2017-Feb-2013 Shares

シンセサイザー+バイク=? LOOK MUM NO COMPUTERが作り出す改造楽器と偏愛的実験的シンセサウンド

エレクトロミュージックが好きな方なら大量の配線を抜き差しし、ツマミをグイグイと回して変則的な電子音を作り出すアーティストの動画を一度は見たことがあるのではないでしょうか。それは電子音をいちから制作できるモジュラーシンセというシンセサイザーの一種なのですが、一旦その説明は置いておきます。今回はそんなモジュラーシンセサイザーを自作し、パフォーマンスをインターネットで拡散しているLOOK MUM NO COMPUTERというアーティストについてご紹介したいと思います。

26歳の彼はイギリス在住で、Zibraというバンドでボーカルをしながら、シンセサイザーを自作して演奏し、そのプロセスをYoutubeで公開しています。今までもシンセサイザーの演奏動画は「弾いてみた」系のキーワードと共に公開されてきましたが、彼が特殊なのはシンセをまったく異なる領域のマシンと組み合わせている点です。

その例のひとつがシンセバイク。そう自転車です。彼は自転車のハンドルやトップチューブにモジュラーシンセを搭載、車輪にも手を加え速度によってテンポが変化するように改造しました。

SYNTH BIKE 2.0 SYNTHESISER LOOK MUM NO COMPUTER

シンセバイクの解説動画:Synth Bike – In Depth

1999年に発売され、日本でも爆発的な流行になったファービーも彼の手によればコンテンポラリーノイズマシーンに早変わり。(動画前半が解説、後半が演奏)

How to sync a circuit bent furby to a synth video

モジュラーシンセのドラムパターンに合わせて悲鳴のようなノイズを発するファービー。魔改造されたファービーの姿が少し衝撃的ですが、既存のオブジェクトの破壊によって新しい音楽が再構築されています。

また、彼はシンセサイザーと生ドラムの即興演奏動画も公開しています。モジュラーシンセと生ドラムのライブセットは、リアルタイムに変化する複雑なモジュラーシンセの音の波と重厚なリアルドラムサウンドによって私たちを楽しませてくれます。

Look Mum No Computer LIVE Modular Synth And Drums

彼のようにシンセサイザーやおもちゃの回線を自分で改造することを「Circuit Bent」と呼びます。Youtubeだと約8年前から数多くの魔改造レトロトイのCicuit bent動画を確認することができます。とくに彼が面白いのは冒頭にも述べたように、自転車やダーツボード、ソーラーパネルといったほかのマシンとシンセサイザーを融合し、改造のプロセスを公開している部分だと思います。

DARTBOARD SYNTH – PLAYING MUSIC WITH A DARTS?
(最終的に手でダーツボードを押していますが、そこはご愛敬)

モジュラーシンセを配線位置から設計して制作するギークな彼ですが、Zibraというバンドではキャッチーで明るいシンセサウンドを作り出しています。

Zibra – Wasted Days (Official Video)

LOOK MUM NO COMPUTERのYoutubeチャネル登録数は約4400(2017年2月18日)。実験的で偏愛的で時にトラッシュな彼の活動を通じてエレクトロミュージックの面白さと奥深さをぜひ感じてみてください。

LOOK MUM NO COMPUTER
Youtube https://www.youtube.com/channel/UCafxR2HWJRmMfSdyZXvZMTw
Facebook https://www.facebook.com/LOOKMUMNOCOMPUTER/?hc_ref=PAGES_TIMELINE

(Text: 小松塚悠太)

2017-Feb-1640 Shares

プラハの〈Genot Centre〉より、Dane Lawのアンビエント・ハウス作品「r.bit」を体感するフライトゲームが公開

アルゴリズムを用いた手法でエレクトロニック・ミュージックを制作してきたプロデューサーDane Lawの、アンビエント・ハウス作品がプラハのレーベル〈Genot Centre〉よりリリースされ、続いてアルバムの世界観に呼応したゲームがフリーDLで公開されました。

ゲームの世界観から感じられるのは、スピリチュアルな宇宙の探索、生命とテクノロジーの関係、古典的な「人工知能」といった90年代に流行したテーマ群。いまVRの登場で息を吹き返しつつありますが、それらは当時多くの人々が夢見ていたコンセプトにほかなりません。実は今回のプロジェクトは、実際に90年台に活躍したUKクラブミュージック界の重鎮であるWilliam Orbitの商業的なアンビエント・テクノからインスパイアされたものだそうです。

リバイバルをコンセプトにした作品とはいえ、現代的な感覚を通過したその音響は今も不思議と新鮮に響きます。クラブミュージック的な没入感と覚めたような感覚がレイヤーのように重なり、シンプルな構造の中にも奥行きを感じられる作品になっています。

楽曲があえてコンサバティブな世界を作り出している一方で、ゲームの重力のない新しい空間を作り出そうという態度は対照的です。ユーザーはこの惑星のシステムを模した上も下もなく、始まりも終わりもない箱庭的な環境を探索していかなくてはなりません。シフトキーを押すと前進(これがわからず、最初ちょっと苦戦しました)。最初は無音ですが、あることをすると「r.bit」の楽曲が次第に聴けるようになっていきます。

開発はReaper Death Seal Corporation。Mac、Windowsで動作可能。さらにOculus riftとも互換性があるとのこと。是非試してみてくださいね。

Dane Law, “r.bit”
https://genot.bandcamp.com/album/r-bit
Gameのダウンロードは以下。
http://genot.cz/rbitgame.htm

2017-Jan-2267 Shares

反トランプを掲げ立ち上がったアクション「ウィメンズ・マーチ」。世界中の人々の見せたウィメンズパワーとそのイメージ。

誰もが予想をしていなかったトランプ大統領就任から一夜明け、21日に行われたトランプへの抗議と女性の権利向上を主張するために行われたウィメンズ・マーチ。その数は大統領の就任式に集まった人数をゆうに超える50万人となり、ホワイトハウスの周辺はピンクの帽子をかぶった人々で埋め尽くされました。また東京を含む世界60カ国でも連動した抗議が行われ、その抗議の波は世界中へと広がりを見せています。

当初から女性蔑視的な発言を繰り返して来た大統領への反発は当然とはいえ、悪くなっていく世の中に決して黙せずアクションを畳み掛けていくエネルギーは、都市における多様性の共存というテーマを動物という比喩を介して表現した『ズートピア』のような映画をどメジャーな場所で作りだしてしまうようなアメリカの強い良識の部分が表れていると感じます。

