、大人気だったスリッパ。旅館にあるようなふつうのものだそう。

このスリッパに象徴的に現れていると思いますが、僕らが普段目にしている気にも留めていないようなもの、そういうものってハイファッションの目から見ると、これまではダサいものに分類されてしまうものだったと思います。そのダサいものが反転しておしゃれになる時、そこにはささやかだけれど新鮮な驚きが生まれます。Okayは、その最もよい見本を示してくれた展示だと思いました。

最後に、ブランド名「Okay」について。そのネーミングにはささやかな前向きな感情に加え、どこかなげやりな肯定感を感じました。ポジティブに生きるのが難しいこの時代にあって、そこに彼らの時代感や空気感が表現されているような気がしました。

OKAY Collection “NEW DAYS”
Photo: Mayumi Hosokura, Model: Mijika NAGAI, Hair and Make: Yosuke Toyoda

http://houseofokay.jp

ロンドンのクラブ・シーンを牽引し、進化させてきたナイトクラブfabricを救うための111曲収録のコンピレーションがリリース #savefabric

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ロンドンのクラブ・シーンを牽引してきたナイトクラブ、fabricを救うためのコンピレーションが先日リリースされました。

fabricはさまざまな文化をハイブリッドし、進化させてきたロンドンという都市を象徴するようなナイトクラブ。しかし、今年始めにクラブ内で10代の少年がドラッグにより亡くなるという事故が起きたことをきっかけに、営業ライセンスが停止され、1999年の開店以来17年に渡る歴史に一旦幕を下ろしている状況です。

警察から「ドラッグの温床」と呼ばれてしまっている現在の状況に対して、fabricはセキュリティー体制の見直しなどを行いながら、“Save fabric”の看板をクラブの玄関に掲げ、閉店という事態の見直しを図るためのメッセージを発信。今後のアクションのための費用を捻出するため、募金や支援のためのグッズを販売するなどさまざまな活動を展開してきました。

さらに、外部メディアやアーティスト、そしてクラブ・ミュージックを愛する多くの人々からの支援も始まりました。たとえば、fabricの閉店をきっかけに現在のクラブ・カルチャーについての討論会を催したり、Clams Casinoのようなアーティストはフリーで音源を配付。また、ある青年は24時間耐久で踊り続け寄付を呼び掛けるなど、有名無名、規模の大小を問わずに様々なアクションが展開されています。

そのほか、これまでの活動と現在の状況については#savefabricのハッシュタグを追うことで確認することができますが、上述したfabricへの寄付は9月末までに£300,000(日本円換算でおよそ4500万円)にも上ります。

今回リリースされたコンピレーションは義援金を募る活動の一環であると同時に、これまでfabricを支え、またfabricに支えられてきたイギリスに留まらずヨーロッパ、そして世界のエレクトロニック・ミュージックのアーティストたちからの「恩返し」とも言えるものとなっています。

コンピレーションには様々なジャンルで影響力をもつアーティストによる新曲や未発表曲などが合計111曲も収録。提供しているアーティストを見れば、先に述べたようにfabricがジャンルを横断しながらエレクトロニック・ミュージック全体の進化にとって如何に重要な場所であったかがわかるでしょう。

たとえばµ-ZiqやClarkといった電子音楽のレフトフィールドからダンスフロアを繋いできたアーティストがいる一方、SkreamやRuskoといったダブステップの黎明期からシーンを膨らませてきた立役者、またロンドンのベース・ミュージックにおける現在のトップランナーの1人であるPalemanなども顔を並べています。他にもレイブカルチャーの再興を牽引するSpecial Request、最先端のUKガラージを鳴らすtqdなど、イギリスのクラブ・カルチャーの長い歴史を象徴するような人選です。もちろん、イギリス以外からもRoman Flügel やMachinedrum、FiSなど様々な国、ジャンルから楽曲提供がなされています。

