Orange Milk: Interview with Seth Graham

「未知なる」音楽を発掘し、輩出する集合体〈Orange Milk〉の姿勢と、その在り方

Interviewer: Kazunori Toganoki, Foodman

国内のセンセーショナルな音楽家のリリースをはじめ、インディペンデントなレーベルシーンを第一線で牽引し続けてきた〈Orange Milk〉。そのファウンダーであり、アーティストのSeth Grahamが待望の来日を果たす(残念ながら、急病の為キースの来日がキャンセルとなり、レーベルメイトであるNico Niquoの代演が発表された)。「未知なる音楽」の発見と輩出、ジャンルの垣根を越えたセレクション、各作品の特性と密接に結びついたアートワークは、アーティスト個人の発信からだけでは現れてこない、作品の新しい価値観や聴き方を集合体の中から提示し、レーベルをオリジナルなものにたらしめてきた。そして生成とアップデートを繰り返しながら、その集合体は絶えず大きく拡がっていく。各公演を「Orange Milk」色に染め上げること間違いない今回のツアーを前に、ゲストとして、レーベルとも関わりの深い、食品まつりa.k.a foodmanさんからの質問を含め、セスにインタビューを行った。

2人の出会いはどのようなものでしたか?レーベルを立ち上げるに至った具体的なエピソードなどがありましたら教えてください。

キースとは、とあるショウで出会って、一緒にバンドを組んで、ライブをしたりしたんだ。12年前のことで、そこから僕らは良い友達さ。昔、僕は“Quilt”という名前のレーベルを運営していて、彼のテープをリリースしたことがある。その時レーベルを始めようと2人で話し合って、〈Orange Milk〉がスタートしたんだ。

レーベルの当初から現在に至るまで、取り上げるアーティストの音楽性やそのラインナップ、ヴィジュアル面において、統一したアイディアや美学が見られます。こうしたコンセプトは、レーベルを始める際に、おふたりで入念に話し合い、決められていたのでしょうか?もしくは段階を経て、具体化していったのでしょうか。

どちらかというと、徐々に具体的になっていったんじゃないかな。自分たちのやりたい事についてたくさん話を重ねて、これまでアイディアにつまることもなく、選択した方向に進んでいったのさ。音楽とアートにまつわるディスカッションが僕たちの周りをいつも取り巻いていたよ。

2人の役割分担はありますか?またお互いのパーソナリティの相違が、レーベルの音楽性に反映されていると思いますか。

キースはもちろん、アートワークのほとんどを手がけている。二人ともレーベルで生計を立てている訳じゃないから、やるべきことはシェアできるようにしていて、もし彼より時間がある時は僕が担当するし、その反対もあるよ。レーベルをやりつつ、音楽を作り、生計を立てるのは結構忙しいから、そういう流動的な分担になっているんだ。お互いのことをよく知っているし、何か一緒に物事をやるにあたっても都合がいい。気心の知れた関係だね。レーベルは、僕ら2人の好みがよい形で現れていると思うよ。

Orange Milk〉はセスとキースの明確な指向がベースにあって勿論成り立っていますが、それぞれの作品が集合体となって新しい音楽の価値や可能性を生み出していく、ひとつの挑戦的なプラットフォーム的な場所として作用しているようにもみえます。根本的な質問ではありますが、レーベルが担う役割の意味とはなんなのか、アーティスト、あるいは運営側両方の視点から教えてください。

レーベルの運営をとても愛しているし、レーベルはアーティストをサポートする場所だと思うよ。〈Orange Milk〉は特に、まだ世間にはノーマークの、未知のアーティストを紹介する場所として提供してきた。もちろん知名度のあるアーティストも好きだけれど、個人リリースよりも大きな範囲で、無名のアーティストが発信するのを手伝う、というアイディア自体とても気に入っているのさ。

リリースする作品を選ぶにあたって、何か基準は設けていますか。

最近はそこまでたくさんのデモをもらっている訳じゃないけど、特に決まった基準は設けてないよ。基本的に音質の高い作品が聞きたいから、わざとローファイな音色を狙ったものには興味がないね。あえて言えば、その点くらいから。

これまでのアーティストや作品の中で、レーベルの方向性を決定づけた重要なものはありますか。

やっぱり、FoodmanやKoeosaeme、Toiret Statusのような日本人のリリースは、〈Orange Milk〉らしい音を定義してくれたと思うね。Kate NVは名前が知られているというのもあって、レーベルの知名度をあげてくれた。個人的には、Hanz Appelvquitのリリースがとても気に入っていて、作品自体面白いし、僕が出したいのはああいうもの。Machine GirlとNoah Creshevskyの作品も大好きだね。バラエティーの幅広さは、〈Orange Milk〉の大きなポイントになっていると思う。簡潔にはまとまっていない美学や視点から興味をもって、ジャンルの裾野を広げていくことがとても好きだし、〈Orange Milk〉らしいアイディアだと思っている。

最近はtropical interfaceやTraxmanといった、ジュークやグライムと関係の深いアーティストのリリースも続いていますが、そういったダンスミュージック的なサウンドにはどのくらいシンパシーを感じていますか?