驚いたのが海外のInstagramのフォロワーたちが関連する写真をあげまくっていて、タイムラインがウィメンズ・マーチ一色になってしまったことです。日本ではセレブのデモなんて揶揄する人もいますが、立場のある人だからこそ発言するというのはひとつの常識、ということなのでしょう。アーティストやミュージシャンもしかり。そこで今回は新しいガールパワーも予感させる、印象に残ったプラカードや写真をピックアップしたいと思います。

girls march #womensmarch

DISさん(@dismagazine)が投稿した写真 –

Dismagazineより。あまり示威効果はなさそうですが控えめさが逆に目を引きます。わたしが一番ってやっているみたいで、かわいいですね。

#womensmarch

DISさん(@dismagazine)が投稿した写真 –

こちらもDismagazine。Disに関してはあまり政治的なスタンスは明らかにしていない印象がありましたが、さすがにということなのでしょう。写真のトリミングにDisらしい斬新さがありますが、クローズアップすぎて場所がどこなのかよくわかりません。彼らの拠点のNYでしょうか。

とにかく手書きのプラカードがかわいい。日本でもプラカードに統一感を出しておしゃれにする動きがありましたが、なかなかこういうのは作れないなあと思います。手書きなのにいろいろな字体があって見ていて飽きません。

Rihanna at the #womensmarch in NY

@emmafntyが投稿した写真 –

こちらも手書きのプラカード。モデルのようにポーズを取っているのはどうやらリアーナのようです。どういうシチュエーションでこうなったかわかりませんが、プラカードをおいていっちゃうのは欧米スタイルなのでしょうかね。

こういった横断幕もよく見かけますが、プラカードとはまた違う趣があってよいです。文字が傾いていたり、歪んでいるのも味わいがありますね。女性だけでなくすべてのジェンダー・スペクトラムへ向けたメッセージのようです。

I used to walk to the Trump Tower after work when I was interning at the Met Museum. It was around the time of the Occupy Wall Street protests, and I would go sit in that gaudy temple of doom to reflect on how trickle down economics function (aka disfunction). ⛓ The Trump Tower is a dead mall. When you take the escalator upstairs, all that's there is shuttered stores that used to exist to attract tourists, but now are out of business shrines to nothingness. It is a metaphor for what this presidency is going to look like. So, my fellow Americans, it is up to us to fight back and to reclaim justice against those who seek to destroy & silence us in the name of greed & exclusionary uses of power. The next four years require strength & mobilization, and for us to come together to fight for what we believe in. Let's get to work.

Signe Pierceさん(@signepierce)が投稿した写真 –

タイムズスクェア前でとても美しいパフォーマンスを作り出す、アーティストSigne Pierceのインスタより。こちらは成金趣味で悪名高いトランプタワーの前ですが、パフォーマンスのようなことを行なっているのでしょうか。

#womensmarchonwashington photo by @madjohnchick

The Riot Grrrl Projectさん(@theriotgrrrlproject)が投稿した写真 –

パンク・ シーンでの性差別に反対して生まれたライオットガールのムーブメントのドキュメンタリーを作成しているプロジェクト、The Riot Grrrl Projectより。独特のフェイスペイントとプラカードがマッチしていてパワフルです。

🚫🚫🚫🚫🚫

GURLS TALKさん(@gurlstalk)が投稿した写真 –

こちらはGurls Talkという女性のためのコミュニティをつくる運動体のインスタ。モデルのAdwoa Aboahによって設立された団体だけあって、おそろいの衣装がおしゃれですし、スウェットに書かれたメッセージも気がきいています。

ざっと駆け足で見て来ただけですが、こうやってみると世界中にどれだけ多くのコミュニティや運動体が存在しているのかを改めて実感します。わたしたちがふだん接している文化や物事は、そうした見えない意思の存在によって支えられてきたのかもしれません。普段ばらばらに存在しているそうした流れも、危機にさらされた時には抵抗の声をあげ、また連帯して動いていくのだと思います。正直未来は暗いと感じざるを得ませんが、こうした個人が作り出す動きの中には可能性の光が潜んでいるのではないでしょうか。

2017-Jan-1932 Shares

インターネットのお土産屋?プロダクトを売るコレクティブのプロジェクト「the internet shop」。

僕らが「インターネット・カルチャー・ショップ」という展示をやらせてもらったのは2014年のことですが、先日その名も「the internet shop」というプロジェクトを見つけたので、今日はこちらを紹介したいと思います。

そういえばインターネットはば英語で「The Internet」と書きます。Theがつくのはインターネットが世界で一つしかないからとのこと。しかしそれはこれまでの話で、去年AP通信が「internet」と普通名詞で表記するよう転換をしたというニュースがありました。確かにそれはそうだよねという感じです。

そう思うとインターネットってとうとう「海」とか「森」とか「宇宙」といった言葉と並べられるようなものになったのかなと。だから海の近くには海グッズを売る店があるような感じで、インターネットにもインターネットのグッズがあってもよいですよね。「the internet shop」はインターネット好きが訪れる、お土産物屋さんというイメージなのかもしれません。

そんな「the internet shop」ですが、立ち上げたのはVeryVeryContemporaryというクリエイターのネットワーク。メンバーを見て見ると、ドイツを中心にヨーロッパ界隈で集まっているという感じ。コレクティブみたいなやり方ってあまり日本では聞かないのですが、各々が独自に活動しながらゆるく集まって活動するこの感じはよいですよね。「the internet shop」はそんな感じで友人たちが作ったものを集めて売るプロジェクトなんではないかと想像します。

Welcome @sucukundbratwurst to #theinternetshop 💛 limited print #BEWATERMYFRIEND now exclusively available: #brucelee #vosswater #stayhydrated

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

collection for @laurakokinova is now ready for your neck 🌹

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

☃ snowden snowball ☃ #theinternetshop

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した動画 –

O'cock 🔜 at #theinternetshop 🍆⏰

The Internet Shopさん(@theinternetshop)が投稿した写真 –

https://the-internetshop.com

2017-Jan-1823 Shares

ヴァーチャルギャラリーDiMoDAが作り出した、知覚を変容させる鑑賞体験というアート。

いわゆるインターネットネイティブといわれる世代が固執するヴァーチャルな三次元空間への憧憬は、おそらく世代的にゲームの体験に由来しているのではないでしょうか。フラットな世界から立体への移行という革命の最初の経験は、これからくる未来への期待に彩られており、私たちはその技術的な欠点や未熟さをイマジネーションで埋めることができました。そしてそこにある不完全性は次第に新しさや独自性に転換し、ひとつの文化的領域を形作るまでに拡張したように思います。

そして近年ではUnityやBlenderなどの登場により、ほとんど無料でそれと同等かそれ以上の技術を用いることができます。アーティストたちは美術を正式に学ぶより前に、こうしたツールで作品を作りまくることが可能です。こうした今の状況は、美術に対する空間への意識も変化させずにはおかないでしょう。そしてオンラインギャラリーとVR技術の組み合わせはそうした創作物の最適な保管場所であり、またそれゆえにそれらはホワイトキューブの空間に変わる新しい礼拝所になりつつあります。