大型のクラブであるfabricの内部は3つの「ROOM」というフロアで構成され、一晩で3つの異なるパーティーが共存できます。多岐にわたるジャンルを牽引するアーティストやレーベルがそれぞれのROOMでフロアを沸かせることで、音楽はさらにハイブリットなものへ、そしてシーンはますます大きくなっていきました。つまり、fabricは多くのシーンにとって「ゆりかご」のような場所と言えます。fabricがどれほど大きな存在だったのかをコンピレーションに収められた111曲を聴く事により鮮明に理解できるのではないでしょうか。

Fabricという1つのクラブを救うためだけでなく、この先の全てのエレクトロニック・ミュージックの発展のためにも、更なる支援と注目が必要とされています。まずは一聴を。そして希望を繋ぐためにも是非、サポートを。

本コンピレーションのリリースに際してのfabricによる声明

fabricの閉店は、援助への15万筆以上の署名から我々の法的な戦いを支援する30万ポンド以上の義援金に至るまでの、完璧なまでに控えめでありつつも圧倒的なリアクションを引き起こしました。支援は、抑圧され営業停止とされている数多くの異なる会場にて義援金を募るイベントとともに、さまざまな方面から集っています。この反応は完璧なまでに、電子音楽のコミュニティが示す全てを要約したものです。

〈Fabric Records〉と アーティスト主導レーベルである〈Houndstooth〉はともに、このような魂を埋め込むことになる作品のリリースは我々のコミュニティがもつ集団としての力を示す、さらに強力な方法であると決意しました。我々は上記2つのレーベルと親交のあるアーティストに、素早く行動することが必要であり、合計たった3週間の〆切で始めからマスターを仕上げるまで頼みながら、我々の運動のために1トラックを提供してもらえるように依頼しました。その要点とは、我々に新曲か古いクラシック・トラックの別バージョンを未発表曲として提供してもらいたいというシンプルなものです。

驚異的な楽曲を届けてくれたアーティストたちの陣立てを含め、我々からの依頼への返事は期待をはるかに上回るものでした。この寛大さを考慮し,最終的に適した順番にすることを意図して、アルファベット順にして提供された全ての楽曲がこのリリースに含まれています。

ツアーや時間的制約のため、実際にはさらに多くのアーティストが関わっていただけたでしょうし、寛大にも所属アーティストに楽曲の提供を許可していただいたすべてのレーベルには、いくら感謝を捧げても十分ではありません。

プレイリストの時代において、このコンピレーションは実験的冒険という電子音楽の周縁からダンスフロアに対応したものまで、電子音楽の包括的な要約を表すものです。

Fabricの長期的な将来を左右するであろう裁判の日を前に、このコンピレーションをこの瞬間のドキュメントとしてだけでなく、fabricの全てを完全に体現し,表すものとして我々は発表したく思います。

(Text: 中村繁)

Interview with Visible Cloaks

日本のニューエイジを通過した、新しいアンビエント・ミュージックの姿。
Dip in the Poolとの共作「Valve」からみえてくる、その音楽愛と試みとは

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MASSAGE / Text: Kazunori Toganoki

ポートランド在住、Spencer DとRyanの二人によるVisible Cloaksが先月ブルックリンの〈Rvng Intl〉から二曲入りシングル「Valve」を発表した。2014年に出たファースト・アルバム「Visible Cloaks」ではヴァリエーション豊かで丸みのある電子音楽を聞かせてくれた彼らであったが、今回の作品ではかねてからファンであったという甲田益也子と木村達司による日本人デュオ、Dip in the Poolとの共同制作に挑戦している。甲田の特徴的な日本語の歌詞に呼応するように振動とビブラフォンが沸き起こり、いくつかの環境音、フラットなシンセ音がそれを包んでいく。音と音はぶつかり合うようでいて、ゆるやかなテンポのもとにひとつに溶解しあい、奇妙な「調和」を生み出している。Brenna Murphyによる、美しい彩色とデジタルの立体性が印象的なジャケットワークも、彼らの音楽性を見事に視覚化し、その調和に加担する。今回の作品に応じて発表されたヴァーチャルメディアソフトをインストールすれば、このジャケット内の空間を自由に動き回ることができ、より「Valve」を多次元で楽しむことができるので、チェックしてみてほしい。