レーベルをやりながら、自分の興味の境界を押し広げようと意識してきて、嫌いなものに触れたとき、なぜこれが嫌いなのか、よく自分に問うようにしている。ダンスミュージックは好きだし、上手い作り手にも興味があるよ。僕自身は苦手だから作れないけれど、聞くのはとても好きさ。特にすっきりとしない、変な類のものが好きで、聞いていると幸せな気分になるね。

幼少期の頃は日本で育ったそうですが、当時はどんな生活をしていましたか?また当時の経験が、自身の音楽性に影響しているとは思いますか。

とても奇妙な体験だったよ。両親はクリスチャンの宣教師で、僕が6歳の時に日本に引っ越した。2年生から6年生まで普通の公立の小学校に通って、その翌年に生駒にあるアメリカンスクールに入学したんだ。で、4年毎に、僕ら家族はアメリカに戻って、宣教師を続けるための資金を稼ぐために、アメリカ中の協会を回っては、寄付金を募る旅行に出かけたんだ。全ての州を訪れたよ。僕ら家族は常に移動していたし、どこか一箇所に長い期間留まったことがないから、付き合いの古い友達を持っていないんだ。その代わりに、取り憑かれたように、車や電車の中でいつも音楽を聞いてきたよ。僕が音楽と付き合うようになったのは、このライフスタイルがあってだと思う。同じような幼少期を過ごした人はほとんどいないと思うから、どれくらいの影響なのか、確信はないけれど。それと、その時の経験が僕のパーソリティに大きく関わっていることに、今になってようやく気がつきはじめたんだよね。日本にいた時、日本人の文化や習慣、コミュニティーの感性が好きだったけれど、同時に両親からは、アメリカへの愛国心を強く持つよう育てられたんだ。それで小学6年生の時、広島に修学旅行へ出かけてね。そこで、アメリカが多くの日本の犠牲者を出したことを学んで、両親が教える愛国主義とやらは、正しくないかもしれないと思ったのさ。と同時に、アメリカが間違っているとすれば、日本が間違っているという可能性も否定できないと思った。この疑心暗鬼に僕のアイデンティティは混乱してしまって、今まで何にも「本当」らしさを感じたことはなかった僕は、自分自身について、また改めてその「本当」らしさとは何なのか、よく考えるようになった。ゲームみたいなものだね。

(食品まつり) 日本のプロデューサーの作品を多くリリースしていますが、日本のプロデューサーの作る音に感じる特徴やそのアプローチの違いなど、感じるものがあれば教えてほしいです。

全てのアーティストが、自分なりの個性を発揮したスタイルを構築しようとしていると思う。でもどれだけ個人が努力しても、それぞれの文化的背景の影響は免れないよね。一方で、インターネットという場所は、あらゆるトレンドを同質で普遍的なものに変容させてきた。今ある意味では、アーティストによる選択は、個人の出身地や国柄といった条件を超えて、インターネット・カルチャーというひとつの括りに収斂しているじゃないかな。

レーベルを長く継続していくために、意識していることや考えていることはありますか?

長く続けられればと思うけれど、何かに強制されるのは嫌だし、このままの調子で運んでいければよいと思う。

最新作「Gasp」では、様々なクラシカルな楽器と電子音を混ぜ合わせています。全ての曲が非常に小さな音のピースから構成されていて、それを緻密にまとめあげているような印象を受けました。何かモチーフのようなものはありましたか?また録音のプロセスについても教えてください。

初期のアヴァンギャルドなクラシック音楽、特にJohn Eatonという音楽家が大好きなんだ。彼はmass, blind man’s cry, solo clarinetという作品をリリースしていている。面白さと、時々聞いてられないようなひどさが同居していて、謎めいた変な雰囲気もあったりと、個人的にはすごく狂った作品だと思う。あとはIlhan Mimarogluというトルコの電子音楽家が参加しているコンピレーション・アルバムの、彼のこの曲も大好きで。
古いアヴァンギャルド作品の多くが、ほとんど誰にも知られずに姿を消していったわけだけど、こうして形として残った作品が僕は大好きだし、彼らと同じようなスピリットで、制作をしたいと思っている。いま挙げた2つのアルバムに、DPIのMN RoyとRico EPみたいな、コンテンポラリーなコンピューターミュージックの要素を組み合わせて、オーケストラのような複数の楽器音と結びつけたものを作りたいと考えていて、それが今回の「Gasp」なんだ。上手くいったかは分からないけれど、挑戦してみたよ。

音と音の余白が作り出す間も独特ですね。音がない状態に対してミュージシャンとしてどのような考えを持っていますか?