さて今回紹介するのは、DiMoDAというヴァーチャルギャラリーです。DiMoDAはDigital Museum of Digital Artの略とのこと。アーティストのAlfredo Salazar-Caroと、William Robertsonにより、2013年に構想、2015年にThe Wrong Biennaleのパビリオンとして最初の展示を行って以来、年二回、少数のアーティストたちからなる展示を作り出してきました。

ユーザーはフロントとなるインパクトのある建物から、ポータルを介して3つの会場に行くことができます。会場にはそれぞれ独自の物理的な特性があり、作品を見るのと同時に自身へフィードバックされる感覚の変容も見所になっています。

彼らの特徴のひとつは、そのプロジェクト自体をさまざまなフィジカルな空間で展示している点かもしれません。マイアミビーチで開催されたアートバーゼル、NYのTransfer Galleryなどで展示を行うなどなかなかエネルギッシュに活動しています。またこの一月からは、ロードアイランド州のRISD MuseumでVR展示を行う予定とのこと。

最新の展示は以下のサイトからダウンロードできますので、是非体験してみてください。

http://digitalmuseumof.digital/art/

2017-Jan-1210 Shares

Boomkat Editionsの新シリーズ「12×12」がスタート。第一弾はRaimeの新名義、Yallyによるシングル。

イギリス、マンチェスターを拠点として、クラブトラックから実験的なベッドルーム・ミュージックまで幅広い電子音楽を取り扱うレコードショップであるboomkatが新しい12枚の12インチをシリーズでリリースする、『12×12』をスタートさせました。本シリーズは2017年でレコードショップとしての経営が20年目を迎え、またセルフレーベルboomkat editionsのスタート5周年を記念するものです。

その第一弾を飾るのはRaimeの新名義、Yallyによるシングル。いまだ1枚の7インチしかリリースされていない姉妹レーベルも含め、これまで『Blackest Ever Black』のみでリリースをしてきた彼らにとっては初の「外仕事」とも言えるでしょう。

ジャングルや2ステップなどのクラブ・ミュージックから小杉武久や裸のラリーズ、またFugaziやSlintといったハードコア、スロウコアのバンドからの影響についても公言してきた彼らは、これまでの2作のアルバムではインダストリアル,ノイズといったサウンドを主として展開してきました。yallyの名義での本作ではグライムやジャングルといったイギリスのストリートから産まれた音楽を主軸としたものとなっています。boomkatによるノーツでは,本プロジェクトは「ベース・フューチャーの開拓」と称されており、これまでのイギリスの音楽において常に重要なエッセンスであった「暗さ」がしっかりと受け継がれていることが感じられます。

さらに,Boomkat editionsの第2弾を飾るのは,先述のYallyと同じくロンドンを拠点として活動を続けるBeatrice Dillonです。

これまで〈The Trillogy Tapes〉や〈Where to Now? 〉のようなレーベルから,ゆっくりしたペースでリリースを続けてきた彼女は,半世紀近くの間、イギリス国内外の現代美術家の一つの重要な居場所となってきたLisson Garalleyなどでプレイするなど,先鋭的な音楽を芸術などの他のフィールドへ繋げていく(もちろん、音楽はそれ自体が非常に芸術的なものだけれど)活動を続けてきました。

第1段のYallyとは異なるアプローチながら,クラブミュージックの周縁を開拓し続けている彼女のリリースには,レフトフィールドと呼ばれるような音の実験と、音楽の革新の場であったクラブという空間を繋げてきたレーベルの先鋭的な姿勢を見ることができると思います。まさに本シリーズにふさわしい記念碑的なリリースです。

2017年となり、今後数ヶ月に渡って合計12枚のリリースを完成させる予定のBoomkat Editionsの『12×12』シリーズ。今後、どのようなアーティストやミュージシャンが我々の耳を驚かせてくれるのか、期待して待ちましょう。レーベルにとって記念すべき年となる2017年の電子音楽の台風の目となるかもしれません。

(Text: 中村繁)

2017-Jan-0614 Shares

〈Quantum Natives〉より、ラトビアの二人組zolitudeによる「zolitude」。その和やかな高揚が呼び覚ます、街の記憶。

これまでにも数多く紹介してきた気鋭のレーベル〈Quantum Natives〉より、ホリデーのタイミングで新作が届きました。ラトビアの首都リガにある町の名を冠した二人組zolitudeの8曲入りコンパイル。メンバーのViktor Timofeev は、暗号をモチーフにした、未来的で凄く独特な作風のアーティスト。もう一人のKaspars Groševsのサイトにも、象形文字のような特徴的なドローイングがならびます。

レーベルからの情報には、zolitudeの町の区画についての説明があって(主要および建設予定の道路の名前やその数など)、つらつらとなんだか物々しいので、ついgoogle mapの航空写真で確認すると、一角には鈍く光る鉤形をした堀や柵、城壁のように配置された建物が。ストリートビューで見たら実際には団地のような集合住宅がなにかの要塞のように見えて、ああ、この既視感は何かと考えたらこれはまるで戦国時代の進軍をあらわす勢力図じゃないかと。「真田丸」ロスのみんなの心も満たしてくれる(?)、その音もまるで戦争叙事詩なのです。単体ではポップなデジタル音も、全体を覆うスモーキーなノイズのせいで銃声の暗喩のように響きます。

たとえば4曲目「Eiko-Klubs」では、ジャズを奏でながら練り歩くキャラバンがインベーダーに出くわし、ビームの応酬に遭いながらも我関せずと行程を変えず突き進んでいったり。次の5曲目、ユニット名でもある「zolitude」では、緩やかに高揚しては墜落していくベース音のループから、荒涼とした砂地に埋まった地雷のごとく予期できない音の欠片が滑り降り、跳ね回り、弾けとんだ挙げ句、防空壕から聞こえるようなくぐもったサイレン音へと収縮していきます。それに続く6曲目の「Dvor」は男前でダンサブルなミニマルでスタートするもやはり暗雲が立ち込めて、ドローンやらアラームやら二転三転し、なんとか生きながらえるかの渾身の14分。1〜2分と切り刻まれた曲が多い彼らの作品のなかでは大作の類で、白眉の作。