全体を通して見受けられる「調和」のどこかに、私たちは日本的な何かを嗅ぎ取ることができるが、メンバーのSpencerは自身の音楽制作に大きく日本の音楽から影響を受けたと公言しており、レコード・コレクターでもある彼の知識はとても豊富だ。数年前には80年から86年まで限定のジャパニーズ電子音楽/アンビエントのミックスアルバム「Fairlights, Mallests, and Bamboo」を発表しており、これまで開拓されることのなかった、未知で、異国の「ニューエイジ」の存在を人々に知らしめた。西欧の人間だけではなく、当の我々にとっても刺激になるような曲ばかりなので、ぜひダウンロードして聴いてほしい。

彼らの音楽に胚胎する、深い日本のニューエイジへの造詣と、それらをリヴァイズさせた新しいアンビエント・ミュージックの在り方、そして現在のポートランドについて、メンバーのSpencer Dに訊いてみた。

Valve / Valve (Revisited) by Visible Cloaks

Visible Cloaksはどのように結成されたのでしょうか? それまで異なる名義で活動はしていましたか?
はじめはソロ名義として“Cloaks”として活動していたのが途中で“Neon Cloaks”になり、メンバーにEternal TapestryのRyanが入ったタイミングで“Visible Cloaks”という今の名前になったよ。Cloaks/Neon Cloaksをやっていた時は、結構な量の作品をリリースしたんだけれど、全てEasel Recordsという日本のレーベルからのみリリースされていて、アメリカでは手に入らないんだ。きっと探せばすぐ見つかると思うよ。

「Valve」は最近アムステルダムのレーベル「Music From Memory」から12インチシングルがリイシューされ、話題を呼んだ日本人デュオのDip In the Poolとのコラボレーション作品です。このプロジェクトがどのように始まったのか、教えて下さい。
うーん、話すと少々ややこしくなるんだけれど、僕たちが最初Dip in the PoolのMiyako Kodaのヴォイスを彼女のソロアルバム「Jupitar」からサンプリングしていた時、〈RVNG〉のマットがもう一人のメンバーである木村達司とあるプロジェクトで関わりがあって、僕たちの代わりにサンプリングの使用を許諾してもらったんだ。そうするとマットは単なるサンプリングだけでなくて、一緒に彼らと曲を作らないか、とアイディアを出してきて、そのおかげで僕と達司の間で、メール上のファイル交換を通しての作品作りが始まったのさ。益也子はそこに新しい歌詞とヴォーカルをのせてくれたよ。

この作品にはアンビエント・ミュージックと日本的な美学の調和が感じられるように思います。どのようなアイディアがあなたの頭にありましたか?
「Valve」は日本語と英語という二つの言語を用いながら、それらをMIDIへと落とし込んだ一連の実験作品のひとつなんだ。なだらかな展開と余白を含んだメロディーは、益也子の豊かな声のリズムから来ている。そこにペンタトニックスケールを使うことで、複合的に組みあわされたサウンドが生まれるんだ。音色に関しては、日本の音楽、とりわけ小野誠彦(清水靖晃や吉村弘、そしてDip in the Poolらを手がけている!)がミックスしている作品に影響を受けているね。輪郭を鮮やかに浮かび上がらせるような音像と、彼の録音物が持つような立体感、奥行に近づけようとした。

Brenna Murphyが手がけたデザインが素晴らしいですね。不思議と音楽にリンクしているような気もします。何かヴィジュアル面において担当した彼女に注文したことはありますか?
ただ僕の思ったいくつかのことだけ聞いてこれを描いてくれたんだ。明確な指示はしていないよ。彼女とはもう何年も共に作品を制作していたから、お互いの気持ちが自然と伝わっているのかもしれないね。

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使っている楽器を教えてください。
だいたいはPCで、そこにいくつかシンセとビブラフォンを足すぐらいかな、相方のRyanはYAMAHAの楽器のコントロール用にWX11を使っている。