静寂や休止は、後に来る音の展開に期待をもたらすし、音楽的なテクニックとしてとても好きだよ。僕にとって面白い音楽とは、次にどんな音が来るかがこちらで予期できないもの。静寂を用いるのはアクセントをつける上でも良い手法なんだ。ただアーティストとして、静かなもの、あるいはその逆で激しいもの、どちらか一方に偏ったり、完全に区分して音楽を作るのは自分としては難しくて、2つのスタイルを行き来しながら、中間のポジションで作ろうといつも心がけている。

(食品まつり) 以前と比べ現在のアメリカのカセットレーベルのシーンに変化はありますか?

テープのシーンはだいぶ大きく成長したよ。13年前に初めてテープ作品をリリースした時、ほとんどは個人か、ノイズシーンだけに限られていたからね。今、〈Orange Milk〉の作品をテープでしか買わない人が多くいて、とりわけ若い人たちの間ではメインストリームな存在になりつつある。CDやLPの他のフォーマットと同じように扱われているし、どんなスタイルやジャンル、グループであろうが、テープでリリースし、販売することをアーティストは考えているかね。逆にCDは、一部のリスナーからは受けにくくなっているし、ノーフィジカルの時勢でこれまでと同じように受容されるのは難しいと思う。そういう状況だからテープは、フィジカルという形態としても、あとはコレクションとしても面白いんだよね。でももしテープと同じ価格でLPを作れるなら、ほとんどのリリースがLPだけになると思うよ。そんなことは起きないだろうけど。この先もテープがリスナーに価値のあるものと見られるのか、もしそうならテープのカルチャーがどこに行くのか、個人的に興味があるよ。

Orange Milk
https://orangemilkrecords.bandcamp.com

Orange Milk Japan Tour

6/5 tue 21:00 – at Dommune Tokyo
WWW & Disk Union presents Buy Nowers Club feat. Orange Milk
Talk Session: CVN, Yusuke Tatewaki, Dirty Dirt
DJ: Seth Graham, Dirty Dirt
LIVE: emamouse, Constellation Botsu
VENUE / INFO http://www.dommune.com
 
6/6 wed 18:00 – at Forestlimit Tokyo
K/A/T/O MASSACRE vol.173 Orange Milk vs 奴隷船
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, 奴隷船
DOOR ¥2,500+1D
VENUE http://forestlimit.com
INFO https://twitter.com/NOVO_vintage
 
6/8 fri 23:00 – at hikarinolounge Okazaki
OMツアー
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, CVN, 食品まつりa.k.a foodman, fri珍, nutsman, pootee, woopheadclrms, Yusuke uchida
ADV ¥2,500* | DOOR ¥3,000
*前売特典 Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 A2 Poster
VENUE / INFO https://hikarinolounge.tumblr.com
 
6/9 sat 14:00 – at Torikai Hachimangu Shrine Fukuoka
0FFICE
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, toilet status, hinako takada, SHX, abelest, hir0))) and more
VJ: chanoma
ADV ¥2,500 | DOOR ¥3,000
VENUE http://hachimansama.jp
INFO http://office314.wpblog.jp
 
6/10 sun 16:00 – at Circus Osaka
Orange Milk Showcase Japan Tour 2018 Osaka
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, D.J.Fulltono, 食品まつり a.k.a foodman and more
ADV ¥2,500+1D | DOOR ¥3,000+1D | U19 Discount+1D
VENUE http://circus-osaka.com
INFO http://popowpowpow.tumblr.com
 
6/12 tue 18:30 – at WWW / WWWβ Tokyo
Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 – Tour Final –
LIVE & DJ: Giant Claw, Seth Graham, 食品まつり a.k.a foodman, CVN, koeosaeme and more
ADV ¥2,500*+1D | DOOR ¥3,000+1D | U23 ¥2,000*+1D
*前売特典 Orange Milk Japan Showcase Tour 2018 A2 Poster
Ticket Outlet e+ / RA / WWW
VENUE / INFO http://www-shibuya.jp/schedule/009038.php