ラトビアにはこれまで数ヶ国に植民地支配された蹂躙の歴史があって、そのせめぎあう音の背後には欧州の歴史の重量を感じることもできるかもしれません。こうしてひたすらの感動を長々と書き綴ってしまいましたが、とりあえず1曲目「Zole」の映像を体験してみてください。遠景から映し出された装甲車は、見ればただ地を這う小さな虫なわけで。巨視と微視とをアンリズミカルに往き来するさまは、軽やかというよりもズンズンと重い。ていうかただただカッコイイ、とだけ言ってしまいたいのが本音なので、いますぐぜひ。

ダウンロードはこちら
http://www.mediafire.com/file/j41mawhnuow62fm/Zolitude+-+Zolitude+%28QNR008%29.rar

(文・松屋加奈子)

2016-Dec-28295 Shares

2016年の日本の豊穣な地下シーンを50組のアーティストと楽曲で振り返る。Japanese track maker / musician 2016。#1-25

2016年、日本の地下シーンは沸騰前夜といってよい豊穣な一年でした。このような燃え上がる創造性の発現、そしてジュラ紀のような多様性の爆発は今まで経験したことがないものです。もちろんそれはこの数年の間に準備されてきたものだと思いますが、煮えたぎるような盛り上がりが可視化されることはありませんでした。ローカルな動きがオンライン経由でさまざまに繋がり合っていき、それが目に見える形で一気に顕在化したのがこの一年だったのではないでしょうか。

とりわけ重要なのが〈Orange Milk〉からの一連の衝撃的なリリースです。そして、UKのレーベル〈flamebait〉ではカオティックな側面を持つアーティストが、USの〈Squiggle Dot〉からはポップでアバンギャルドな感性にシンクロした作品が、〈H.V.R.F. CENTRAL COMMAND〉のHardvapour作品に混じり日本のアーティストがリリースされていたのも印象的でした。見渡すと世界の感性が日本のいろいろな局所的空間とシンクロし合っていることが分かります。

震災以降シーンが下火になり音楽メディアが消える一方で、地下茎のようにアンダーグラウンドでは新しい根が育ち、表現の部分ではむしろ熟成が進んだように思います。日本で表面化するより先に、その結実が海外の目利きたちに発見されていったというのが本当のところだったのかもしれません。

日本、海外という区分け自体はもう意味がなくなってきているとは思いますが、膨大なリリースのなかで日本の作品をあえて抽出してみると、その豊饒さを改めて感じてもらえると思います。だけど実際はそんな数ある面白い作品をこの冬は筆が追いつかず、全く紹介できていないという気持ちに苛まされていました。その代わりというわけではないのですが、年の終わりにいっきに50人の作品を紹介して2016年を締めたいと思います。一般的には順位をつけるのでしょうが、優劣を付けるのが苦手なのでアーティスト名のアルファベット順で並べてみました。

1. 7FO, “Water Falls Into A Blank”

7FOは、大阪を拠点に活動する音楽家。本作は〈RVNG Intl.〉の新プロジェクトとしてリリースされた。レゲエの影響を思わせるローファイで透明感のあるダビーな安定したビートに、フレッシュで透明感のある音響が交錯する。湖に浮かぶ光のゆらめきのような世界で、音の生き物たちが軽やかに舞い踊る箱庭的ユートピア。

2. Akobae, “[α ω α к є] му [ѕ σ υ ℓ]”

ネットの奥底から発掘されたきたようなコラージュ感覚とそこに垣間見えるセンスは、オンライン上でkawaiiとゴシック、そしてスピリチュアルが交雑し変異したような独特のもの。ノイズにより覚醒したドローン作品から、オンラインの落とし子といったコラージュ作まで。変名がいくつかあるようで、その全容はよく分からないけれど、強固で一貫したセンスを感じさせる。

3. alma, “Peach”

Lilyも参加の新宿眼科画廊の展示を終えたばかりのalmaは、ジェンダーの問題意識からさまざまな表現活動を行なっている。身体から発せられる声はとても繊細で、まるでそれ自体が電子音であるかのように、響きの中に溶け出していく。表現の前へ自身を投げ出していく全体を賭けた姿勢は、アーティストという存在の本来のあり方を思い出させてくれた。彼女のような存在が現れた意味を私たちは考えなくてはならないだろう。

4. 荒井優作

早熟な鬼才あらべぇから名義変更し荒井優作へ。モノクロームの映画の中で吹き荒れる静謐な嵐のような粒子の粗いアンビエント。彼が撮影した写真にも独特のポエジーがあって、とてもよいです。

5. brf, “BRF-KU EP”

オンラインの表現集団Baconの商品を取り扱うIsshi MiyakeのBRFより、東京の街のサウンドからつくられたというハードコアテクノ。鋭すぎる五感により写真のように鮮明に焼き付けられたのは、街の姿というより現代の都市を疾走する文化のポートレートのようなものかもしれない。

6. Cemetery, “DENIAL”

東京で活動するアーティスト集団CONDOMINIMUMの主催者、渡邉弘太のCemetery名義。猥雑な都市のノイズをかき消す雨のような詩情に溢れている。かすかに歪んだガラスのような硬質な響きが鉱石のような世界を作り出す、メロディアスかつロマンチックなアンビエント作品。

7. CARRE, “GREY SCALE”

80年代のインダストリアルを継承しながら現代のエレクトロミュージックの音楽のエッセンスを感じさせるデュオ。近藤さくらとの展示も記憶に新しい本作は、深宇宙に潜り込んだかのような抽象的でモノクロームの音響が広がる傑作。15年の作品だが、カセットが本年リリースとなった。スピーカーのような装置を用いたパフォーマンスもとてもインパクトがある。

8. Constellation Botsu, “ちゅざけんなッズベ公!!”

島根在住のトラックメーカー。切り刻まれ破片となったシンセ/ハーシュノイズは繊細かつ破壊的で、マダラ模様に進行する時間感覚は想像を超えたグルーヴを纏い、聴くものを酩酊に導く。そのサウンドのみらず、Tweetされる言葉から、アートワークまでその独特の表現に世界からの注目が集まっている。

9. CVN, “Unknown Nerves”

CVNはJesse RuinsのメンバーNobuyuki Sakumaのソロプロジェクト。複雑性とシンプルな骨格の間を繊細なバランスで揺れ動く、ハイファイで硬質な感触を持つサウンドを作り出す。彼が間に見つけ出した新鮮で力強い美学は、〈Where To Now?〉をはじめ〈Orange Milk〉、〈Dream Disc〉、〈Flamebait〉などさまざまなレーベルに見出され、作品がリリースされた。

10. dagshenma, “NYP1232016”

dagshenmaは京都市在住の樋口鋭太朗による電子音楽のプロジェクト。高周波のようなノイズが、彫刻のように硬質な構造物を描き出す。アンドロイドのような人工的質感をまとったそのサウンドは、低温度の世界観に貫かれており、上質なノイズ/エレクトロとして聴くことができる。京都を拠点とするMadeggとのユニットAcrylも注目。