あなたは日本の音楽、中でも清水靖晃や吉村弘、細野晴臣らといったニューエイジのアーティストらがお好きなようですね。実際にあなたの作る音楽に影響は与えているのでしょうか?
君が挙げたその三人は確かに僕にとってはとても重要な人物だね。アメリカでも彼らがどれだけ偉大なのか、人々がようやく最近気がつきはじめたところで、僕は早い段階で知る機会に恵まれていたから、このタイムラグに驚いているね。

〈RVNG〉や〈Leaving Records〉、〈Aguirre〉、〈Music From Memory〉といったレーベルらが主体となってここ数年で起きている、リバイバル・ニューエイジのムーブメントについてどう思われますか?
日本のニューエイジはまさにファッショナブルだけれど、それはなにもアンビエントやニューエイジといったジャンルだけではない。賞賛に値すべき音楽だから、一時的な流行で終わらないことを願うだけだよ。最近のニューエイジに集まる関心についてだが、バイヤーのAnthony PearsonとDouglas Mcgowan(2013年にシアトルのリイシュー・レーベルLight in the atticからリリースされたニューエイジのコンピレーションアルバム『I am the Center』を監修)、アーティストであるGreg Davisら、この三人が最初にその素晴らしさに気がついて、ブームの火つけ役となった人物だ。彼らは三人ともカリフォルニアで育っていて、ありとあらゆるレコード、そして異種混合化された文化に幸運にも触れることができたのさ。カリフォルニアがカルチャーの再盛期だった時だね。

普段ポートランドではどのような場所で演奏を行っていますか? Xハーチ(ポートランドの実験的なアーティストらが集うインディペンデントな共有スペース。元々教会であった場所を改築して、現在はヴァーチャル・メディアを用いたイベントや、アンビエント・ミュージック限定のショーなどを不定期で行っている)界隈の人たちと関わりが深そうに思えますが。
そうだね、Xハーチはできて以来、ずっとプレイしているお気に入りの場所だ。とても良いところだよ!RyanとBrenna Murphyが関わってVRのイベントも開催されているね。他で言えばHoloceneでもよくプレイしているし、S1ギャラリーも好きな場所だよ。

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ポートランドにはMSHRやGolden Retriever、Grouper、Pulse Emitter、そしてあなたたちVisible Cloaksといった独自の音楽を追求しているアーティストがいますよね。ポートランドの電子音楽のシーンについてどう思われますか?またそういったポートランドの環境や土地性はインディペンデントな文化を育むに適しているのでしょうか?
君が挙げた人たちはみんな友達だけれど、BirchとBrennaは悲しいことに活動場所をニューヨークに移してしまったし、Grouperのリズは今オレゴンの海岸の方に住んでいて、街の方に来ることはほとんどない。そういったアーティストたちは個別にはいるけれど、電子音楽のシーンはまだまだ限られているよ。あくまでポートランドのシーンの基盤になっているのはロックやパンク、ハードコアといったジャンルさ。周縁のサブカルチャーを維持していくにはこの街は十分な大きさではないから、音楽活動だけで生計を立てるのは実際難しいのが現状だ。

あなた達のファースト・アルバムは昨年ポートランドに新しくオープンしたレコード屋でもある〈Musique Plastique〉からリリースされていますよね。
そこを経営しているTonyとLukeとは昔からの友達なんだ。かつて街のレコード屋でバイヤーとして働いていたことがあって、レコード屋を経営している知り合いが多いんだ。クリントンストリートにあるLittle Axeというレコード屋も素晴らしいよ。

最近のお気に入りの作品をいくつかリストアップしてください。
10枚を挙げるとすれば、
Hamlet Gonashvili – Georgian Folks Songs
Pepe Maina ‎– Scerizza
You’re Me – Plant Cell Division
Studio der frühen Musik – Vox Humana
Instrumental Music of the Kalahari San
John McGuire ‎– 48 Variations For Two Pianos
Gabriele Emde ‎– Die Natur Der Klänge – Neue Musik Für Harfe
Les Halles – Transient
Mayumi Miyata and Midori Takada – Nebula
Luis Cilia ‎– A Regra Do Fogo
かな。ちなみにSeaver and Witscherというポートランドの二人組が作る音楽は素晴らしいよ!

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