11. DJWWWW, “Arigato”

DJWWWWは、一度の休止からふたたびオンラインでsimforartなる新しい音楽メディアを開始したKenji Yamamotoの音楽名義のひとつ。この世界のありとあらゆる場所から音を見つけ出し、縦横無尽に組み合わせる豊かなセンスは自身のレーベル〈Wasabi Tapes〉とも共通した感性を感じさせる。純粋な遊びから生まれたというその音のコラージュは新しい感触に貫かれていて、深い音楽愛から新しい音楽フォーマットを作り出してしまったかのよう。オンラインアンダーグラウンドの成果のひとつの結実として記憶に刻まれたマスターピース。

12. EMAMOUSE, “eyeballnized”

もはや謎が神話レベルに高まりつつあるPsalmus Diuersaeから作品を発表する数少ない日本人。自作の独特なイラスト作品に登場する奇妙なキャラクターを模したマスクをすっぽりと被ってライブを行ったり、自撮りをアップするなど、虚構と現実の間を往復する不思議な人物。ゲームミュージックのように繊細に組みあげられたデジタルサウンドや、風変わりなデジタルフォーク的作品も作り出す。エンディングへと疾走するような激しく、めくるめく変転する展開はクセになる心地よさ。

13. former_airline, “Our Fantasies for Science and Pornography”

Former_Airlineは東京在住の久保正樹によるプロジェクト。金属的でノイジーなテクスチャーの音響が、張り詰めたテンションを持続させながら無人の都市を飛翔して行く。ミニマルなパターンの中に豊穣な情景が作り出されてくさまは、クラウトロックのよう。

14. GENSEIICHI, “Berlin”

インプロヴィゼーションユニットa snore.のメンバーでベルリンへと拠点を移した、GENSEIICHIによる作品のタイトルは「Berlin」。ミニマルテクノ的な圧を感じる変則的なビートの上でノイズのパターンが展開していく。低く抑えられた速度が、奇妙な白昼夢のような世界を作り出している。

15. Hakobune, “Impalpable Ashes”

多作で知られるドローン界を代表する才人。アトモスフェリックな音像のなかに神々しく荘厳なサウンドスケープが浮かび上がる。至福の美しさを持つ、アンビエントドローン作品。

16. H Takahashi, “Body Trip”

アンビエントユニットUNKNOWN MEの結成も記憶に新しいアンビエント作家のH Takahashi。結晶を形作るように空間を浮遊する音の像が見たことのない姿を描いていく。スピリチュアルというよりは、日常にある感覚を拡大したかのような優しく朗らかな奇妙さがある。春のような温かみすら感じる、ニューエイジの新しい時代を導いたアンビエント作品の金字塔。

17. Kazuya Suwa, “Above the Head / World is Echo”

レーベル〈Squiggle Dot〉の最初のリリースを飾ったKazuya Suwaの最新作。サイケデリックな夢を漂っているかのようなストレンジな世界観にポップさが光るそのスタイルには、どこか人肌のような温かみや陽気さも存在している。その軽やかさは、今の時代の感性という感じがする。

18. KΣITO, “Juke Shit 3”

Juke/Footworkの遺伝子から、多彩な進化を作り出す早熟な鬼才。本作は縦横無尽に進行するビート、ジャポニズムを意識してか和楽器の音色が絡み合う実験作。

19. Kentaro Minoura, “あー ep”

画家として知られる箕浦建太郎の音楽家としての一面が発揮された作品。音色がそぎ落とされた、静かに荒ぶるノンビートなノイズが徐々に解き放たれて行く1曲目。対極的に終末に向かうようなメランコリックさをたたえた2曲目のアコースティックな演奏でエンディングを迎える。

20. Lisachris, “LINE EP”

トラックメイカー、DJ、モデルと多彩な活動を見せるLisachrisのサウンドはベースミュージックの感性を下敷きにし、オンライン的なコラージュ感や高解像度の視覚イメージも掛け合わせたエッジ感の強いスタイル。そのエッセンスはDiploのMad Decentにも通じるような形式を独自に変容させてしまうような軽やかなセンスを感じさせる。

21. 鶴岡龍とマグネティックス, “Luvraw”

BTBを解散したトークボックス奏者のLuvrawの新次元を見せた新しいプロジェクト、鶴岡龍とマグネティックス。南米の甘く狂気に満ちた夜を思い起こさせるような、危険で楽しい、生の快楽に満ちたエキゾチックな楽曲集。

22. LSTNGT, “Boarding Gate”

トランスを新しい角度から解釈したかのような、身体をドライヴする至高のシンセサウンド。きらびやかな情景を描き出すそのメロディは、生まれ出た生命を表現するかのように、自由にその形を躍動させていく。ただ美しいだけでなく、聴くものの視聴を内側から突き破る破滅的な衝動を揺さぶる傑作。

23. MANTIS, “Resolution EP”

MANTISは、Moss(モス)とLa-Pachu(ラパチュ)によるデュオ・プロジェクト。エレクトロミュージックやダブの影響を独自の言語で昇華し、重くもたつくようなビートの上に高密度に敷き詰められた音像が複雑に交錯する暗く硬質な音の世界を作り出す。本作は、去年のアルバムからのヴァイナルカット作品だが、異なるヴァージョンとPoleのStefan Betkeによるリミックスが収録されている。

24. Madegg, “New”

Madeggは京都在住の音楽家/アーティスト。全ての像がぼやけたようなモノクロームのサウンドスケープが、霧が晴れたように新鮮な音遊びの世界へと移行。さまざまな音楽がキマイラのように結合し、異形の進化を遂げる。音楽が見た夢のような分裂病的鮮烈さをもつ抽象的なエレクトロミュージック。

25. Metome, “FEATHER”

Metomeは大阪を拠点として活動するTakahiro Uchiboriによるソロ・プロジェクト。高精細なテクスチャーと変形されたボーカルに、断片的な音像が編み物のように組み込まれ複雑な姿を見せる抽象的なサウンドの構造物。安定感のあるクオリティに旺盛な実験精神が掛け算された、アップデートされたエレクトロニカ的感性。

[関連]Japanese track maker / musician 2016。日本のトラックメイカー/楽曲50。#26-50

2016-Dec-28119 Shares

2016年の日本の豊穣な地下シーンを50組のアーティストと楽曲で振り返る。Japanese track maker / musician 2016。#26-50

26. Nozomu Matsumoto, “Pre-Olympic”

バーチャル聴覚室EBM(T) のメンバーとしても知られるNozomu Matsumotoの夢と消えたZaha Hadidの建築イメージが、切ない幻想性を掻き立てるシングル。人々の集合の力が生み出す巨大建造物の背後にある儚さ。資本主義が見る夢のような虚構性がエレクトロニックなサウンドの背後で鳴る荘厳でクラシカルなサンプルから響いてくる。

27. nukeme band, “Tower Mansion”

nukeme bandは、メンバー全員が寅年生まれのヌケメ、ドリタ、9s9、pagtas、suzukiiiiiiiiiiによるドローンをテーマにしたバンド。セカンドとなる本作は抽象的ではあるものの持続音に重さはなく、即興の遊びにより構築されたさまざまな音色が楽しく飛翔していく。シンセポップ的な要素が新鮮な新世代のドローン実験ユニット。

28. Rhucle “Yellow Beach”

Rhucleは東京在住のアンビエント作家。早朝のまどろみのような、やさしさと温かみを感じさせるあいまいなものの美しさ。奏でられる持続音の中に、森林の空気のような清々しい幻想が広がっていく。繊細さの奥に強い芯を感じさせる作品。

29. Ryo Murakami, “Esto”

Ryo Murakamiは大阪を拠点に活動するアーティスト。アラブ首長国連邦のレーベルより。硬質な響きが蠢き、聴くものの感覚を歪ませるようなインダストリアルな世界観が構築されている。どこまでも深くてどこまでも黒い、ドローン/エクスペリメンタル。

30. §✝§

音源は数少ないが、VRを用いたライブが評判。サウンドだけでなく、オンラインが現実に結実したかのようなパフォーマンスは、サウンドとヴィジュアルの稀な幸福な結合であり、唯一無二のもの。もっと聴きたいし、もっと見たい。

31. Seiho, “Collapse”

大阪の出身で、〈Day Tripper Records〉の主宰者。ロスの〈LEAVING RECORDS〉から認められ、その稀有な才能が「Collapse」に結実した。Arcaにも通じるフェティシズムを通過したその音の異形を愛でる美学は、崩壊直前の絶妙なバランス感覚の上に成立している。エレクトロニカ、ビート、アンビエントなどさまざまな音の要素が、溶け合うように結合した、優しくも美しい作品。

32. 食品まつり a.k.a. Foodman, “Ez Minzoku”

Juke/Footworkが日本で独自の進化を遂げた。スカスカした独創的で脱力した奇妙なサウンドは、あれよという間に世界中の音楽メディアに捕捉され、その多くから本年のベスト作品としてノミネートされた。既存のカテゴリーにはけして分類できない、まさに異能の天才が作り出した作品。その奥からは職人的な探求というより、子供の心を覗き込んでしまったかのような、純朴な即興性と素朴な音への関心の追求が聴こえてくる。

33. Sugai Ken, “鯰上 -On The Quakefish”

日本の伝統的意識を現代の意識で消化した、風変わりなエレクトロミュージック。想像を超えて奔放に形を変化させていく美しく奇妙な音の生き物たち。豊穣な暗がりの中からどこかユーモラスなファンタスティックな光景が浮かび上がる。動と静の垣間見える捉えどころない間が、聴くものを中毒性のある音像の世界へと導いていく。

34. Takahiro Mukai, “Bubble Over”

日本の〈Birdfried〉や〈Phinery Tapes〉、〈Hylé Tapes〉など国内外のレーベルから精力的にリリースを続ける大阪在住のアーティスト。電子パルスのパターンが変化しながら泡のように浮かび上がっては消えていく。絞り込まれたミニマルな要素のなかに新鮮な感触が作り込まれており、硬質な弾性を感じさせるその音の構築物は、ただ純粋にカッコよい。

35. takao, “V”

さまざまな音楽の響きが聞こえては遠くへ消えていく。彩度の低いくぐもった音響が重なり合いゆれうごく、フィルターを通して世界を眺めているような幻想性。ストイックな美しさを持つアンビエント作品。

36. Theater 1

Theater 1は、D.J.FulltonoとCRZKNYによるコンセプチュアルなシリーズ・プロジェクト。日本のジューク/フットワーク界を代表する二人がタッグを組み、月一でその可能性を探求。本作は完成したトラック群の総集編的なアルバムとなる。ミニマルでテクノライクなそのサウンドは、その裏にあふれんばかりの熱量と強烈な刺激を含んでいる。

37. toiret status, “◎omaru◎”

プリセット音のみで作られたという高音質な音の破片が歪みの中でかき混ぜられ、聴覚の酩酊の中で新しい姿を形成していく。強い重力により音が放たれる空間自体を歪ませたようなそのサウンドは、聴くものの予定調和を次々と破壊せずにはおかない。このような新鮮な才能が、食品まつりらと同じく〈Orange Milk〉から作品を発表したということも驚き。本作にも参加している同郷であるKenji Yamamotoとのユニット、Toiret $egatasにも注目したい。

38. TOYOMU, “印象VII : 幻の気配”

京都のビートメイカー/プロデューサー。カニエ・ウェストの新作を妄想で作り上げた作品に続いて作られた宇多田ヒカルの「Fantôme」の妄想作。感覚が先走ったその組み立てには、Vaporwaveの奥にあるコンセプトとの共通性も感じさせる。乱暴なまでに斬新で、かつ奇妙な独自の世界を作り上げている。

39. UNKNOWN ME, “AWA EP”

UNKNOWN MEはやけのはら、P-RUFF、H TAKAHASHIにより結成されたアンビエントユニット。自身の分野で才能を開花させている3人がアンビエントの新機軸となるファーストカセットから、はやくも7inchのEPをリリース。日常における気持ち良さを拡大し持続させたような、透明で美しい幸福の気配に包まれたアンビエントハウスの傑作。

40. Ultrafog, “Faces, Forgotten”

Solitude Solutions〉よりリリースされたUltrafogのファーストカセット。厚みのある音像空間に、ミニマルな音の襞が優しく広がっていく。サイケデリックでほのかな温度を感じるローファイなアンビエント作品。

41. ROTTENLAVA, “KDK-8 ROTTENLAVA – MOTHER C”

メランコリックな響きを持つシンセサウンドの揺らめきに包まれながら、暗闇で微かな光を頼りに進む方向を確かめるように、もったりとしたビートがどこからかやってきては消えていく。反復によって作られるその感触はドローンのようだが、気がつくとダンストラックのような姿をしていたりする。不安定だが、儚さゆえの美も感じる作品。

42. Ryota Mikami, “Wedding”

Ryota Mikamiは東京を拠点とするアーティスト。Weddingというタイトル通り、希望を感じさせるメロディのループが高らかに鳴り響く。躍動感のあるサウンドの表面には、多彩な音の色や形が敷き詰められており、ポップさの中に荘厳な美しさのある世界を作り出している。9つの波で構成されたミュージックビデオ「Pyre」も発表した。

43. WoopHeadClrms, “日本の鎌倉母”

WoopHeadClrmsは愛知在住のトラックメーカー。変則的なビート、ボーカル、サンプルから作り出される脈絡のなさが際立つそのサウンドコラージュはMADの影響を受けたものだという。拡散的でノイジーなサウンドテクスチャーで構成されるそのグルーヴは、無重力で三半規管がかき混ぜられるようなカオスの中にある気持ち良さがある。

44. world’s end girlfriend, “LAST WALTZ”

world’s end girlfriendは前田勝彦によるプロジェクト。6年ぶりとなるこのアルバムはこれまででもっともパーソナルな哲学の領域に踏み込んだものだという。粒子の粗いメロディが深層へ語りかけるように静けさのなかに荘厳に響き渡り、その独自の物語空間へと聴くものを誘いながら、次第に耳へと重くのし掛かってくる。この重力の質感と、彼岸へと暴走するような虚無感は、どこかウィッチハウスとも共通する感触を感じる。

45. xoltev, “zero”

Wasabi Tapes〉より、鹿児島を拠点に活動する音楽家、xoltevのリリース。そのサウンドには空想的な明るさのようなものがあり、邪気のない心で希望に満ちた世界を映し出す。天上へ突き抜けていくような上昇感をまとったハーモニーに、変則ビートが空気のような軽さで交絡み合い、それらが美しい光景を描きながら、生命の喜びに満ちた躍動感で跳ね踊る。

46. Yoshitaka Hikawa

Yoshitaka Hikawaは東京を拠点に、〈CVLT〉や〈Astral Plane〉、O Fluxo Magazineなどに楽曲やリミックスを提供するプロデューサー。本作は、ju caとYoshitaka Hikawaのスプリット作品となる。さまざまな音のマテリアルが切り刻まれ、重ねられて生み出された靄がかった音像が、抽象的だがくっきりとした美学を感じさせる構造物を作り出していく。オンラインで生まれたばかりの新しい身体感覚をここに聴くことができるだろう。

47. 夕方の犬(U ・ェ・), “Choir and Room”

犬推しのイメージで聴くものを混乱させる音楽家、夕方の犬(U ・ェ・)。賛美歌とミュージック・コンクレートを結合。おもちゃのような不思議な感触がある環境音を背景に、神々しい響きを持つメロディが響き渡る。繊細な美しさと奇妙さが同居した幻想的な作品。

48. YPY, “The Rusted U.F.O”

goatリーダーのHino Koshiroのソロ名義YPYがJMT Synthのみを用いて制作した作品。もちろんただのデモンストレーションではなく、Hinoのストイシズムの中に無限とも思える豊かさを作り出すその才能がここでも存分に発揮されている。聴き心地の良いテクスチャーが形作った音のカーペットは、驚くほどいろいろな姿を映し出す。そのストラクチャー全てに聴くものをダンスへと誘う強い引力が存在している。

49.YYOIY

マドリード在住の日本人トラックメイカーでファッションデザイナー。ボーカルサンプルをスクリューしたR&B/ベースミュージック的な感触のある楽曲。去年〈Day Tripper Records〉から発表された「Hyper Pastelism」にも通じる、オンラインやポップ、ストリートなどに遍在するさまざまな要素をハイブリッドし独自に昇華したような、純粋に楽しく、新鮮な未来的感覚が存在している。

50. Yuta Inoue, “Piercer”

こちらも〈Day Tripper Records〉から作品を発表するアーティスト。粒子感のある様々な音像がマーブル模様を描くようにビートの上で混じり合い、帯状の分厚い音の層を作り出していく。モノトーンの色彩で描かれた抽象画のようなビートミュージック。

[関連]Japanese track maker / musician 2016。日本のトラックメイカー/楽曲50。#1-25

2016-Dec-214 Shares

Liam Wongが写す今の東京の中に見える未来。Vaporwaveを彷彿とさせる、サイバーパンク、ネオ東京の姿。

ぼんやりと光るネオン、夜空に伸びるサーチライト、無数に並んだビル群、糸を引くバイクのライト。大友克洋原作、1988年公開「AKIRA」の舞台として視覚化されたネオ東京の姿は、そんな東京の未来的なイメージを世界に知らしめました。原作の舞台は2019年、今の日本はAKIRAのような混沌とした世界にはなりそうもありませんが、西新宿や丸ノ内のビル群を見ると、そうした未来的な風景に似た部分も感じられます。

今回は、東京の都市の今を、レンズを通して未来の姿として写し出すフォトグラファーの「Liam Wong」を紹介したいと思います。

Liam Wongはカナダ在住で、Ubisoftでグラフィックデザインディレクターとして働くかたわら、アートディレクターや2Dアーティストやフォトグラファーとしてもマルチに活躍し、2015年9月頃からInstagram上にロンドン・パリ・ロサンゼルス・東京などの都市の写真を公開してAdobeやCanonなどの企業からもFacebook上で評価を受けています。

ポートフォリオサイト「夜の美」には夜景の写真のみがアップしてあり「I love capturing real moments and transforming them into the surreal.(私は現実の瞬間を捉え、超現実に変えることを愛しています)」と書かれている通り、東京の夜景をネオンカラーへと変化させ、薄明るい暗さを闇へと変えることによって、情報や人や物であふれ混沌とした「サイバーパンク」を表現し、新宿や渋谷の街中で見たことのある光景は、彼のフィルターによってAKIRAやBlade Runnerのようなイメージへと昇華されます。

新宿歌舞伎町

My work is on the front page of @businessinsider and @Smithsonian today: "For art director and photographer Liam Wong, the streets of Tokyo at night are mesmerizing, like the "cyberpunk world" in the 1982 blockbuster "Blade Runner." Wong, who currently serves as graphic design director at video game developer Ubisoft, was inspired to photograph Japan's capital city during a recent trip there. "I was bewitched by how the city lit up, and I just kept taking picture after picture," he told Business Insider.

Influenced by his background in video games, @liamwon9 made mesmerizing, technicolor images of Tokyo, depicting it in a way it's never been seen before." #cyberpunk #neotokyo #night #tokyo #signage #street #shibuya #instagram #travel #streetphotography #streetphoto #neonsigns #neon #city #canon #liamwong #noir #neonnoir #bladerunner #enterthevoid #videogames #gamedev

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渋谷

https://www.instagram.com/p/BNE6LZ6Ang0/?taken-by=liamwon9

中野

担々麺の名店「ほおずき」の看板「担々麺」の文字が、ヴェイパーウェーブを彷彿とさせる。

浅草

https://www.instagram.com/p/BNcGyWugkOu/?taken-by=liamwon9

神保町

モノで溢れかえった新宿、渋谷の光景と比較して、浅草や神保町はサイバーパンク化した都市の片隅にあるノスタルジーを感じさせます。

彼のInstagramは定期的に更新されており、過去の作品も確認することができます。日本以外の国で撮影された写真もありますが、どうやらかなりの日本好きのよう。皆さんもぜひ覗いてみてくださいね。

Instagram: https://www.instagram.com/liamwon9/

ちなみにWebstoreでグッズ販売も行っており、個人的には新宿3丁目の写真のトートバッグがオススメです。

www.society6.com/liamwon9

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撮影場所はこちらのよう。

また、日本人写真家も未来を彷彿とさせる表現をしています。外側からの目線と中側からの目線の両方から日本とその未来を想像するとおもしろいですね。現在進行形の東京から見える未来を1枚の写真で表現する、そんな彼らをこれからもチェックしていきたいと思います。

Yuma Yamashita

Otaku Life #inspirationcultmag

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Takashi Yasui

https://www.instagram.com/p/BN6lnOZhE7j/?taken-by=_tuck4&hl=ja

(Text: 小松塚悠太)

2016-Dec-17153 Shares

マイアミを拠点に活動する、La Mano Friaが立ち上げた新しいVaporwaveレーベル〈Sud Swap〉。そこに込められたソフトなメッセージ。

さて、今回はちょっとだけ過去の話題に触れたいと思います。2000年代初頭から音楽シーンを追っている人なら、〈Beta Bodega〉というレーベルが存在したことを覚えている方もいるかもしれません。自身のルーツである南アメリカへの思いと、力強い政治的メッセージが込められたそのビジュアルは、レーベルオーナーであるLa Mano Friaによるもの。音楽への情熱をグラフィックのみならずレーベル運営という形で表現し、また〈Rice And Beans〉や〈Botanica Del Jibaro〉などといったサブレーベルへと枝葉を伸ばしながら、さまざまな活動を精力的に行ってきました。

その彼が来日するというので久しぶりに会うことになり、そこで彼が新しいレーベル〈Sud Swap〉を立ち上げ活動しているということ、そしてそれがVaporwaveのレーベルであるということを聞いてとても驚きました。Bandcampのページを見てみると、今年だけでもかなりの量の作品がリリースされていて、かなりエネルギッシュに活動していることがわかります。

https://sudswapaudiobrewing.bandcamp.com

そのネットワークは拡大しつつあり、パートナーレーベルとして同じくマイアミのU-HALL法人営業のメンバーが運営する〈Botanica1〉が参加。また、日本のパートナーとしてはレーベル〈Seikomart〉があり、〈Sud Swap〉の限定リリースの作品などを買うことができるようです。

最新作は「Bottle Share 1」というコンピレーションです。U-HALL法人営業や、ミスターハンセン病患者などといったレーベルでリリースを行なっているアーティストたちの作品がパッケージされており、レーベルの全体像を知ることができる一枚となっています。

その内容は、レトロでドリーミーなアンビエントから、サンプルが引き伸ばされスクリューされたコラージュミュージックなど、Vaporwaveの定番的なスタイルを踏襲したものがメインとなっていますが、レゲエをコンセプトにしているというU-HALL法人営業のダビーなサウンドは、Vaporwaveのコンセプトとレゲエの手法に共通点を見出したものだそうで、そのあたりはマイアミならではの解釈、といえそうです。

「Vaporwaveとはコンセプチュアルな音楽」というのは彼の談ですが、強すぎる主張を盛り込むのは今の時代に合わないと言っていたのも印象的でした。強固な政治的メッセージが込められていた〈Beta Bodega〉のオーナーがそう言うのを聞くと、とても複雑な気持ちになります。かつてより困難な時代に突入しているからこその実感なのでしょう。けれど変わっていないこともあります。それは、彼がDIYで作られていく音楽シーンに可能性を見い出し続けているという点です。続けていくために変わっていくこと、それもまた必要な戦いなのかもしれません。

そんなLa Mano Friaさんですが来年はふたたび来日して、展示やライブなどを精力的に行うよう。予定は以下のような感じです。

1.5 SAPPORO @ 札幌駅地下歩道空間 チ・カ・ホ (exhibition)
1.7 CHITOSE @ 千歳市タウンプラザ (live/workshop)
1.8 TOMAKOMAI @ CLUB ROOTS (live)
1.12-16 TOKYO @ UPLINK GALLERY (exhibition)
1.14 NIIGATA @ TBA (live)

是非、La Mano Friaの新しい展開を体験して見てください。

2016-Dec-0915 Shares

〈Hausu Mountain〉よりBen BillingtonによるQuicksails名義の電子音楽とジャズが既視感と未視感の上でまろやかに結合した作品「Mortal」がデジタルとLPにてリリース

これまでも色々なリリースを紹介してきましたが、レーベルからプレスリリースをもらうことも増えてきました。もっともレーベルオーナーですらアーティストの情報を持っていないこともあったりして、そういうのもネット以降の繋がり方という感じがします。少ない情報からも、いろいろな物語を想像するのはとてもたのしい作業です。

とりわけ〈Hausu Mountain〉のリリースはとても丁寧な仕事がされていて、毎回、その作品への愛を感じることができるものになっています。前回は彼らにインタビューをさせてもらいましたが、今回はそんな彼らから届いた作品をふたたび紹介したいと思います。

今回届いたのはBen BillingtonによるQuicksails名義の「Mortal」という作品。Ben Billingtonはシカゴで実験的なDIY、電子音楽、フリージャズのシーンで、Tiger Hatchery、ONO、ADTなどといったバンドのメンバーとして10年以上の活動歴があり、またソロとなるQuicksails名義では〈Spectrum Spools〉や〈NNA〉などといったレーベルから作品をリリースしてきました。

Hausu Mountain〉がとても変わった作品ばかりリリースするのはリスナーに聴いたことのない音楽を届けたいという情熱の表れだと思いますが、この作品からもそのヴィジョンが明確に伝わってきます。さまざまな要素のハイブリッドで形作られたその演奏スタイルは、実験を通過して長い視聴に耐えうる普遍的な形に結実した作品と感じました。

弾むようなパーカッションのリズムとエレクトロニックなテクスチャーから構成されるその表現は、エレクトロミュージックのなかにフリージャズのボキャブラリーが織り込まれているところが新鮮で、音のマテリアルをぐつぐつと煮込んで一体化させたかのような、既視感と未視感がまろやかに融合された美しさを持っています。

そんなQuicksailsの作品「Mortal」は、17年の1月13日にはフル・レンングスのLPがリリースされる予定だそう。これはフィジカルでじっくりと聴きたいタイプの作品かと思います。是非。

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